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【二章完結】世界でただ一人の自動人形『ドール』使い  作者: 日之影ソラ
第一章

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11.次女デルタ

「頑張ってください。ラスト様」


 背中から俺を応援する声が聞こえる。

 今までかけられたことがないセリフに、自然と気分が高まる。

 刀を握る両腕に力が入る。


「へぇ、あんたの獲物は刀か。いいもん持ってんじゃん」

「褒めてくれてありがとう。爺ちゃんも喜んでくれると思う」

「爺ちゃん? なんだそれ形見かなんかなのか? そうなると戦い辛いな」

「形見みたいなものだったんだけどね? けど、最近生きてることがわかったか、らっ!」


 鍔迫り合いから刃を弾き、お互いに距離をとる。

 俺は刀の切っ先を鎧騎士に向ける。


「もう形見じゃなくなったよ」

「そうなのか。だったら遠慮なくやれるなぁ」


 そう言いながら剣をぶんぶん振り回す。

 肩を回す動作は人間にとって準備運動だけど、鎧でやっても意味があるのかな?

 それに……。


「ふっ」

「何がおかしいんだよ」

「いや、君もお姉さんに似て優しいんだなって思っただけだ」

「どこがだよ」

「戦う相手を気遣ってる。形見の武器なら戦い辛いなんて、優しい子じゃないと思えないよ」


 乱暴な口調に好戦的な態度を取っていても、やっぱり彼女の妹なんだな。

 そう思ったらなんだか嬉しくて、不意に笑みがこぼれた。


「う、うるせーな! そんな甘っちょろいこと言ってるとぶった切るぞ!」

「お姉ちゃんと違って素直じゃないみたいだね」

「だからそういうのやめろって! あーもう! こっから本気で行くからな!」

「ああ……来てくれ」


 俺は刀を構え直す。

 本気というセリフの直後から、明らかに雰囲気が変わった。

 集中しろ。

 俺はアルファの戦闘能力を直に見ている。

 彼女と同等か、それ以上を予想しろ。


「いくぜ!」


 鎧騎士は地面を蹴り、正面から突進してくる。

 大振りに剣を上段から振り下ろし、俺はそれを刀で受け流す。

 速度はアルファのほうが上だ。

 鎧の重さのせいか?

 けど、剣を使っているだけ攻撃の速度は彼女が上か。

 続けてくる横なぎを躱し、懐へ入って突きを放つ。

 しかしこれを彼女は右手の甲をつかって受け流してしまう。


「っ、硬いな」

「そう簡単に貫けねーよ!」


 鎧の硬度も相当なものだ。

 丸みを利用して受け流されたら斬れない。

 狙うなら関節部分か。

 受け流されるよりも早く突き抜けるしかなさそうだ。


「スゥ……ふぅ……」


 もっと集中しろ。

 感覚を研ぎ澄ませ。

 剣士と格闘家では生きている速度域が異なる。

 剣は刃の長さ分だけ加速するから、相手によっては目視も難しい。

 彼女の剣は特に速い。

 それに恐ろしいほど正確だ。

 こちらの隙を、攻撃されて嫌なところを的確についてくる。


「どうしたよ! 防いでばっかじゃ勝てねーぞ!」

「わかってるよ」


 彼女は強い。

 アルファが言っていた通り、武器の扱いは圧倒的だ。

 才能のない俺の剣術じゃ太刀打ちできない。

 俺が彼女に勝っているとすればただ一つ。

 無尽蔵に湧き出る魔力だけだ。


「これは! 姉上の能力!」


 アルファと繋がることで得た能力、魔力放出。

 その出力を限界まで上昇させる。

 魔力は純粋なエネルギーだ。

 より厚く纏わせ、より高速で循環させることで身体能力を大幅に向上させる。


「おお!」

「ぐっ……急に重く……」


 俺の斬撃を受け止めた衝撃で、彼女の足場にべきべきと亀裂が走る。

 技術で勝てないなら肉体の強度で上回れ。

 魔力で極限まで強化した肉体なら、常人を越えたスピードとパワーを発揮できる。

 押し切れないなら背後に周る。


「速度も上がった!? 後ろかよ!」


 彼女も野生のごとき反射神経で回避する。

 さすがにこの程度じゃ取れないか。

 だったらもっと加速する。

 まだまだ限界には達していない。


「なんだよ……そのバカげた魔力量は!」

「あいにく、これくらいしか取り柄がなくてね? 俺には剣術の才能はなかった。意識では反応できても、身体が……技術が追いつかない。けど!」


 今の俺なら、感覚に身体が追いついている。

 才能の無さを、肉体の強度で補える。


「くっそ! でたらめだな!」

「剣術も見様見真似だからね!」

「そういうもんだいじゃねーって!」


 俺は力で剣を振るっている。

 だから俺の剣術に型はない。

 爺ちゃんも我流だったし、それを見て真似ていた影響もあるだろう。


「っ、剣士と戦ってる気分じゃねーな」

「そうだね」


 ようやく大きな隙が見えた。

 俺は正面から斬りかかるフリをして身体を左に倒し、そのまま剣を持っている右腕を切断する。

 切断した腕は使えないように、刀で地面に突き刺す。


「なっ!」

「これで剣は使えない」


 お互いに丸腰になった。

 俺は刀を手放し、鎧騎士の懐へもぐりこむ。

 彼女のいう通りだろう。

 残念ながら俺は剣士じゃない。

 俺にとって剣術は一つの手段でしかなく、刀がなければ拳を振るえばいい。

 やることは変わらない。

 最大出力の魔力を拳に乗せて、思いっきり殴れ!


「終わりだ!」


 腹に一撃をくらった鎧騎士は、そのまま後方に吹き飛んだ。

 凄まじい勢いで壁に衝突する。

 ぶつかった衝撃によって、壁が破壊された。

 その先には――


「あれは……」

「そうです。あれが私の妹、デルタです」


 赤い髪の特徴的な一人の少女が眠っていた。

 

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連載版始めました!
悪役令嬢に転生した田舎娘がバッドエンド回避に挑む話
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