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なんで勇者ってなんで平気な顔で人の家を勝手に上がり込んでタンス調べたり中のもの盗ったりするの???

作者: 黒豆100%パン


「勇者が来たぞ!!備えろ!!」


とある村に勇者が来た途端、その声ともに家に鍵をかけた。勇者は道行く人に話しかけながら家に入ろうとする。だがどの家も鍵がかかっていて開かない。少しトライするがガチャガチャとノブを少しの間回して開かない事を確認する。そしてしばらくノブを回し開かないことを確認して去っていった。

しばらく滞在した勇者は少しして村を去っていく。それを確認すると一斉に鍵を開けて外に出て、近くの木でできた集会場に集まり始めた。15人ほどが集まって話をし始めた。



「最近の勇者がマナーが悪すぎる!!!」



「そうだそうだー!!」



「人の家に勝手に上がりお金や薬草盗むし、壺や木箱を平気で破壊して去って行く!そんなの魔物とやっている事が同じじゃないか!!」



「そうだそうだ!!」



議論の話題は勇者のマナーの悪さについてだ。先程も村人が口々に言うように勇者は勝手に家の中に入り物を壊し物色した挙句中身を勝手に持って行く。しかも何も喋らないため何を考えているのかも全く分からないので不気味だ。勇者はたくさんいるのだが、大体の勇者がこのような行為をする。



「でも、どうして勇者はああやって勝手に上り込んで物色して行くのでしょう?」



「きっと魔物を倒しているから何でも許されるとでも思ってるんでしょう。迷惑な人たちですね」



「全くですよ」



もちろんお金やアイテムは必要だ。だがだからといって人のの家のものを物色するというのはいただけない。



「また来たらきっと物色しに来るでしょうね」



「どうにかならないものですかね...」



その答えは出ずに誰もが黙ったままになる。沈黙が続く。そんな勇者と言えど魔物を倒して魔王を倒してくれるであろう英雄だ。そんな人を無下に扱うわけにわいかないのだ。



「あいつらに1発ガツンと言ってやらないとダメだ!!」



そう言い放ったのは鍛冶屋の親父。とても気が強く他の村人と同じように勇者にほとほと困っている。



「アイテムなんてそのらじゅうの宝箱や敵から手に入れる事もできる。それでもないから買えばいいのになぜ我々の家を漁りだすのだろう??」



「さあ?本当に何を考えているのかが全くわからない」



「ん!?」



その時、誰かが入ってくる。しかもそれは先ほど去ったはずの勇者だ。何の目的で戻ってきたのかはわからないが、部屋をウロウロしている。勇者の前では勝手に動くこともできずに話かけられても同じ事しか言えないためじっと待つしかなかった。

勇者はしばらくウロウロして誰にも話かけずに外に出ようとする。だが近くにあった開かれた本を見つけるとそれを読み始めた。それはこの村の村長の日記だ。読まれること自体恥ずかしいが、顔を赤くしながらじっと耐えていた。



「行ったか...」



「ああ...」



しばらく本を読んだ勇者はそのまま外に出る。それを見て村人達は「はあーっ!!」と言う声を出しながら体制を楽にした。



「たまにこうやって日記などを読むものもいるが...そんなもの何の役にも立たないと言うのになぜ読んでいくのだろうか?」



「さあ...?それも勇者に聞かないとわからないでしょう。まあ聞いたところで何も答えないでしょうけどね」



「うーむ...」



「きゃーっ!!」



その悲鳴を聞き外を見ると少女が牛の魔物に襲われているのが見えた。助けなければ...!!だが村人程度では何もできない。スライム一匹すら満足に倒すこともできないだろう。悔しいが戦闘能力が皆無と言っていい。その時、先程の勇者が現れてその魔物を簡単に倒してしまった。少女は何回話しかけられようともただ「ありがとう」という5文字を連呼するのみ。

この村に限らないがこうやって魔物が村の中に入ってくることがあるのだ。



「ああやって守ってくれるのはいいんだがなあ...」



「あー我慢がならねえ!!俺やっぱりガツンと言ってやる!!」



鍛冶屋の気の強い男はそう言って去ってしまった。







「出てけえ!!!」



その怒号がとんだ途端、中にいた勇者が外に出た。だがその勇者は悪びれることなく去っていった。次の日になり同じように勇者が来た。そして家に勝手に入りまた漁り始めた。そこが鍛冶屋で前に言っていたようにガツンと言ってやったのだ。

鍛冶屋は清々しい気分だった。やっている事は悪い事だ。なので怒られても仕方がないだろう。他の勇者にも知れ渡りこれで少しは減るだろうしいい事尽くしだ。



「本当に言ったのか?」



「ああ、声を聞いてただろ?」



「まさか本当に言うとはな」



「俺だってやるときゃやるんだ!これであいつらも懲りただろう!」



「また来たぞ!」



また勇者が来た。今度は真っ先に鍛冶屋に入り壺を壊す。そして怒られると言う流れをした。さらに少しするとまた勇者が来て同じように鍛冶屋に入り怒られる。そのおかしな異変に誰もが疑問を持っていた。



「おかしい、普通なら勇者の間で『あそこは行かない方がいい』と知れ渡るはずだ。なのになぜ??」



「もしかして怒られるミニイベントとして知れ渡っているのかもしれないな」



村長のその予想は的中していた。この村に来る7割ほどは鍛冶屋に行き武器を鍛えることなく壺を割る。そして怒られる。一種のアトラクションのような感じで伝わっているのだろう。入れ替わり立ち替わりくる勇者にほとほと困っていた。



「また来たぞ...もう疲れた」



また来た勇者に呆れていると、その勇者は剣を差し出す。ここに来てやっと鍛冶屋の本来の使い方をしてくれる勇者がいたのかと感動していた。大体は怒られると言うアトラクションだけして戻っていくのだから」



「おう!まかせとけ!」



定型文を述べて剣を鍛える。そして強くなった剣を見て勇者は満足そうにしていた。こっちも剣を鍛えられて嬉しい気分だ。だが、その気分は一気に消え去った。その剣を鍛えて貰った勇者が、近くにあった壺を割り始めたのだから...。

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