2 教会へ
「……ぅん?此処は?」
私は、意識が闇の底から浮上すると、思わずそう言ってしまいました。
近くから水の音が聞こえたので、周囲を見渡してみると、どうやら此処は噴水の様でした。
取り敢えず、教会に向かいますか。
そう、考えていると、
〈メインチュートリアルクエスト其壱【システムウィンドウ】を受注可能です。YES/NO〉
メインチュートリアルクエスト其壱ですか?
メインと付くからには、サブも有るのでしょうね。
取り敢えずYESです。
YES/NOを聞いてきましたが、チュートリアルクエストを受けない人はいるのでしょうか?
私、ログアウトの仕方も分からないのですが。
〈メインチュートリアルクエスト其壱【システムウィンド】を受注しました。……まずは、視界内右上部に存在する歯車マークを意識してください。〉
私は、その通りにしました。
すると、視界に様々な項目が書かれた半透明の板が展開されました。
〈それが、【システムウィンド】です。ログアウトやインベントリ等は此方から可能です。それでは、楽しい旅を。……チュートリアルクエスト終了です。〉
〈メインチュートリアルクエスト其之壱【システムウィンド】の達成を確認しました。〉
〈……クエスト達成報酬として『生命力回復薬』×10がインベントリに送られました。〉
〈サブチュートリアルクエスト其之壱【戦闘】を受注可能になりました。〉
〈サブチュートリアルクエスト其之壱【生産】を受注可能になりました。〉
〈メインチュートリアルクエスト其之弍【職業】を受注可能になりました。〉
〈以後、チュートリアル系クエストは【システムウィンド】内の【クエスト】にて確認可能です。〉
取り敢えず、【インベントリ】などが使える様になったので良かったですね。
さて、教会に向かいますか。
ヘキサちゃんに言われた通りに歩いていると、目の前にザ・教会が有りました。
「まんまですね。ですが、十字架では無く剣やら杖やら眼やらが教会のマークの様です。」
私がそう言って見る教会のてっぺんには、剣や杖、眼や陰陽などのマークが描かれた旗が有りました。
「早速入ってみましょう。」
私はそう言って中に入りました。
教会の中に入ると、そこには私の想像を超えた神秘的な雰囲気が有りました。
教会の奥に有る神々の偶像だと思われる像に目掛けて左右の色柄硝子から差し込んだ光が向かっており、とても美しい光景でした。
そんな事を思っていると、
「あら?教会に何かご入用ですか、【旅人】様?」
偶像の側に居た白い修道服を着たお胸が素晴らしい緑髪で赤眼の女性にそう言われました。
「此処でお世話になっても良いですか?」
私は女性にそう言いました。
聖職者ロールをしたいです。
「あらあら?それは、【教会】に入るという事でよろしいのですか?」
女性は首をコテンと傾げるとそう言いました。
「はい!」
私は即答しました。
「でも、【旅人】様は、【魔物】を殺生するのを楽しんでいるそうですが、【教会】に入るとそれもできなくなりますよ?よろしいのですか?」
女性は右頬に右手を当てながらそう言いました。
聖職者といったら、そうでしょうとも。
「はい!」
私はまたもや即答しました。
「……分かりました。ですが、私では判断ができませんので、司教様を呼んで来ます。」
女性はそう言うと、偶像の置かれている台の右横にある扉に向かいました。
扉を叩いて何かを言って中に入って行きました。
数分位すると、女性は白髪で白髭を生やした矍鑠とした爺様を連れて戻って来ました。
「遅れて申し訳ないですな。儂が、この町の【司教】こと、マーカスだ。初めましてだね、【旅人】殿?」
マーカス司教はそう言うと私に手を差し出して来ました。
握り返せば良いのでしょうか?
「私は、【旅人】のカラネアです。」
そう言って私もマーカス司教の手を握りました。
「……それで、カラネア殿。【教会】に入りたいそうですが、よろしいのかね?【旅人】殿達は魔物達を殺生するのに躍起になっておりますが、【教会】に入るということ、即ち【聖職者】系統の【職業】に就職するということですぞ?【聖職者】系統の【職業】は、魔物を基本的に殺生することができなくなるのですが、……それでも入りますかね?」
マーカス司教は、私にそう聞きました。
「それでもです!」
私は、マーカス司教にそう即答しました。
「……分かりました、ではどの神を信仰しますかね?カラネア殿は知っているかは知りませんが、【教会】の者は皆、創造神【ヌル】様、魔法神【モノ】様、断罪神【ジ】様、武術神【テトラ】様、生産神【ペンタ】様、生命神【ヘキサ】様、冥界神【ヘプラ】様の七柱の誰か一柱を信仰しておるのです。儂は、断罪神【ジ】様を信仰しておりますな。」
マーカス司教はそう言いました。
私の信仰する神はもう決まっていますね。
「生命神【ヘキサ】様で。」
私はそう言いました。