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9 異世界案内所 友情

「アリシア様は凄いです。悪役令嬢として転生して、断罪までされたのに、こんなに明るくて優しい、今では立派に仕事をして、尚且転生してきた人たちの役に立っている」

 アリシアは碧眼の瞳を揺らし、じっとリリィ様の言葉を聞いている。


「それに比べて、私は自分勝手な人間です。聖女として光魔法を極めれば、多くの苦しむ人を救うことができるのにそれをしない。自分を犠牲にしたくなかったんです。自由になりたいんです。醜い人間ですね」

 消え入りそうな声は泣いているようにも聞こえた。


「リリィ様、あなたを軽蔑なんてしません。あなたは醜くもない。あなたを犠牲にしなければ得られない聖女の力こそ、勝手でご都合主義の二次元の力なのです。私もアリシアも知っています。人は平等で自由です。それが正しいことです。理想かもしれませんが、それを成すために生きてもいいんです」


 私はそっとリリィ様を抱きしめた。

「この世界は王子さまやお姫様のいるキラキラの物語の世界。でも、実際は男尊女卑の差別社会。強いものが正義で、弱いものは死ぬ。自分らしくあるためには戦わなくては」

 何が正しいかなんて考えていては、生き残れないのだ。


「リリィ様。おっしゃる通り私は悪役令嬢でした。平民を蔑み、贅沢をし、わがままを言う。いくら綺麗なドレスを着て、周りにかしづかれても、ちっとも心が満たされませんでした。私はこの世界で生きていなかったのです――――――。」

 アリシアはそっとリリィ様に語りかけた。


「前世を思い出したとき、『ああ、やっぱり』と思いました。『私はシナリオ通りに生かされていたんだ』と。もうこの世界に縛られたくない。自由に生きるために一緒に戦いましょう」

 私とアリシアを見て、リリィ様は頷いた。



「ちょっとほっとしました。私、ずっと辛くて、聖女になりたくない自分が許せなくて、逃げてばかりの自分も嫌いだし。だからと言って王子に面と向かって逆らえないし」

 リリィ様は泣いていた。


 きれいな涙だ、たぶんずっと悩んでいたのだろう。

 この世界を誰が操っているか知らないが、絶対に負けるもんか。




 リリィ様が落ち着くまで、お茶をすることにした。

 私達は同じ時間に生存していたことを知る。

「――――――じゃあ、今は皆同じ歳ですが、ゲームが発売された年は、前世では私が35歳の時、リリィ様は27歳。アリスは16歳だったんですね。結構な年の差なのに同じ乙女ゲームをしていたんですね」

 嬉しそうにアリシアが言う。


「あの、アリスさんは転生者ではないんですよね。やはり誰かに召喚されたのですか?」

「いえいえ、私は偶然来ちゃった、という感じです。それにここだけの話、この世界では歳をとらないようなんです」


 リリィ様はあんぐりと口を開けて驚いている。

 リリィ様とは長い付き合いになりそうなので、歳のことは打ち明けておくことにする。


「それって女として最強ですね。と言うか、世界中の女性を敵にまわしてます」

この世界では、寿命は魔力に比例することもあり、あり得ないことではない。でも、私の場合それだけではない。


「まあ、色々複雑なんですが、それはいつか」

 本当にいつか、打ち明けられたらいいなと思う。


「何だか悔しいので、私もひとつ爆弾発言をします」

 アリシアはニィ、と悪い笑みを浮かべて言った。

 悪役令嬢の顔ですよ!!

 何が悔しいのかさっぱり分からないが、続く言葉は確かに爆弾発言だった。

「私、前世では子供がいました――――――」

「「!!!!?」」


「今まで誰かに聞いてほしかったんですが、こんなこと誰にもいえないし………えっと、今日はどさくさにまぎれて、告白してみました――――――。もう少し吹っ切れたら、また話を聞いてください」

 予想外の告白にリリィ様とコクコクと頷いた。


「あの、それとそとの看板外した方が良くないですか? もし王子が転生者なら不味いです」

 確かに――――。


自分のやりたいことって、見つけるのもそれをやるのも大変ですよね。

私も、今書けることが嬉しいです。


本日のお話、短めだったのでもう一話、夜までに追加でアップします。



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