表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/77

4 商人ですから

「金とるのか………」


「勿論です。お伝えしたと思いますが、商人ですと―――。異世界で快適にお暮らしいただけるように、全力でサポートさせていただきます」

 ニコリと営業スマイルを向けると、光は一瞬顔を引きつらせたが、黙ってプリントを読み始めた。


「これって、異世界でこんなに細かくプロフィール書く必要ある?家族構成はまだしも、住所や電話番号なんて、個人情報じゃない? って―――――――スマホ!!」

 光はあわてて胸ポケットからスマホを取り出すと電源を確認した。


「げっ、死んでる………嘘だろ」


 諦めきれないのだろう、あちこちいじり回している。

 気持ちは分かるよ。スマホは必須だもんね。


「落ちてきてスマホが無事だったお方は、今のところいらっしゃいませんね。でもいつか直せる技術者様が落ちてくるかもしないと言うことで、皆様保管しておくと言う方が多いですよ。あとは個人情報はお仕事の斡旋や住宅の手配なんかもお手伝いしてるので、お伺いしています」

 ニコリ。

 営業スマイルも忘れずつけておく。


 尚も諦めきれないようすの光。

 几帳面そうなきれいな字だ。細く長い指にはペンだこがある。父親と妹が一人。

 きちんと揃えて書かれた名前は大切な人たちなのだろう。


 異世界に来たと知ったとき、大抵の人間は、楽しそうにあちこち行きたがる。新しい未来が約束されている気がするのだ。如何せん、現実はそんなに甘くないけど。


 帰りたい―――――――。


 光は迷わず言った。

 チートな勇者なのにもったいない。と思わなくもないが、出来れば帰してあげたい。

 私は光の書いた誕生日を確認して、気づかれないように、そっとため息をついた。


「お気づきだと思いますが、個人シートは日本語です。個人情報は厳重に管理しますが、盗難にあってもこの世界の住人には読めません」

「わかった。あの、その言葉遣い怖いので、普通でお願いします」

「了解です。じゃあ、私のことはアリスと呼んでください」

 ニコリ。

 勿論営業スマイルです。


「言いにくいんだけど、俺金無いけど。鞄無くしちゃったし、そもそも日本円でいいの?」

 光が個人シートを書き終え、料金表を見ながらすまなそうに言った。



「それなら全然心配いらないです。ある程度稼げるまでツケ払いオッケーです」

「そうなの? それって胡散臭くない? 気づいたらマグロ漁船的な」

 ふっ。

「マグロ漁船ならいい方です。まあ、冗談はさておき、きちんと回収するから大丈夫。チートな勇者様ならいくらでもツケオッケーです」

 ニコリ。


「いやいや怖いから、いったい何させられるの?」

「普通に冒険者登録してもらうだけですよ。その前にガリレに魔法と剣術を習って、召喚魔法を使った魔法使いを探して、魔法を解いてもらう。あっ、魔法使いを探すのは手伝いますよ。鞄も探した方がいいです」


 何が必要なのか決めかねている光の手から料金表をとりあげ、必要最低限の見積もりを出す。


「ガリレの講師料と魔法使いの調査は別料金だから」

「何この数字!! 明らかにぼったくりだよね」

 ガリレの講師料を見て光が文句を言う。

「あ―――――。ガリレは特別だから。この料金はお得だよ。絶対損はさせないから」

 ニコリ。


 光は了承した。

 営業スマイル最強です。



「おい、交渉は終わったか」

 キッチンの入り口を見ると、ガリレが薬草を両手一杯持ち立っていた。相変わらず気配を感じさせないやつだ。


「あ――――――ガリレ、あんた光のこと縛ったでしょ!あれほどお客さんには手を出すなって言ったのに、説明するの凄く大変だったから、これは貸しだからね、貸し」

 栗色の豊かな髪を後ろに束ね、何事もなかったよう整った嫌みな顔にビッシっと指を突きつける。

「ふん、そんな五月蝿そうな顔してもダメだから、光の面倒ちゃんと見てよね」

 ニコリ。

 ガリレは眉間にシワを寄せて嫌そうな顔をしたが頷いた。


 結局、ガリレの講師料は家賃込みで、光が研究を手伝うことで落ち着いた。


「ついさっきガリレの講師料が特別高いと言ったのに、研究の手伝いでいいのか? いったい何をさせられるんだ?」

 光は不安そうだったが、ガリレの気が変わらないうちに退散しよう。


「そう言うことで、私は店に帰るから、勇者召喚しそうな人間も情報入ったら知らせるね」


検索して見つけてくれてありがとう。

ここまで読んでくれてありがとう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで読ませて頂きました。異世界物は異世界物でも、今までに読んだことがないもので面白いなと思っています。 [気になる点] 1ページ目、いくつか漢字変換されていないのかな、というのがあって…
[良い点] 商人として、きちんと商売をするギブアンドテイク。 とても面白いと思います。 [気になる点] 「」の下を開けてから書いてみてはいかがですか? 「ごめんなさい」 私は口から自然と言葉が零れ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ