33 レオン視点 3 以外に難しい隠蔽魔法
「こんなところで何しているの?」
「殿下――――――。」
「ここからだと、生徒会室がよく見えるね。あ、まさか覗き?」
窓辺に座るアリスのすぐ横から外を眺める。
このところ、アリスは第一王子を監視しているようだった。
はじめは俺を探っているのかと思ったが、視線はいつも合わず、視線の先には第一王子がいて熱心に目で追っている。
なぜか、ちょっとムッとする。
「違います。図書室ですから本を読みに来ました」
思いっきりいやそうな顔をするので、ちょっと意地悪を言う。
「ふーん、じゃ私も休憩がてら本でも読もうかな」
適当な本を取り、隣に座る。
「あ、ララ様がケーキ買って帰ってきたみたいですよ、頼んでたんですよね」
ララ嬢?
生徒会室に目をやると、ララ嬢がケーキを配っている。
ああ、あの気持ち悪い女か。
顔がかわいいと噂だが全くそうは思わないし、変になれなれしい。廊下ですれ違いざま突進して来たり、目の前で突然転んだり、近寄られると嫌な空気でイライラする。
しかも最近、できるだけ近寄らないようにしているのに、なぜか遭遇してしまう。
まあ、あんな女はどうでもいい。
今日は、アリスを薔薇園に誘いに来たのだ。
しかし、アリスは学校祭の準備で忙しいからと、渋い顔をする。
「それは残念だね、学校祭の準備じゃ仕方ない。う―――――ん。だけど、完璧にシールドかけ直すなんて凄い魔力量だよね。私より魔力量多いかもね。でも、それっておかしくない?」
「おかしくありません」
即答である。
「………………。魔力量の偽装は入学取り消しだよ」
アリスは、口をパクパクさせて、何かを言いたそうだったが、観念したのか、しぶしぶ席を立つ。
なぜかアリスのふくれっ面はかわいい。
自分でも趣味が悪いなと思うが、ついいじめたくなる。
図書室を出ると、従者のカイがいた。長い付き合いなのだが、人見知りで凛々しく美しい顔に似合わず、人間関係にはヘタレだ。しかも、背が高く鍛えあげられた身体は威圧的で、相手からも話しかけてもらえないので、友達は少ない。
アリスは何故か少し離れて、俺達の後ろを歩く。
「何でそんなに離れてるの?」
「レオン様は目立つので」
なんで目立つのはだめなのか?
「じゃあ、隠蔽魔法かけてくれる?」
アリスの隠蔽魔法には興味があった
あれほど完璧に薔薇園を隠すのだ。人間など楽勝だろう。
「レオン様、ご自身でできますよね」
確かに、隠蔽魔法が使えるが意識して探されると見つかる確率が高い。
普通の隠蔽魔法は、ただあるものを見えなくするだけだ。
吐く息や気配、体温などは隠すことができない。もちろん音も消すことはできないし手を伸ばせば触れる。一番の難関は、光を通さないし、雨が降ればそこだけあたらない。
だから、隠蔽魔法は人間にはほとんど役に立たない。
しかし、アリスの隠蔽魔法は薔薇園を通り過ぎ、光や雨もそのまま降り注ぐ。
かなり高度な隠蔽魔法なのだ。
アリスは詠唱することなく、無言で魔法をかけた。
「ちょっと待って――――――」
中庭の向こうから、ララ嬢と取り巻き三人がイチャイチャしながらこちらに来る。
面倒くさそうなやつらが来た。
くねくねしながらララ嬢は横の青年にしなだれかかる。
アリスは近づかないように、移動しようとするが、腕をつかみ制止する。
「静かに」
目の前を通り過ぎても、やはり気が付かないようだった。
「凄いな。こんな近くなのにばれなかった! 流石だな」
人間にも有効ということは、どこにでも入り放題。
密偵し放題だ。
「こりゃ使えるな」と呟いた。




