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ジョセフィーヌの今後

ブックマークが100件を越えていました!

沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます!

「あとは母上と姉上だが……」

「ヴィオラ様……は、()()()するのよね」

「ああ……」


スフェーン侯爵とクリスティアン様が帰られた後、私達は今後についての確認をしていた。アルトも同席している。


そう……どんなに迷惑を掛けられても、ヴィオラ様はまだ幼い子供だ。今は残念令嬢でも、やり直す機会は与えるべきだ。


「先日、怪我で退役したばかりの元軍人を14人雇った」

「えっ!」「父さん……思ってたより多くて驚きが隠せない」

「現在、全員が現在療養中で、怪我が治り次第、男爵家で教育と現場研修を行う。そして、4人はアベンチュリンへ行ってもらう予定だ」

「アベンチュリンは遠いよ?」「えぇ」

「行ってもらう4人はアベンチュリンの出身だ。今後、前男爵夫妻にはアベンチュリンに用意した別荘で過ごしてもらうことになる。その世話を頼むことになる」


お義母様は、馬車で一週間以上掛かる辺境のアベンチュリンで過ごされるのね。ヴィオラ様とは違って、既に矯正出来る年齢ではないものね。


「お父様、その4人は料理も出来るの?」

「あぁ。彼らは、寮で身の回りのことを自分達でやっていたし、食事の当番もあったようだ。本人達曰く、庶民が食べるようなものなら殆ど作れるとのことだ。ただし──」


夫がニヤリと笑う。悪いことを考えている顔だ。


「他の者達に話を聞いたところ、4人の味付けは『壊滅的』とのことだ」

「「えっ……」」


アベンチュリンの別荘にて、お義母様達には庶民の味(ただし()()())を堪能してもらうんですか?へぇ……


「アベンチュリンの郷土料理の味付けは薄味なのだが、4人は軍に入ってから濃い味付けにハマってしまったらしく、大量に調味料を加えるらしい」

「はぁ……」「それは……」


卓上調理で、各自が好みの味に整えるのが良いだろう。

何なら、お義母様達に調味料や調合済みのスパイスをお渡ししておこう。どんなに嫁姑間の確執や相手への苦手意識が生まれていても、私は、食事で義両親を虐げたい訳ではない。今のところ。




「そして、姉のジョセフィーヌだが──」


夫は指を3本立てた。


「1つ、修道院へ送る。2つ、どこかの貴族の後妻とする。3つ、様子を見る。大きく、この3通りだと思うんだが……」

「まぁ、まだ幼いヴィオラ様の母親ですからね」


そう、ジョセフィーヌ様は何もしなかった。

本当に『何も』だ。挨拶にすら出てこなかったし。


部屋から出ることなく、「お母様に」と「任せます」と「ありがとう」の3つを上手く使いこなし、人を動かしているようだ。


部屋からは出ないが、高価な化粧品を揃え、口にする物も最高級品、ドレスも質の良い物を揃えている。羽振りのいい子爵家で当たり前のように贅沢をさせてもらっていたせいで、男爵家に戻ってからも生活水準を下げられず、働きもしないのに資産を食い荒らす状態になっている。


「何でもやってくれる母親が居なくなれば変わるのか、それとも環境を変えないと変わらないのか……どうなんでしょう?」

「さぁな。自分磨きに余念がないなら、何処か裕福な家の後妻に出してもいいかも知れないが」

「ねぇ……その場合、ヴィオラはどうなるの?」

「「…………」」


どちらにせよ、令嬢更正プログラムの実験台第一号であるヴィオラ様は、男爵家に残すことになるだろう。

ジョセフィーヌ様の今後の行き先によっては、更正完了後のヴィオラ様の行き先も……変わるのだろうか?

ずっと男爵家で面倒を見ることになるの?


「……いっそのこと、叔母様もヴィオラと一緒にしつけ直したら?」

「え……アルト、それは「良いかもしれない」


息子も半分冗談のつもりだったのだろう。

息子は、賛同した父親の顔を驚愕の表情で見ていた。




「いっそのこと、年齢による経過や結果の違いも観察してみよう。姉上の年齢ならば、多少無理をしても大丈夫だ。それにあそこまで完成してしまった個性を矯正するのは面白そうだ!」


え……夫はジョセフィーヌ様に何か恨みでもあるの?

確かに、ヴィオラ様があのように育ってしまった責任は、ジョセフィーヌ様にもあるだろうが、実の姉の完成している個性を矯正する?


表情を取り繕うことなく、驚愕一色に表情を変えた私を見て、夫は言った。


「だって、私の大切な妻子に迷惑を掛けただろ?特に、サラは母と姉のせいで嫌な思いをしたよね?」


……どう反応すれば良いのだろう?

もしかして、夫は度の過ぎたヤンデレなの……?


え、本当に?


離縁とか無理なやつ?

いや、恋愛結婚だから良いんだけど。


嫁姑関係が拗れて私から離縁を言い出さないように、夫が行動してくれたんだろうけど……。

妻がちょっと嫌な思いをしただけで、両親を辺境へ追いやったり、姉親子の性格更正をしようとしたり、かなり過激じゃない?


え、こんなもの?世界観によるものなの?


え?え?え?


「ふふっ、混乱しているサラも可愛いよ」


息子の前なのに、何を言っているの!

ちょっと夫の様子がおかしい。息子は……


両親を無視して、離れた机で決定事項を書き出す作業をしている!


まあ、なんて出来た子!




「ところで、お父様。元軍人の人たちの教育は、具体的に誰がするの?」

「ん?サラだよ」

「えっ!?」「お母様?」

「だって、サラは学園の試験では常に上位を独占していたじゃないか。高度な教育を受けている上位貴族の令嬢達を差し置いて、だよ?」

「あぁ。じゃあ、基礎的なことを元軍人さん達に指導するのは、お母様が適任だね」


そっか……私が教育係か。


ジョセフィーヌ様とヴィオラ様の()()()が決まった。

そして、その『再教育プログラム』の内容を、私が決めると言っても過言ではない。

内容をしっかりと吟味しなきゃ!


……というか、各々に何が必要か分からなければ、始まらないのではないだろうか?


「ねぇ、エリオット」

「なぁに?どうしたの?サラ」


え、名前を呼んだだけでそんなに喜ぶ?

確かに、仕事中以外、常に夫は私にベッタリだから、私から名前を呼ぶ機会も殆どなく、日に数度しか呼ばないけど、そんなに?


まあ、それはさておき。


「ヴィオラ様については実際に見ていたから、どんな内容を再教育するか分かるのだけど、ジョセフィーヌ様に必要な教育って何かしら?」

「そうだよね……今から二人で姉上の部屋に行ってみようか?今後のことについても話さなければならないし」

「え、今から!?良いのかしら?」

「大丈夫だよ。姉上は私の決定に逆らわないから」


え……じゃあ、事前に問題行動を止められたのでは?


「姉上の罪は、何もしなかったことと、何も言わなかったことだ。さぁ、姉上に会いに行こう」


そう言って、夫は私を連れ、ジョセフィーヌ様の部屋へと移動した。




──コンコン


「姉上、入るよ」

遂に、夫の名前が出ました!

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