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息子は側近候補になります(アルトside)

実は腹黒です。

『この子は、もう父親に会えないのよ!』


ん?聞いたことあるなぁ……てか、これ知ってる。

お祖母様(おばあさま)に言われたのは初めてだけど、何回も似たようなことを言われた記憶がある。


へぇ、成る程。


あ、お母様が意識を飛ばした。


多分、お母様は『母さん』だよね。

そして、この感じだと『父さん』もいる。


だって、父さんは──




***




『ゆう君は、パパに何でも買ってもらえて、休みの日には遊びに連れて行って貰えるけど、季里ちゃんは、玩具も買ってもらえないし、どこも連れて行ってもらえないし、もうお父さんにも会えないんだから!ゆう君は贅沢し過ぎ!』


最初は、僕も幼すぎて、祖母に何を言われているか分からなかった。

でも、ある時、キレた母さんが言ったんだ。


「別に……百均なんだから買ってあげればいいし、出掛けたければ出掛けるでしょ!お義姉さんの方がお金も持ってるし、子供だって、うちの子より年齢が上だし。今まで、お義兄さんに頼りすぎてただけ!」


もしかして……


叔母さんのお手伝いや、季里ちゃんのお世話に疲れた祖母は、僕達に八つ当たりしていたのかな?


母さんが、よく悲しそうな顔をしていた。

まだ幼くて、よく理解していない僕は、このとき何も出来なかった。




***




「もう、よろしくてよ」


そう言って、趣味の悪い扇子を開いたヴィオラは、皇太子殿下の元へ集う少女達の中に混ざっていった。


傲慢な男爵家の金食い虫。

それが僕のヴィオラに対するイメージだ。

ヴィオラは父親が子爵家だから、血筋的には僕より上かも知れないけど、子爵に家を追い出されてるからなぁ……。


ま、家のことは父さんが何とかするでしょう。

今朝、父さんに頼まれた母さんを、他人に傷つけられないようにしなきゃ。


何かあったら、父さんに何を言われるか……




最初は『初めてのお茶会が不安で、母親に甘える息子』の振りをして、母さんの近くにいた。

しばらくすると、母さんから、子供達の輪に入ってくるように勧められた。


仕方がないので、伯爵家以上の家格に絞って、子息だけでも見ておくことにした。狙うは、上位貴族の友人枠だ。


上位貴族の子息や令嬢は、やはり皇太子殿下の近くにいた。


あっ、ヴィオラがお茶をかけられた。


男爵家の令嬢として招待されているのに、無駄にいいドレスを着ていたから、あの令嬢の気に障ったんだな。ははっ、いい気味だ!


「君、ヴィオラ嬢の身内だよね?」


……って、僕まで巻き込むのか!


面倒だと思いながらも、皇太子殿下やクリスティアン様とお近づきになれるチャンスだと思って、案内された部屋まで付いていく。

侯爵夫人が母さんを呼びに行っている間、誰も口を開かなかった。僕は外を眺めていた。時々、ヴィオラが鼻をすする音が聞こえた。


母さんが部屋に入ってくると、クリスティアン様が口を開いた。

別に、君のせいではないよ。生意気なヴィオラに対して怒った伯爵令嬢が、ちょっと嫌がらせをしただけだよ。


ふと横に視線を向けると侯爵夫人が隣にいた。

あっ、ルミナス夫人に頼みたいことがあったんだった。


「ルミナス様、お願いがあるんです」

「何かしら?」


僕は、少し前に出掛けた時、父と二人で危惧した()()()()()()()()()について話すことにした。


「先日、スフェーン侯爵領内で、木を伐採しているのを見ました。山にある木々には、水を蓄える役割があります。もし、昨年のような長雨が今年も続けば、あの近辺では洪水が起こります。もしもの時に備えて、領民が避難できるようにしておいてください」

「…………ふふっ、ありがとう。この後、すぐに手配するわ」


余程この情報が嬉しかったのか、ルミナス夫人は僕の手を握っていた。僕も、子供の言うことで、すぐに信じて貰えるとは思っていなかったので、嬉しくなって握り返した。


「ルミナス様、ありがとうございます!」

「此方こそ、良いことを聞いたわ。また、いらっしゃいね」

「はい!」


良かった!

これでスフェーン領の人達が失うものが減るはずだ。

流されたりした家はまた建てればいい。領主のお金で。


ルミナス夫人がヴィオラにお詫びのドレスを贈るとか言い出した。

まぁ、それについては僕に関係ないので、好きにしたら良い。


呆れながら見ていたら、ソファで黙って俯いたままだった皇太子殿下が、急に立ち上がり、僕の近くまで歩いて来た。少し肩が震えている?

そして、俺の肩をポンと抱き、言った。


「お前いいな!将来、俺の側近に加えるから!」

「いいの?じゃあ、ちゃんと勉強しとくね!」


「お前……母親の前で()()()()()()()面白い」


彼は僕にだけ聞こえる声で言った。


面倒そうな人に目を付けられた。

でも、高位貴族の友人枠を目指すという目的は達した。皇太子殿下の側近候補なら、子供の時は学友って扱いだったはずだから。


ああ、良かった!

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