45 探し物
「うーん」
エレナが俺の部屋で難しい顔をしていた。 ていうかもう当たり前に俺の部屋に来ているな……
エレナが自分の部屋に行く時って風呂入る時と寝る時くらいじゃないのか? よくカレンを連れてって一緒に寝たりしてるようだけど。
「はぁ〜……」
それに心なしか、チラチラと部屋の様子を見ている。
「よし…… 直也!」
「何?」
「お掃除します!」
「は?」
「だから直也は出てって下さい!」
「いやいや、出てくも何もここ一応俺の部屋なんだけど? それにやるなら手伝うよ?」
「だーめ! お掃除してる間直也は私の部屋に行って寝ててもいいから私に任せてもらいます!」
なんか今日はいつにも増して強引だなぁ…… しかも部屋そんなに散らかってないと思うけど。
渋る俺の背中を押してエレナは自分の部屋に俺を押し込めた。
「じゃあ終わるまでここから動かないで下さいね!」
バタンとドアが閉まりエレナの部屋に1人にさせられた。
「げ…… なんだよ掃除とか言ってて自分の部屋は疎かにしてるじゃねぇかよ」
下着やら服やらがベッドの上に置かれていた。
こんなんでよく寝てていいなんて言ったよな。 ていうか女の子の部屋なんだな、高校生になろうとしてる…… いやいや、そんな考えはよせ! これじゃ大咲の言う通りむっつりスケベだろ!
だけどエレナの部屋はエレナが使っているからかいい匂いがした。
なんか落ち着くなぁと思ったけど今日のエレナはちょっと変だったのでこっそり覗いてみようと思う。 窓少し開けてたし見えるかも。
そっと玄関のドアを開けて自分の部屋の窓を覗く。 なぜ自分の部屋なのにコソコソしなくちゃいけないのか……
お! バッチリ見えるじゃん、ちゃんと掃除してるのかと思いきや…… なんか散らかしてないか?
あっちこっち掘っくり返しているという感じだ。 エレナもなんか一生懸命だ、考え込みながら何か探してる? そんな感じに見える。
何やってんだ? パッとエレナがこちらを見た気がしたので俺は慌てて屈む。 あ、危ねぇ……
注意深く頭を上げるとエレナはキョロキョロとし出していた。 なんか探し物が見つからなくてジタバタしているみたいな。
そしてガクッと崩れ落ちた。
何してんだあいつは? 人の部屋で……
「どぉしよ……」
エレナがボソリと呟いた。 そして「あ!」 と何か閃いたのか奥の方へ行きしばらくしてションボリして戻って来た。 どうやら成果はなかったらしい。
「なんで…… なんでないの? 私そんなに気が緩んでたのかなぁ」
大事な物なのか? なんだろう? エレナがいつも身に付けてる物はある。 いつものようになんか変な腕輪もしてるし…… てか身に付けてるっぽい変わった物はそれしかないし。
エレナは散らかした所を元に戻してため息を吐く。
「灯台下暗し、まさか最初からここにはないとか……」
ヤバい! 今度こそガチで出て来る! 急いでエレナの部屋へと戻り寝ているフリをする。
ガチャッとドアが開いた音が聞こえると足音がこちらに向かって来ると……
あれ? なんも反応なし? 足音ここで止まってるのにと思い薄目を開けるとエレナの顔が俺の顔のすぐ近くにあってビックリしてエレナと顔をぶつける。
「い、いた〜い! 今度は鼻ぶつけたぁ!」
「こ、こっちも痛いわ! 心臓に悪い……」
「むむッ! って直也、私の部屋から出てって下さい!」
「なんで?」
「なんでも! 私の部屋なの! 出てけぇーッ!」
うん、なんか俺にバレたくない探し物しているようだからそうくるだろうと思ったよ。 つうか最早ヤケクソじゃん。
「じゃあ遠慮なく。 掃除してくれてありがとな」
「え? え? あ…… うん」
そして自分の部屋に戻り俺も考える…… おっと窓は閉めておかないとな、鍵も掛けてこれで完璧。 あいつは一体何を探していたんだ?
俺もエレナに習って同じような行動をしてみる。 やった所でまるでわかんないけどな!
はぁー、トイレトイレと思いトイレに行こうとした時ある事を思い出す。
遡る事数日前……
「エレナ、は、早く出てくれ!」
「ちょ、ちょっと! 私の後にすぐ入るの禁止です! デリカシーないんですか!?」
「んな事言ったって無理だっつの! 大体よく確かめもしないから自分の部屋のトイレが故障してるのもわかんないんだよ、それに普段大胆な事するくせにデリカシーもくそもないだろ!」
そしてバタンと何か閉じる音がしたと思ったらエレナがトイレから出て来た。
「うー、直也の変態ッ!」
そして限界だったのですぐさまトイレに入り用を出した後、とある事に気付く。
トイレの収納スペースのドアが少し開いていた。 なんだ? と思い見てみる。
あー、トイレットペーパー買い足しとかないとなぁなんて思っていると隅の方にCDケースくらいの大きさの金色の高そうなケースが隠してある?
なんだこりゃ? こんなもん入れた覚えないけど…… エレナのか? そう思ってそこから取り出し後で聞いてみようと物置の鞄の中へと入れていた事を忘れていた。
まだあるか? そう思い中を漁ってみればあった! 灯台下暗しだな、エレナも俺が持っているかもしれないという事が抜けてるし俺もすっかり忘れていた。 つーか一体これなんだ?




