43 ペース早くない?
かなり引っかかる所はあるが隣にエレナが来て少し新鮮な生活が始まった。
「直也ー! 来ちゃいました!
「来ちゃいましたって……さっきまで居ただろ?」
「行き来って面倒臭いですね」
「まぁ節度を持って…… ってなんだその服とか!?」
エレナは自分の服らしき物を大量に持っていた。
「ああ、これですか? 直也のお部屋でもお着替え出来る様にって思って」
さも何か問題でも? と言いたげなエレナだが大問題だ。 お前高校生になるんだろ? 年頃真っ最中だろ?
「エレナ、俺の部屋で着替えるって俺も居るんだぞ?」
「そうだけど何か問題ありますか?」
「俺が居ると着替え辛いだろ!?」
「んー、そういうのはもういいかなって思いまして」
「もういい!? もういいとは!?」
もういいとはなんだ!? 熟年夫婦じゃないんだぞ? 俺達ちょっと前まで他人だったんだぞ?
「ほ、ほら! お互い好きだしなんの問題もないでしょ?って事です!」
「展開早過ぎない!?」
「ええ…… 寧ろ私はこれでも遅過ぎるかと」
「え? 最近の男女の仲ってそんなに展開早いのか?」
「うーん…… そうですね!」
じゃあ羅衣なんかずっと焦らされてたのか? だったらあのグイグイ来た大咲も実は奥手だったなんて事になるけど……
「…… やっぱ飛ばし過ぎかなぁ」
だんだんエレナは俺の反応のせいか自分がとんでもない事を言ってるのに気付いたのかしょぼくれてきた。
「まぁちょっとな。 俺あんまりそういうの経験ないし」
「あんまり? じゃあ何度かあったんですか? 誰に? 例えばどんな事?」
エレナの目が急に鋭くなった……
「あ、いや。 結構迫ってくる奴が居て……」
「それはおお…… お、お……」
「お?」
「お…… お? 男冥利に尽きますね! さぞかしいい思いをしたんですねぇ? 直也かっこいいですし、あー!」
「な、なんだそりゃ!?」
「お、オホン! とにかく私からしたらここまで漕ぎ着けるのにとっても長かったんです! 浮気は許しません!」
「そりゃあまぁ…… 沖縄から宮城までは結構遠いからな。 てか親とかこんな事してて心配しないか? 俺エレナの両親にこんなの知られたらただじゃ済まないような気がしてならないんだが?」
「ご心配なく。 適当に言っとけばなんとかなるでしょうし。 何より直也はお金持ち! 協力すれば大抵なんとかなります!」
「お金持ちって…… 他人のお金だし出所がよくわかんないし使っていいものかいまだにわからない代物だよな」
後で数えてみたんだが約6940万円が積められていた。 それに僅かに使った痕跡がある…… 俺は今初めて気付いたし他にも誰かこの大金の事を知っている可能性がなくもない。
まさかエレナは実はどっかの裏の要人の娘で何かヤバい事に関わってるのでは?
「あ、また疑いの眼差しを感じます」
「いや、そんな事ないって」
「直也、信じて下さい」
「!?」
エレナは俺の顔を自分の胸の中に抱き寄せた。
ぐ…… 落ち着けよ、落ち着け俺…… ってあれ? なんか心なしか安心している? 大咲にこんな事された事もあったけどその時は頭がパンク状態だったのに。 もしや慣れたのか?
「直也いい匂い、直也の匂いだ」
「え?」
「とっても安心します」
「なんか…… 不思議と俺も」
「ふふッ、やっぱり。 私と直也相性バッチリですね!」
「俺ってエレナにそんなに好かれる要素あったかな? 偶然に公園で会って道案内してたまたま同じアパートで…… 今更だけどもしかして高校も俺と同じだったりして?」
なんか凄い偶然だよな? だからこそなのか?
「はい、直也と同じ高校です。 歳の差で直也が学校に居ないのだけが…… それが物凄く悔しい」
や、やっぱりかぁー!! そんな予感はしていたけど。 だがふと思った事はエレナは確実にモテる、他の男子が放っておくわけがない。
「高校行ったら俺より良さそうな奴居るんじゃないか?」
「ん? 不安ですか? うふふ、嫉妬してもらえるなんて嬉しいなぁ」
何故かエレナはニコニコと笑うがすぐに表情を戻す。
「直也こそ私の目が届かない所で何してるかわかったもんじゃないですけどね! 私は直也以外眼中になかったので今までは誰に…… あっ!」
「なかった? 今まで?」
「あははッ! とにかく私の事は心配ご無用、直也一筋なので!」
「なんか誤魔化さなかったか?」
「なんでもないです、とにかく直也は誰かさんに迫られたりもしているようなので私は直也が心配なんです!」
エレナはまたギュッと俺を胸に抱き寄せた。 なんか誤魔化したよな? でもまぁ俺もエレナの事は好きだ。 確かに嫉妬が入っていたかもしれない。




