40 公園の女の子2
なんて偶然…… この子が俺の住んでるアパートと同じ場所に住む事になってるなんて。
そして俺は今、この子を連れてアパートへ向かっている。
「にしても偶然ですね! それにお隣なんて。 ていうか本当に声掛けて良かったです」
「あ、ああ、ビックリだよな。 そういえば自己紹介まだだったよな? 俺は南直也だ」
「そうでした! 私は宮城 英玲奈、エレナでいいですよ」
「沖縄なのに宮城…… しかもここ宮城県」
「あはは、そこまでだと最早狙ってるみたいですよね。 そっかぁ、南…… さん…… 直也さん…… んー」
「好きなように呼んでいいよ。 えーと…… エレナ」
そう言うとエレナは嬉しそうにニッコリ微笑むと……
「…… じゃあ直也! …… い、いきなりなのにごめんなさい」
「ははッ、謝らなくてもいいよ。 なんて呼んでもいいって言ったろ? それより気になってたんだけどエレナの親って外国人?」
「はい、パパがアメリカ人なんですよ、ママと結婚して日本に住む事になったんです」
「ああ、だからか。 納得」
「直也はもう高校は卒業なんですか?」
「? その通りだけどよくわかったな?」
「あ、あはは…… なんとなく。 じゃあ大学とか? もしかして就職?」
「働くのもいいけど進学する事にしたよ」
「え? じゃあ今住んでる場所とかから変わっちゃいます?」
「いいや、大学も近くにあるし変わらないよ」
「はぁー、良かった。 知り合ってすぐお別れとかなんか嫌ですし」
なんかエレナとはとんとんと話が進むな。 それにこんな短時間で結構仲良くなったような気がする。
エレナと話していると凄く楽しいし。 エレナはどう思ってるんだろうか? エレナも少しは俺の事…… なんて出会ったばかりでそれはないか。 下心あるのは俺くらいだろうな。
アパートへ着くとエレナは俺にお礼を言って自分の部屋でも見るのかと思いきや……
「ん? 自分とこの部屋見ないの?」
「…… ええと。 その」
「どうした?」
「猫さん…… に会わせてもらってもよろしいでしょうか?」
カレンを見たいのか? え? でも俺の部屋に入るのか? 大咲のお陰で少しは免疫ついたつもりだけどいきなり部屋に入れるのは恥ずかしい。
「や、やっぱりダメですよね? 私ったらいきなり何言っちゃうんだろうって自分でも恥ずかしいです」
ちょっと落ち込んでる? そんなに見たかったのか? 仕方ない……
「いいよ? じゃあ入りなよ」
「え? は、はい!」
「でもエレナみたいな女の子がいきなり初対面の男の部屋とかに入るのは危ないような……」
「心配してくれてるんですか? えへへ、ありがとうございます! でも直也のお部屋以外は入る気ありませんのでご安心を!」
え? それってどういう意味? と言おうとしてドアを開けると玄関のすぐ目の前にカレンが居た。
「カレンッ!」
「え?」
エレナはカレンを見るなやギュッと抱きしめていた。 あれれ? そんな会いたかったのか? 初対面だよな?
それにしてもカレンもカレンでいいように抱きしめられてるなぁ…… 普段だったら暴れそうなのに。
「あ、そうだ! カレン、ご飯だよ」
「は?」
エレナは持っていたバッグからキャットフードを取り出した。
何故キャットフードを持ってるんだ!?
「エレナ、なんでそんなもの持ってるんだ?」
「あ…… えーと、それは…… 食べるんです、私が」
「ええ!? エレナが? 猫の餌を!?」
「お、美味しんですよ? 味も控えめで身体に良い…… のかもしれません」
「今時の子って変わってるんだな……」
「もう! そんなビックリ人間を見るような目で見ないで下さい! ほら、カレン〜!」
カレンはエレナに渡されたキャットフードをバクバクと食べ出しエレナはその様子を微笑ましく見ていたかと思えば……
あ、あれ!? どうしたんだ!?
「え、エレナ? 泣いてんのか?」
「え? あはは…… 本当だ、ごめんなさい」
「謝らなくてもいいけど……」
なんか不思議な子だなぁ。




