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39 公園の女の子


「カレン、餌だぞ」



カレンに餌を出す。 猫を飼い始めて2年が経った。 もうすっかり馴染んだなカレンの奴も。 大学も決まりもう卒業式も間近になっていた。 いやぁ、いろいろあった。



だけどカレンを飼い始めた頃の記憶は妙にボンヤリしているんだよな…… 俺ってよく飼おうなんて思ったよな。 



「じゃあいい子で留守番してろよ?」



餌にがっついてるカレンにそう言い学校へと向かう。



そして学校へ着くと羅衣が話かけてきた。



「直也聞いてくれよ、みぃちゃんがさぁ〜」


「また惚気話かよ? 俺に言ってもどうにもなんないと思うし自分でなんとかしろよな」


「つれねぇなぁ。 まぁお前にはまだ早過ぎたか、はははッ」


「うぜぇ……」


「うぜぇ言うなしッ! そぉいや花ちゃんと順調か?」


「順調ってなんだよ?」



大咲とは去年の夏にキスされて以来アタックされっぱなしだった。 俺を好きだって事は嬉しかったけど俺は何故かそれでも大咲と付き合うとかそんな関係になるとかはなかった。



「お前花ちゃん泣かせたもんな、あー、信じらんねぇ奴」


「俺だってあの時はかなりキツかったんだぞ? はぁ……」



大咲にはその年の冬休み前に告白されたんだが俺はキッパリ断った。 本当にあの時はキツかった…… 今では大咲も吹っ切れたようで普通に話しかけてはくるけど。




学校が終わり帰り道を歩いていると公園に差し掛かる。 すると1人の女の子がベンチに座っていた。 ベンチに座っていた女の子は俺の事を見ている…… ような気がした。



なんかこっち見てるけど気のせいだよな? 面識あるわけじゃないし…… てか外人か? 



ていうより俺はなんだかその子から目が離せなかった。 俺の足はいつの間にか止まっていてその子の事をずっと見ていた。 



あれ? 俺ってヤバくないか? 何ずっとあの子の事見てんだ? これって一目惚れか? 俺が? けどあっちも見てる? それにしてもなんて綺麗で可愛い子なんだろう……



その子はベンチから立ち上がりこちらに向かって来た。 



あー、見てんじゃねぇよ的な事でも言いに来たのかもしれないと思い俺は少し焦り、歩き出した時……



「待って下さい」


「え?」



逃げようとしたら話し掛けられてしまった…… てか日本語だしハーフかなんかなんだろう。



「今私の事見てましたよね?」


「あー…… ごめん。 なんか変わった子が居るなぁって思ってつい」


「…… 変わった子」


「あ、変な意味じゃないけどな! なんていうか、その…… よくわかんないけどさ」



ふとその子の持っている鞄に酷く下手くそな小さなぬいぐるみが目に止まる。 なんだこれ? 猫?



「ん……? あ、これですか? 猫さんです」


「ああ、そうなんだ、猫だったか」


「今下手くそとか思いませんでした? まぁそうですよね、ふふッ」



その子はニコニコとそのぬいぐるみを見て笑っていた。 てかどこの子なんだろ? ここらじゃあ見た事ないよな……



「この子カレンっていいます!」



俺があれこれ考えているとその子はぬいぐるみを俺の目の前に見せてそう言った。



「え? え? カレン?」


「どうかしました?」


「うちでさ、猫飼ってるんだけど同じ名前だなって……」


「本当ですか? 凄ーい! 偶然」


「だな…… 色合いとかもそのぬいぐるみに似てるし本当偶然だよな」



なんか盛り上がってしまった。 



「そういえば君ってここら辺の子か? あんまり見た事ないなって……」


「ああ、違います。 沖縄から来たんです」



あー、なるほど。 やっぱりここら辺の子じゃなかったか。



「沖縄からか。 随分遠くから来たんだな?」


「はい、私高校生になるんですけど今度ここら辺にあるアパートに引っ越す事になったんです」


「そうなんだ? てことは高校はここら?」


「ふふッ、そうです。 それに1人暮らしスタートです」



こんな子が1人暮らし…… 大丈夫なんだろうか?



「1人暮らし? よく親許したな……」


「いやぁ、モメにモメたんですけどなんとかお許し貰って…… 今日はちょっとそのアパートを見に来たんです」



その子はニッコリ笑った。 でも俺が思うよりしっかりしているのかもしれない。 



でもこの子と話していると少し懐かしいというか安心するような感じはなんだろう? 



ん? 笑ってたかと思ったらその子はジーッと俺を見つめてきた。 俺はドキドキしてきた…… 俺、やっぱこの子に惚れちゃってるのかも。 



「あの…… それでいきなりで申し訳ないんですが」



その子は急にモジモジしだした。



「何かな?」


「ここら辺よくわからなくて、私少し方向音痴みたいでアパートもよくわかんない場所で…… もしご予定とかなかったら道を教えて頂ければと…… さっき見てましたよね? なんて言いましたけど本当は誰かに聞こうかな? と迷ってて」



それで俺の事見てたのか……



「ああ、そんな事か。 いいよ別に」


「本当ですか!? 良かったぁ。 もしかして誰かとデートとかあったりとかと思っちゃいました、 はは……」


「ええ? デート? そんな相手いないって」


「そうなんですか? かっこいいから彼女さんとか居るのかと。 はぁー、良かった」



かっこいい…… 普段は特になんとも思わないけどこの子からそう言われるとちょっと嬉しい。 マジでこの子の事好きになってるかも……



「そんな事ないって。 …… それで? どんなとこ?」


「あ、はい! ここです」



その子は俺にスマホを見せる。 ていうかナビ使えば良くね? とか思ったりもしたが画面を見て俺は驚愕する。



「ここって……」


「はい?」


「俺の住んでるアパートじゃねぇか」




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