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38 別離


「直也君、もう諦めたらどうだい? ここで死んだら直也君は魂までも消滅してしまうんだよ?」


「直也…… 」


「諦めてどうなるんだ?」


「そうだね、私と君とエレナ3人で一緒にこの世界を見守っていくなんてどうだい? 私は君達からしてみれば遥か高次元の精神生命体だ、形があって形はない、望めば何にだってなれる。 そういう存在に君達もなってみるかい?」


「そんなのごめんだ、俺が望んでいるのはあんたとじゃなくエレナとカレンと一緒に居る事だ」


「だったらカレンの魂も引き上げてあげようか? それなら文句ないかい?」


「心は読んでるんだろ? いい加減にしてくれ、あんたをどうやってぶっ飛ばしてやろうか必死なんだ」


「エレナ、彼を止めてやったら?」


「直也……」


「エレナ、俺は……」


「うん、直也信じてるよ。 直也ならなんとかしてくれるって。 だから一緒に頑張ろう!」


「「え?」」



エレナはファウストへと向かっていた。 まさか…… まさか!?



「エレナが掛かってきても私には勝てないよ?」


「そんなのわかってる! でも私だって少しは直也の力になりたい!」


「エレナ……」



ファウストに殴り掛かるが空振りして転び、それでも立ち向かっているエレナを見て思う、絶対2人で戻るんだと。



「おや、直也君復活かい?」


「待たせたな」


「ふふ、もうそろそろ終わらせるとしようか」



ファウストがそう言って微笑むと俺の拳がファウストにいきなりヒットした。


「え?」


「お見事。 陳腐な言い回しになるけど君の勝利だよ、エレナも本当に強くなったね」


「先生…… 」


「さて、君達2人は元居た世界に帰れる事ができるのだが記憶を持って帰れるのは1人だ」


「1人? どういう事だよ?」


「記憶は大容量メモリーでね、2人とも戻してあげたいんだけど前に無茶をしてしまってね。 ほら、アンテナが真っ二つだろ?」



ファウストがそう言うと頭の中に石碑のようなイメージが浮かぶ。 縦から真っ二つになっていた。 これがアンテナなのか? だが記憶を持って帰れないとどうなるんだ?



「どうなるかって? 直也君の場合エレナの記憶が消えるのはわかるね? エレナとの出会いも当然覚えてない。 まぁそこら辺は私が上手く改変するけどね。 エレナの場合はちょっと事情が複雑だけどそこも私が上手くやっておこう。 さぁ、どうする?」



どうするって言われても…… エレナと顔を合わせる。 ところが……



「直也…… 私の事一旦忘れて」


「え?」



な、何言いんだすんだ!?



「あ! 変な意味じゃないよ? 私が直也の事覚えているから。 だから今度は私が直也に会いに行く、出来るだけ早く」


「でも…… そんな上手く行くかな? 俺エレナの事まったく覚えてないんだぞ?」


「うん…… だけど私直也に好きになってもらえるように頑張るから。 私直也の事が大好きだもん! 覚えてないのは悲しいけどまた直也と会えるなら……」


「エレナ……」


「全部思い出したの。 私は先生が言ってた通り産まれる事のない命だったの。 パパとママは居るけど産まれて来る前に私は死んじゃってたの」


「…… つまり流産だったって事か?」


「うん、それに今のままじゃ私直也の家に住ませてもらってるけど直也の両親とか後々どう説明したらいいかわからなくなるでしょ?」


「それは……」


「先生だったらそこら辺上手くやってくれるよ、ね? 先生」


「やれやれ、なかなか現実的な事考えてるじゃないかエレナ。 まぁ言われなくてもそこらはやっておくさ。 だから安心しなさい」


「ほらね? だから私直也に会いに行くよ」



エレナは俺を押し倒してキスをしていた。 



「またしよう? 今度は直也からしてくれたら嬉しいな」



恥ずかしがる俺に涙を流してニコッと笑うとエレナはファウストを向いてコクッと頷く。



「ではこれでお別れだ。 直也君、エレナ、元気でね」



ファウストが輝きを放ったと思うと視界がぼやけていった。



「エレナ!」


「直也! 必ず、必ず会いに行くからね!」





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