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36 エレナへの告白と急転直下


ここは海辺に面した旅館だ。 エレナはまた海が見たいって言ってたからここにしたのもあった。



「わぁ、夜の海もなんか乙だねぇ」


「お前って本当流暢になったよなぁ」


「エッヘヘ! でしょぉ? 私って天才だったりして!」


「調子に乗んなよ」



普通はありえないけどな。 子供のうちなら飲み込み早いのはわかる。 でもエレナは会った時点でもう14歳だったんだ、仮にいくら天才でも1ヶ月そこらでもう俺らが勉強しているような内容をほぼいちから覚えられるわけがない。



エレナを巡る今まではおかしな事ばかりだった。 最たる例がカレンの事だ。 あんなの現実にはありえない。 もしかするとエレナもこの世の者とかそんなレベルの存在じゃないかも。



だが俺はエレナを初めて見た時から一目惚れしていた。



「でも夜の海ってなんだか怖いね、入ったら抜け出せなくなりそう」


「まぁ普通はあんまり入ったりしないと思うけどな」



俺も抜け出せない何かに陥ったのかもしれない、エレナに会った事で…… でもそれがなんだ?



「エレナ」


「うん?」



俺はエレナの瞳を見つめる。 本当に綺麗だエレナは。



「俺、エレナの事が好きだ」


「ッ!!…… 直也。 ………… 私も直也が好き、ずっと…… ずっと前から」



俺はそんなエレナを抱きしめていた。 恥ずかしいとか、そんな事もう忘れていた。



「嬉しい…… 直也」



エレナは俺の背中に手を回してギュッと抱きしめる。



「ずっと俺の家に居て欲しい、エレナさえ良ければ」


「うん、私も直也とずっと居たい、なお…………」



途端に俺の後ろに回していたエレナの腕が落ちる。 エレナの言葉も止まり俺は不思議に思ってエレナを見る。



な、なんだこれ? エレナは人形のように硬まっていた。 目は俺を映しているが俺を見てはいない。



「エレナ? エレナ!! どうなってんだ!?」



エレナを揺すってみると少ししてエレナがハッと気付く。



「な、直也! 今の取り消して! ダメなの!」


「は!?」



エレナが焦ったように前言撤回を求める、意味がわからない。



「どうしたんだよ? 何言ってるんだ?」


「ダメなの、私まるで死神だ……」


「なんなんだよ?」


「どうしてこんな意地悪するの……」


「エレナ?」



その時背後に何か異様な気配を感じた。 それは大きな黒い高波だった。



「直也ッ!」



その時俺とエレナの間に電流のような衝撃が走りエレナと俺は弾き飛ばされてしまう。



エレナは波から反対側へ、そして俺はその黒い高波へと向かうように……



でも良かった、あまり泳ぐのが得意じゃないエレナが波の反対側へ飛ばされてくれて。 俺の意識は一旦ここで途絶えた。




次に目を覚ましたのは何もない暗い空間の中だった。 



そっか、俺は高波に飲まれて死んだのか。 ここはあの世の入り口か何かか?



「それに近い、だが違う」



どこからか声が聞こえた。 そしてその瞬間エレナが俺の目の前に降りて来た。 



「エレナ! おい!」


「んん…… 直也? 直也よね!? 良かった、もう会えないかと思った、直也!」



エレナは泣きじゃくって俺を抱きしめる。 俺もエレナをもう一度観る事が出来て良かったと思う反面ここがどこで一体どんな状況になっているのか全く見当がつかなく混乱状態だ。



「エレナよ、まさか自分から波に飛び込んで来るとはな。 お主は巻き込まないように弾いたつもりだったが…… いや、お主がそのような行動に出るのもそこの直也という人物をそこまで慕っていたのだな」


「先生、どうしてこんな事するの?」


「お主に言っておいたはずだ。 お主が見えた者は近い将来死の運命にあるはずと。 そして同時にお主の姿を認識出来た瞬間にお前はこの世に生を受ける」



つまりエレナは死んでたって事か? いや、そんなはず…… と思ったが最初エレナに出会った時から確かにおかしかった。 声が聞こえなかったり不自然な点はいくつもあった。 それに俺が死の運命にあったって?



「でも私は今の今まで覚えてなかった。 なのに…… 酷いよ先生」


「そうだ、お主が見えた人間はお主を心から想ってやれる人間を選ばせた。 生まれる前の記憶を持っていてお主は直也に死の宣告が出来たか? 今のように幸せに直也と過ごせたか?」


「それは……」


「だから私はお主にどちらも助かる機会を与えた、だがお主は猫にそれを使った」



猫…… カレンの事か。 じゃああれは俺に使わせるつもりだったのか?



「そ、そんな…… だって、だって私……」



エレナが悲壮な顔をして崩れ落ちる。 だんだん俺も状況が掴めてくる。



「エレナ、気にするな」


「直也…… ごめんなさい、私やっぱり死神だ、直也の事私が……」


「気にするなって言ったろ? エレナにとってカレンも大事な家族だろ? 誰にも見えない中俺と出会う前からカレンはエレナに気付いていたんだ。 エレナにそんなカレンを見捨てられるはずないだろ?」


「でもそのせいで直也が……」


「いいんだよ」



優しくエレナの頭を撫でエレナを落ち着かせる。 だけど気に食わない、何が気に食わないかってこの先生とかいう奴だ。 エレナに会わせてくれた事は感謝する、この先生とやらもエレナを助けようとしていた事はわかる。



だがこいつが説明不足なせいと試すような真似をして結局エレナは悲しんでいる。 そこは許せねぇ……



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