35 旅行
そして休みを利用してエレナといろんな所を遊んで回った。 今はとある温泉に行き一泊二日の小旅行中だ。
「おい、良いのかよ? こんな旅館に泊まって」
「良いの良いの! せっかくあるお金だし、パァーッと使おう!」
エレナの将来が心配になってきたぞ。 というより高校生の身分でこんな所に泊まりって親の許可とかそういうのいるんじゃないかな?
そんなのスルーだったから余計に変だなぁと思っている。 未成年で泊まるには親の同意書必要とか書いてあったのに予約してみると何もなしですんなりだった。 おかしいよな? でもこれと言って怪しそうな所でもないし。
まさか何かまた得体の知れない力が働いているのだろうか?
「なーおや! 難しい顔してどうしたの? お料理美味しいよ!」
「…… あ、本当だ。 にしても高校生なのにこんな贅沢していいのかと思っちまうよ」
「私がこうしていられるのも直也のお陰なんだから直也にはいっぱい良い思いして欲しいって思ってるの! それがいけない事?」
「そうか? だったらお言葉に甘えて良いのか?」
「うん。 甘えちゃって下さい!」
豪華な夕食を食べ終え露天温泉へと行く。
広いな、しかも誰もいないから貸し切りな気分だ。 この広い風呂を見てるとうちのアパートはなんなんだと思うぜ、当たり前か……
「おーい直也ー! 聞こえるー?」
「ってエレナ、そっちにも誰も居ないのか?」
「うん、貸し切りしてる気分で爽快! 直也も?」
「誰か居るかもしれないのにいきなり話し掛けるなよな?」
「えへへ、なんとなく! 凄い夜空が綺麗だよぉ? 公園から見てた時とは一味違うねぇ」
エレナに言われ夜空を見上げる。 おお、あれが俗に言う夏の大三角って奴か?
「本当だ、露天風呂から眺める夜空は確かに一味違うな」
「誰も居ないなら一緒に入っても同じだったね」
「はぁ!? 同じなわけないだろうが」
「そうだね、直也って女の子に触れるのも自分から触れるのも苦手だもんね」
「お前それ……」
「一緒に暮らしてるんだから私もわかってきたよ、それくらい。 だけど最近は直也ちょっと慣れてきた?」
まさかエレナにバレていたとは……
「まぁなんとなく」
「本当? 大咲さんの影響とかじゃなくて? 直也変だったもんねぇ」
「いや、それは…… うーん、どうだろ」
「否定はしないんだね? でもまぁ私学校とか行ってないし直也が学校で何してるかわかんないもんねぇ。 さぞおモテになるようだし」
「いや、そんなの苦手だから突っぱねてるよ。 エレナの言う通り俺そういうの苦手だったし」
「でもまぁあれだけおっかなびっくりしてた直也が最近は免疫ついたみたいだし。 前みたいな反応も面白かったけど生憎その時の私はよくわかんなかったし。 今になれば、ああって思うけど。でも変わったのは私も同じだね。 じゃあ直也は今の私って前の私どっちがいい?」
今のエレナと前のエレナ…… 比べるまでもないな。
「どっちがいいとかないよ。 エレナはエレナだ。 俺の中では前のエレナも今のエレナも同じエレナだ。 ふとしたきっかけで子供っぽい所とかあるのは前と何も変わってないしな」
「褒められてるのかわからないんですけどー?」
「ああ。 でもこれだけは言えるな、エレナと会えて良かったよ」
「…… 直也、私もそう思ってるよ」
バシャッとエレナの方から音が聞こえた。
「のぼせる前にそろそろ上がるね!」
「ああ」
「エレナ、少し話があるから上がった後少し外散歩しないか?」
「え? うん、いいよ」
今日、エレナに俺の気持ちを伝えようと思った。




