34 諦めない大咲とエレナの間
「直也、ボーッとしてどうしたの?」
「あ、え…… いや、なんでもない。 それより海に入らないのか?」
く…… 思わず放心してしまった。 何するかと思えば口付けをしてくるなんてお前どうしてくれんだよ!
「直也手繋いで。 それなら怖くないから」
「ああ……」
「? 直也?」
エレナを連れて手を振っている大咲の元へ近付く。 あいつとさっきキスしたんだな……
「先輩! ん?」
「いたたッ、直也手痛い」
思わずエレナを握る手に力がこもってしまった。
「ごめんエレナ」
「ううん、直也どうかした?」
「エレナちゃん海初めてなんだよね? だったら泳ぎ方教えてあげるから泳ごう?」
「うん、イルカも居るし。 直也も来て!」
「お、おう……」
大咲はそんな事言いながらエレナの事は俺に任せていたような気がした。 だが大咲の視線は嫌というくらい感じが。
「今日は楽しかったね羅衣」
「今度は2人で来てみるか」
「あー、それもいいかも」
「直也、俺ら後は別行動すっからそっちはそっちで楽しんでくれ」
羅衣達と別れ俺達は帰ろうとした時……
「直也、私トイレ行きたい!」
「じゃあ待ってるから行ってこいよ」
そして大咲と2人きりになる。 俺もトイレに行って来ようかな……
「先輩」
「ん?」
「私思ってたんです。 先輩にあれもこれも試したけど妙に手応えがないなぁと」
「そ、それで?」
「それで今日見てわかったんです。 先輩ってエレナちゃんの事好きですよね?」
「はぁ!? だってあいつはイトコだし」
「イトコとかそうじゃなくても先輩はエレナちゃんの事が好きって見ててわかります。 私もそんな風に先輩の事好きですもん。 今日のキスだって私の真剣な気持ちです」
「…… 確かに俺はエレナが好きだ。 だから大咲の気持ちは俺……」
「聞こえません。 あー、聞こえません」
「え?」
「そんなに急いで決めなくても良いじゃないですか? 無理矢理選んだってその時だけの衝動でやっぱ後悔したとかありますし」
「大咲ってさ、本当前向きだよなぁ」
「はい! だって先輩が居ると思えば前向きになれちゃいます」
「そっか。 でも俺ってそんなに想って貰えるほど立派な人間じゃないぞ?」
「そうですね、 嘘ついて合コン参加してたり私の気持ちを知りながら今の今までエレナちゃんに夢中とか」
「………… はい、すいません」
「あははッ、でもそんなのどうでもいいです、それでも好きですよ。 あ、エレナちゃん戻って来ましたよ? てことでこれからもよろしくお願いしますね? 先輩」
「ん? 2人とも何ヒソヒソ話してるの?」
「ふふッ、なんでしょう?」
大咲の意味深な顔にエレナは少しムスッとする。
「まぁいいや。 今日は海見れてその上入れて満足したし帰ろう?」
大咲とも途中で別れてバスの中、エレナは疲れたのかウトウトしだした。
「直也…… 眠い」
「寝てていいぞ? 着いたら起こすから」
「ん、わかった。 直也肩借りるね?」
エレナは俺の肩に頭を置いてスヤスヤと眠りに就いた。 もうこれくらいならさっきのキスに比べればなんて事ない。
キスか。 寝ているエレナの唇を見つめる。
事故とはいえしたんだよな、ちょっと前のエレナと……
「何?」
寝ていたと思ったらパチッとエレナが目を開けてしまう。
「お、起きてたのかよ」
「いやらしい視線を感じて」
「気のせいだって」
「いいよ? 見てて。 安心するかも…… じゃあ今度こそおやすみ」
エレナはそう言って目を閉じる。 あれ? ほんの少し前は反抗期だったのかな? 今のエレナは少し落ち着いているような気がする。
少しドキドキしながらエレナの頭に手を乗せるとエレナは俺にもっと体を寄せて傾いた。




