32 エレナ、俺の事……
「えーと、はい! これは直也の服!」
ベッドでゴロゴロしているとお腹の上にポンと服を置かれた。
「夏休みだからってゴロゴロし過ぎよ直也。 何時だと思ってるの?」
「え? まだ8時半じゃん?」
そう、もう夏休みに突入していたので俺は休みを満喫していた。
「もう! 夏休みでも仕事している人はとっくに通勤しているのよ?」
「俺まだ高校生なんですけど?」
「直也はお子様ねぇ」
出会った時はお前の方がずっとお子様だったんだけど? すっかり逆転してしまったように見えるが……
「じゃあもうちょっとゴロゴロしてていいだろ?」
「嫌! せっかく直也がいるんだから構って!」
「うわッ!」
俺にドスンと乗っかり弄っていた携帯を取り上げられる。 いきなり密着してくるなよ、心臓に悪い……
けどあれ? しかし前より抵抗はないような気が…… あれ? 俺って一体……
まさかこれは大咲に執拗に触られてきた成果なのでは……
「うん?」
エレナが首を傾げる。
「どうかしたか?」
「なーおやッ!!」
「ぐふぅッ……」
そのままエレナは頭を俺の胸に勢いよく落とした。 それはドキッとするの通り越して痛いぞ……
「んん?? なんか反応が…… 」
「いてて、な、なんだよ?」
「うぅ…… なんでもない!」
エレナはプイッとそっぽを向いて俺の携帯をポイ捨てして自分の洗濯物をたたみに行った。
エレナの奴どうしたんだよ…… 最近のエレナは前にも増して何を考えているのかよくわからない。
「カレン〜ッ! 私の洗濯物の上で寝ないでぇ! まだ途中なのにカレンったら。 でもこっちのカレンは純粋に可愛いにゃ〜」
チラッとエレナを見ればそのままカレンを撫で撫でし出した。
さて、今のうちにエレナとどっか行くか考えとくかなぁ。 海には行くとして水族館とかも行ったら喜ぶだろうなぁ。 あとは動物園とか遊園地とかもか? うーん、そういえば大咲の奴も遊びたいって言ってたし。
「じーッ」
「お? なんだ?」
「女の子に連絡でも取ってたの? はい、ジュース」
エレナがジュースを持ってきて俺の横にムスッとして座る。
あれ? この反応は…… エレナって俺が他の女の子と連絡取ったりしてるの嫌なのか? 最近のふとしたキッカケでエレナが機嫌悪くなる時も俺が誰か他の子との事だったりしたし、もしかして……
「エレナ」
「何?」
「俺が女の子と連絡取ったりしたら嫌か?」
「は? え? な、なな何!?」
エレナは顔が真っ赤になり慌てる。
エレナは俺の事……
「エレナ」
その瞬間俺に渡そうとしたジュースをバシャッと顔に掛けられる。 え?
「うわぁッ、あーッ! な、直也ごめん! 暑そうだったからザバッと冷やしてあげようと思って」
「エアコンしてるのに暑そうとは此れ如何に?」
「あん! もう! とにかくごめん! 早く拭かなきゃ」
エレナは床を拭いた雑巾で俺の顔をゴシゴシ拭く…… これ嫌がらせ?
「雑巾なんですけど?」
「あうッ…… ほ、本当ね、ごめん」
「まぁいいや。 ところでさっきの事なんだけど俺の勘違いとかじゃなければエレナって俺の事……」
「うぅ…… 調子にのんなッ!! あッ……」
「…………」
「あわわわッ、こ、こんな事するつもりじゃッ」
今度はエレナが飲んでいた方のジュースを顔に掛けられた。
最近のエレナだとこういう事になるとは思ってたけどその話題になると何かと俺に被害が出るしエレナとなんか気不味くなりそうだったので控え目にしておこうと思った。




