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29 エレナと俺


「あ、暑い……」


「暑いな……」


「なんでこんな時に限ってエアコンが故障するの!?」


「いや、俺に言われても。 業者来て直してくれるみたいだけどその間は我慢だなぁ」



エレナは最悪! と言い捨て床にゴロンと寝そべる。 



なんかもうエレナって年相応の女の子になったなぁと思う。 もともと少し気の強そうな顔してたけどやっぱりそういう面出てきたな。



「休みの日だと堪えるなぁ…… 」


「汗ベトベト…… びっしょりして気持ち悪い、シャワー浴びて来る」



エレナはそう言って服を脱ぎ出した。



「お、おい! なんでここで脱いでるんだよ!?」


「え? つい癖で…… って見るな!!」



エレナは俺に脱いだ服を俺の顔に投げつけた。



「俺は空気かよ……」



エレナの脱いだ服を拾って洗濯機に入れる。 風呂場からはエレナの鼻歌が聴こえてきた。



「ん? 直也ーッ! いるー?」


「え? ああ」


「冷えた飲み物用意しててー」


「はいはい」



洗面台に行くとカレンがウロウロとしている。 俺がここに立つとご飯くれると思ってるのだろうか?



「ニャア〜ッ」


「お前はさっきご飯食べただろ?」



本当にこいつ元気だなぁ。 あの時死に掛けたとは思えん。



「良かったなぁお前。 エレナに感謝するんだぞ?」



まぁ何もわかってないだろうがな。 俺も全然わからない事だらけだし。 エレナの過去についてもな。 



冷蔵庫を開けコップに氷を入れ麦茶を注ぐ。 これで文句ないだろ。



程なくしてエレナは風呂から出て来た。



キャミソールにショートパンツ姿でさっぱりして清々しそうだ。



「麦茶そこに置いといたぞ」


「ありがとーッ! んー、スッキリした! それにしてもこんなサウナみたいな所にいつまでも居たらまた汗だくになるしどこか出掛けない?」


「どこだよ?」


「図書館は涼しいでしょ?」


「あ、そうだな」


「勉強も出来て一石二鳥よ!」


「俺は休みの日は勉強勘弁だけどな」



そうしてエレナは髪を乾かし化粧をし始めた。 化粧の仕方とかもいつの間に覚えたんだか……



「んふッ! 直也どう? 可愛い?」


「いいんじゃない?」


「なんか適当!」


「エレナっていつも可愛いからさ」


「…… 誤魔化した! でもそれならいいや」



何故か上機嫌になりエレナは外着に着替え始める。 



やべぇ、また俺の事空気だと思ってやってるけどあれこれ言われる前にトイレに避難だ。



そしてトイレから出るとエレナはもう準備万端で俺を待っていた。



「行こッ! あ、カレン〜! 少しの間お留守番しててね? お昼ご飯はい!」



カレンに餌をやり家を出ると外から生暖かい風が吹く。 今日は本当に暑い。



「もう夏だねぇ。 直也、私そのうち海に行ってみたい!」


「海かぁ、海開きしたら行ってみるか」


「テレビでしか見た事ないし楽しみ」


「行った事ないのか?」


「うん、だから連れてって? それにどこか旅行とかにも行きたいなぁ」


「旅行かぁ。 お金掛かるぞ?」


「お金ならいっぱい持ってるでしょ?」


「あれはエレナのお金だろ?」


「直也にあげるって言っちゃったし直也のでいいよ〜?」


「本当かよ?」


「嫌だった?」


「嫌とかじゃなくてかなりの大金だしさ」


「私自分でもいろいろ変わってきたって感じるけど直也に言ってきた事は全部自分の本心よ」



じゃあ好きっていうのはどんな好きなんだ? と聞こうと思ったがチキンなのでやめておいた。 それでなんか気不味くとかなったら嫌だしな。



図書館の近くまで行った頃自販機でジュースを買っていると……



「ほら」


「ありがと! はぁ〜、美味しい! 直也も飲みなよ」



と、ジュースをエレナに渡される。 こ、これは間接キスでは……



「ん? 何?」


「あ、いや、俺こっち飲もうとしてたからさ」



急いでお金を入れガコンッと落ちて来たコーヒーを拾い飲む。



「………… そう」



エレナは俺に渡したジュースをパッと取った。 あ、あれ? なんか機嫌悪くなってないか?



「エレナ」


「何よ?」


「なんかお前怒ってる?」


「別に!」



図書館に着き涼しさがエレナの機嫌を直したのか俺を引っ張って次はこれとこれを勉強したいとかこの料理食べてみたい? とニコニコして俺に問い掛けていた。





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