28 年頃になるエレナ
「直也、なんで女の子って裸見られると恥ずかしそうにしてるの?」
「は!? そ、そんなん恥ずかしいに決まってんだろ! 男でも女にいきなり裸見られたら恥ずかしいわッ!」
「へぇ〜、そうなんだ。 直也も私に見られたら恥ずかしい?」
「当たり前だろ!」
「ふーん」
そんな事をつい先日話していた矢先、エレナの学習能力は向上していてついに……
「きゃッ!! な、直也いたの!?」
「エレナ…… ってうおッ!! な、なんで裸なんだよ!?」
「直也寝てたと思ったんだもん! み、見るなぁーーッ!」
恥じらいを覚えたようだ。 というより覚えたんなら裸で出て来るなっての! 相変わらず心臓が飛び出そうな程驚かす奴だなぁ……
だがようやくエレナもそんな年頃…… って最初からそんな歳だったか。
「うきゅぅ…… なんで今まで平気だったのに」
「いや、それはこっちが聞きたい」
「直也のエッチ!! いくら家族のようでも節度ってものがあるんだからッ!」
「俺のセリフなんですけど……」
でもまぁ、家族のようかぁ。 エレナにとっては俺ってそんな認識だもんな。
「というわけで! これからは交換制という事にします!」
「うん? 何が?」
「ベッドで寝るの!」
「うん? それなら俺がソファで寝るからいいよ。 エレナはベッド使えよ」
今までは一緒に寝ようとエレナがせがんで俺は悶々として寝付かなかったからちょうどいい。
「それはダメ! 直也が可哀想だもん。 直也のベッドだし」
「いいって言ってるのに……」
「直也が良くても私がダメなの! 直也は私のた、たいせ…… 家族みたいなもんなんだからッ!」
すっかり年相応の女の子になったなぁ。 エレナの吸収力は半端ない。 カレンが来た事で図書館に行く時間は短くなったがその分家でも勉強してたもんな。
でもこういう事はテレビとか観てて学んだんだろう。
「あ、そうだ。 直也これ直しといてくれる?」
「え? 俺が?」
エレナはそう言ってぬいぐるみを俺に渡した。 これは俺が学校へ行っている間エレナが暇潰しに作ったカレンを模したぬいぐるみだ。
下手くそな俺に何故これを……
「あのさー……」
「わかってるわよ、直也には難しそうだけど生憎私は勉強なり家事なりやり出すとなかなか暇がないの! だから直也にお願いしてるの」
「どうなっても知らねぇぞ……」
エレナが後片付けや何やらしている間に俺は慣れない裁縫をする。 そして悲惨な出来に当然なってしまった。
これじゃあ猫版フランケンシュタインじゃねぇか……
「ほ、ほら、直ったぞ?」
「こ、これは……」
俺から手渡されたそれを見てエレナは苦笑いをする。
「ろくな出来にならなそうだと思ってたけどここまでなんて……」
「すまん」
「…… でもまぁいいわ! なんか頑張って直した感あるし」
エレナは二パッと笑いそのぬいぐるみを高く飾して見ていた。
「じゃあ今日は俺がソファで寝るからエレナはベッド使っていいぞ」
「え!? 勝手に決めないで!」
これはプラス反抗期も含んでいるんだろうか? 何にしろエレナの成長を見て来たのでいろいろと感慨深い。
「直也の家なんだから遠慮は良くないの!」
「まぁもうエレナの家でもあるんだけどな」
「…… もう! じゃあジャンケン!」
そしてジャンケンの結果結局俺はソファになった。
「おやすみ直也」
そして夜が明けると……
は? ベッドで寝ていたはずのエレナがソファにもたれ掛かり俺の顔の目の前にエレナの顔が。
「ん? ふぁ〜、おはよう直也」
「お、お前いつの間にここに!?」
「え? …… あ! こ、これは直也が狭そうで寝苦しそうだから…… 付き合ってあげたんじゃないのよバカ!」
バカって言われた、エレナにバカって言われた…… こういう日が来るとは。 だけど態度は変わっても本質は変わってないような気がする。
「今日はすぐ帰って来るの?」
「そのつもりだけど?」
「そう言って前みたく遅く帰ってこないでよね!? ご飯作って待ってるんだから!」
カレンを自分の顔の前に持ってきて隠しながらそう言った。 それに何の意味があるんだ?
「エレナ、いつもありがとな?」
「ッ!? いきなり何よ? そ、そんなの直也にお世話になってるんだから当たり前でしょ! ………… こちらこそありがとね」
最後にボソッと囁くようにエレナは行って俺を送り出した。




