26 羅衣の訪問
大咲の奴、こちらの思惑と逆の方向に進みやがって…… あの後何かに付けてこれも慣れあれも慣れと言ってお触りされた。 って俺は生娘か!
そしてようやく学校が終わったと思えば……
「直也、行こうぜ」
「ああ」
羅衣が家に来てしまう。 なんとかやり過ごそう、エレナが下手な事しないといいが……
「お前のイトコって何歳?」
「14歳だ」
「じゃあ中学生か。 中二病真っ最中だな!」
まだ精神年齢は小学生くらいだけどな!
「お前彼女とは順調なの?」
「ああ、みぃちゃんとか? ラブラブだぜ!」
みぃちゃん…… すっかりリア充だなこいつ。
「そんなみぃちゃん放って置いて俺の家に来てて大丈夫か?」
「それなんだよ! みぃちゃん来週誕生日なんだけど何プレゼントしたらいいか一緒に考えてくんね?」
………… し、知るかぁーーーッ! 自分で考えろよ! 自分の彼女だろ!?
「今知ったこっちゃねぇとか思ったよな? なんで俺がそんなの一緒に考えてやんなきゃいけないんだよとか思っただろ?」
「お前エスパーか?」
「やっぱそう思ってやがったな!? 俺だってそうしたいけどよぉ、どうでもいい女と違ってマジで好きだから何あげたら良いかって迷うじゃねぇか!」
「つうかそれ俺に聞くか? 相談する相手間違ってね?」
「そりゃそうだけどな、たまには親友同士で恋バナでもしようと思っただけだよ」
「お前から恋バナとかって気持ち悪りぃな……」
「んな事いって直也は花ちゃんとどうなんだよ?」
なぜ大咲の事が出てくるんだ…… 昼休みを思い出してしまう。
「花ちゃんお前に夢中じゃん。 よっぽど好かれてるよなぁ、1年で1番可愛いと思うし」
「俺は別に大咲はなぁ……」
「この贅沢者め!」
なんて言っているうちに家に着いてしまう。 さて…… 出たとこ勝負。
「ただいまーーーッ!?」
「お帰り直也! 寂しかった!」
いきなりエレナが飛び出して来た。 そして羅衣の目の前で盛大なハグ……
「な、何事だ?」
「テレビでやってたから真似してみた」
「テレビ?」
トレンディドラマでも観てたのか? いや、それよりポカンとしている羅衣だ……
「この子が直也のイトコか? 外人じゃん…… てか超可愛いし。 嘘だろ? 嘘ついてるだろ!?」
「いや、嘘じゃねぇ。 それに外人じゃない。 ハーフだ」
「この人直也のお友達?」
「ああ、俺の友達の羅衣だ。 こっちはエレナって言うんだ」
「よろしくな、エレナちゃん。 直也と随分仲良さそうだな」
「うん、直也好き! でも一緒にお風呂入ってくれないの」
「え!?」
初っ端から爆弾発言しやがった…… 俺と羅衣の間だけおかしな空気が流れる。
「直也、今なんて?」
「ね、猫だよ」
「猫?」
「猫飼い始めてさ! エレナが連れて来たんだ。 だから猫を風呂に入れる当番はエレナの当番なんだ!」
「そうなの直也? そうなんだ……」
は、話を合わせてくれエレナ……
「エレナちゃん今知ったみたいな反応だけど?」
「そりゃそうだ。 今決めたから」
「直也…… カレンの事嫌いなの?」
「いや! そうじゃない!」
「直也に怒られた……」
エレナは怒られたと勘違いしてしゅんとしてしまう。
「なんかよくわかんねぇけどまぁいいや。 立ち話もなんだしお邪魔させてもらうぜ」
「あ、ああ」
「直也……」
エレナは思ったより落ち込んだのか俺の服の裾を引っ張る。
「今日の直也いつもと違う」
そりゃいつもと同じだったらバレるからな。 見ず知らずの女の子家に住ませてます、てへッ! で住めば楽なんだが。
「おー、本当だ。 猫居る」
「カレンっていうの」
「そっか、カレンか。 命名はエレナちゃん?」
「そうだ」
羅衣はカレンと少し遊んだ後、本題に入る。
「それでだ。 みぃちゃんに何をプレゼントしたらいいかな?」
「なんでもいいだろ?」
「適当だなおい!」
「なんの事?」
「おお! そうだ、女の子のエレナちゃんに聞けば直也に聞くより確実じゃん! エレナちゃん、俺彼女に誕生日プレゼント何あげたらいいか迷っててさ。 エレナちゃんは何がいいと思う?」
「彼女? 誕生日プレゼント?」
エレナはそう聞いて俺を向いた。 なんか嫌な予感がする。
「直也がいい!」
「「え?」」
またしても変な空気が流れる。
「プレゼント貰うなら直也がいい!」
「んん? あれ? 俺の質問なんだけどな…… ってなんで直也?」
「直也と私仲良し家族だもん!」
「…………」
「って事なんだ」
「…… 何がだ?」
「………… つまりエレナは羅衣自身がみぃちゃんにとって最高のプレゼントって言いたいわけだ」
「んん!? う、うーん…… そういう事? あれ? でもエレナちゃんがそれ言うって……」
「ほ、ほら、親が片方外人とかで日本語苦手だと日本語の言い回しが独特ってよくあるだろ? テレビのタレントとかさ。 それだ」
「え? あ、まぁ……」
せっかく来た羅衣だがあまり参考にはならなかったようだ。




