25 お前ちゃんと話聞いてた?
「じゃあ学校行ってくるけどその間カレンにちゃんと躾とかいろいろよろしくな?」
「うん、今日は家でお勉強する。 カレンと一緒に居るね」
エレナとカレンに見送られ学校へ行く。 なんか不思議な事ありすぎて頭が追い付かないけどエレナの嬉しそうな顔を見ていたらまぁいいかなんて思ってきた。
エレナはもともと変わってたしそれでもと今まで一緒に居たしな。
「直也、最近サボりがちじゃねぇか」
「ちょっといろいろあってな」
「まぁいいや。 そぉいや久し振りにお前の家に行っていいか?」
「は? なんで?」
おいおい…… ひとつ済んだ? と思えばまたこれか!?
「え? 何その反応? お前一人暮らしだから別に問題ないだろ?」
「今イトコが俺の家に何も持たずに家出して来たんだよ。 休んでた理由もそれでさ」
「なぁんだ。 そういう事か、じゃあ行っても問題なくね? 直也のイトコなら俺の友達も同然だぜ」
「お、おう、そうか…… 」
変にキョドったり断ったりすると逆に怪しいか? いやでもエレナと会わせるのはいろいろマズいか?
「で? 何そんな難しい顔してるんだ?」
「そんな顔してたか? いつもこんなんだろ? わかった、人見知りだったり愛想悪くても怒るなよ?」
「心配すんな、仮に殴られたってお前のイトコなら怒ったりすっかよ」
はぁ〜、こうなっちまったか……
昼休みになり、不足の事態が発生したらあれこれどう言い訳しようか考える為屋上へ上がる。
屋上のドア付近に数人の人影が……
げ…… こいつら例の公園での一件のクソ先輩達じゃねぇか。 そいつらも俺に気付きギョッとした顔する。
「あ…… 」
「んだよ? なんか文句あんのか?」
「い、いや別に……」
思い出してきたらムカついてきたので胸倉を掴み再度脅しを掛ける。 先輩達はビビったのか早速さとその場から離れていった。
嫌な奴らの面見ちまったぜ。 まぁあいつらもそう思ってるだろうが。
「あー、見ちゃったぁ! 先輩が先輩に脅しを掛けてるとこ。 いけないんだ!」
下を見ると大咲が……
「なんでお前居るの?」
「酷いです! あれから先輩に会ってないなぁと思って見掛けたからついてきたんじゃないですか! 誰が先輩の用事に付き合ってあげましたっけ?」
「あん時はありがとな。 助かったよ」
「助かったなら何かお礼して欲しいですねぇ」
「お礼?」
お礼…… 行った時にランチ奢ったのすっぽかしたお詫びと付き合ってくれるお礼も兼ねてだったんだがそれだけじゃダメか。
「お礼って何して欲しいんだ?」
「じゃあハグして下さい!」
「は、ハグだって!?」
「え? そんな慌てます?」
そうだ…… 慌てちゃいけない、ハグくらいで。 ハグくらいで…… 慌てふためいてみろ、大咲に先輩って小心者だったんですね! とかなんとかで……
ん? 待てよ…… 今までなんともないフリをしていたけどそういうの苦手って言えば大咲もわかってくれるんじゃないか? そうなれば変に密着する事もなくなって…… いいかもしれない!
「あのー…… どうしました?」
「実は俺さ、そういうの苦手なんだわ」
「苦手とは?」
「恥ずかしい事に俺って女の子に触れるのも実は緊張してしまうんだ。 なんか俺って喧嘩ばっかしてたし女にも素っ気なかったろ? それはそういうの隠す為であって本当はさ……」
「そうだったんですね!!」
え? 途中で言葉を遮られる。 そして大咲は俺に近付き両手を握る。 え? は?
「嬉しいです! 私に先輩のそんな所話してくれて。 そうだったんですね、無理してたんですね!」
「あ、ああ…… こういう手を握るのもな……」
思ってたのと反応が違うんですけど?
「先輩!」
「は、はい」
「私の前ではそんなの気にしなくていいです!」
「じゃあこの手を離してくれるか?」
「いいえ! 離せません!」
ちゃんと言葉のキャッチボールする気ある?
「だったら私もっと先輩に触れちゃいます!」
「ええと…… 話聞いてた?」
「要は慣れです! まぁ慣れと言っても触ってもなんとも思われなくなるのは嫌ですけど先輩にとってそれは私を受け入れてくれたって事になりますよね?」
「そ、そうか?」
「そうです! だから先輩はどんどん私に触れて私も先輩にいっぱい触れて慣れていきましょう! ウィンウィンな関係でどちらにとっても得しかないですよ!」
確かに!! 大咲って凄いや天才だぜ!!
思ってたのとまったく逆の展開に心の中では白眼を向いて棒読みで呟いていた。




