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23 不安は現実へ


「エレナ、さっきみたいにあんまり挑発するのは良くないぞ」


「え? 私そんな事してないよ。 ごめんねって大事なカレンのご飯あげたし」



せめてカレンのご飯じゃなくて人間のご飯だったらなぁ。



「カレンのじゃなくてああいう場合は人間が食べるご飯あげたらいいんだよ。 ってそんなんで済む状況と済まない状況もあるけど」


「カレンのご飯私も食べれるよ?」


「え? あ、うーん。 そうだけど」


「直也も食べたかった? 直也ならただであげる。 はい」



ニッコリと微笑んでキャットフードをエレナから渡される。 



そ、そんな顔されると弱い…… てかこれ俺が食べなきゃいけないの? 後でこっそりカレンにあげよう。 そして一緒に食べたと言おう、それがいい。



「カレン喜ぶかな? えへへ」



猫の気持ちはわからん。 野良でやってきて今更人間に飼われる猫の気持ちってどんなだろう?



まぁ愛があればだな。 エレナに愛されてるもんなカレンは。 餌は横取りしようとするけど…… いいよなぁカレンは。



「そういえばエレナはいつからカレンと一緒に居たんだ?」


「え? ………… 気付いたら一緒だったよ? うん」



あれ? なんだそのあんまり覚えてない的な発言。



「じゃあエレナはいつからあの公園に居たんだ?」


「………… 気が付いたらあそこに居たよ。 あれ?」



エレナまで疑問符が付くようになってしまった。



「じゃあファウスト先生も?」


「ううん、ファウスト先生はずっと昔から…… 私が小さい時から」


「エレナが小さい時はどこに住んでた?」


「ええと、んーと…… 広い所」



まったく要領を得ない。 なんだかちょっと前の時のエレナみたいだ。



「じゃあさ、エレナは今幸せか?」


「うん、凄く幸せ! 直也も居るしカレンも家に来るし。 1番幸せ」


「そうか」



1番幸せ…… エレナにとってそうなら俺もそれが1番だ。



一旦家に買った物を置いてカレンを迎えに行く。 カレンを待っていると夜になると思うので夕飯どうしたい? と聞けば公園で食べたいとエレナは言った。



「じゃあ前みたいにコンビニでなんか買うか」


「あ、カレンのご飯持って行く!」



ちなみに前のコンビニはエレナがやらかしたので反対方向のコンビニに行かざるをえなくなった。 まぁ距離的に少し遠いけど5分くらいしか違わないので問題はない。



「直也ー、これとこれも買っていい? あとこれもー」


「無駄遣いはダメだ。 こんな調子で使ってると本当に使いたい時なくなるんだからな?」


「直也のケチ…… 」



でもお金がなくなったら先生が補充してくれるのだろうか? いや、そんな甘くはないよな。 



あんな大金どうしてるだって? 灯台下暗し的な考えでベッドの収納スペースに服を上に被せて隠してる。 言っとくがいまだにエレナの事以外ではまったく使ってない。



「何を言ってるの直也?」


「いや、なんでもない。 こっちの事だ。 こんなもんでいいだろ?」


「うん、お腹いっぱいになりそう」



公園に戻り俺とエレナはベンチに座って夕飯を食べながらカレンを待つ。



だが待てども暮らせど一向にカレンが来る気配がない、最初はウキウキしていたエレナもしゅんとし始める。



「どうしたのカレン…… 嫌なのかな?」


「そんな事はないだろ。 遠くに散歩行ってるんじゃないか?」



だが俺はある一抹の不安が胸を過る。 カレンは野良猫だ、こういう風にいつも来ていた場所に来なくなったりするのは誰か他の家に厄介になったか、縄張り変えたのか、それか1番最悪なのは事故に遭ってそのまま……



だとしたらエレナはどれほど悲しむだろう? あれだけ楽しみにしていたんだ。



エレナはしゅんとしながらもカレンが来たらと言って笑顔を見せているが俺にはその度にどんどん不安が押し寄せていた。



そしてそのまま2時間が過ぎた。



「もう帰るか?」


「嫌」


「でもなぁ……」


「待ってる」


「うーん、うん? 冷たッ」



雨がポツポツと降り出してきた。 当然傘なんて持って来てない。 そして雨足は強くなる。



「雨だぞ?」


「…………」



エレナの顔が悲しそうに少し歪む。 泣いてるのか? 雨のせいでよくわからない。



すると草むらが揺れた。



「あ! カレン!」



エレナはやっと来たとカレンのもとへ駆け付けるがピタッと止まる。



「エレナ?」



ペタンとエレナが崩れ落ちた。 え?



エレナに近付いてみると血だらけでボロボロになったカレンが横たわっていた。




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