16 ダウン
ドンドンドン!
「直也開けてー」
ドンドンドンドンドンドン!
「直也ー」
「エレナ、静かに…… 頼むから静かにしてくれ! うおぉぉぉ…………」
俺は盛大に腹を壊していた。 上も下も大洪水だ、公園で泥だらけのメロンパンを食ったせいなのか女の子と一夜を共にした反動か…… まぁ前者だろうが。
エレナはなんともないみたいだ。 ワイルドな生活してただけあってエレナは丈夫なのかもしれない。
「直也……」
「エレナ、俺トイレしてるんだ。 だから待っててくれ」
「わかった。 開けて」
ダメだ、まったくわかってない…… 開けたら悲惨な事間違いなしだ。 エレナは気にしないかもしれないが俺は気にする。
戦いを終えひとまずトイレから出るとゴン! という音がした。
「え? ゴン?」
エレナがドアの横で頭を押さえて悶えていた。 まさかドア当たったか?
「エレナ、わ、悪い。 ずっとドアの真ん前に居るとは思わなくて」
「…… 直也出て来た。 いい」
そして俺は今は食べる気しないがエレナの朝食を用意する。 といってもカップラーメンだけどな。
箸は使えるかわからないからフォークでいいよな。
お湯を注ぎエレナの前に持っていく。 やはり見た事ないのか不思議そうにカップラーメンを見る。
「これ……?」
「少ししたら食えるから待ってろ」
「直也食べない?」
「あ、ああ。 俺はちょっと調子悪くて」
「直也…… 病気」
「いや、そこまでってわけじゃないからな。 多分大丈夫」
大丈夫だろうけど今日は学校行くのは無理だと思うので休む事にした。 でもちょうどいいのかもしれない。
エレナを家に1人ってのもマズいと思うし今日休めば明日は土曜で三連休だ。 その間にエレナに必要な日用品やらなんやらを買ってやれるし。
「エレナ、もう食べれるぞ」
蓋を開けてエレナにフォークを持たせるとエレナはカップラーメンを食べ出した。
「お、美味しい!」
余程美味しかったのかエレナは目を丸くして俺とカップラーメンを2度見した。 カップラーメンひとつでここまで感動的なリアクションしてくれるとは……
「美味しい、直也食べる、元気」
これは…… 美味しいから俺も食べれば元気になると言いたいのだろうか? エレナはカップラーメンを持ってソファに横たわる俺の方へ寄って来た。
そりゃ食べれれば食べたいけど……
「直也食べる元気」
「お、俺は後から食べるからエレナはそれ食べていいよ」
「…… そう」
あれ? 少し元気なくなった? そんな事ないよな……
エレナはテーブルに戻る際に床に落ちてたテレビのリモコンを踏んだのかテレビの電源が入る。
『えー、続きましては……』
「ひゃあうッ!!」
エレナはどこぞの南斗○聖拳の使い手の如き悲鳴を上げ俺にしがみ付く。 食当たりと密着したエレナによって俺はダメージを受ける。
「あ、あれ……」
エレナはプルプルと震えながらテレビを指差す。 お前は江戸時代からでもタイムスリップして来たのかと言いたい。
「テレビだよ。 大丈夫」
「テレビ…… 」
エレナは恐る恐るテレビに近付きあちこち見たり、チョンと触れてみたりする。 予想はしてたけどマジか……
なんてしているとまたトイレへの波が押し寄せて来た。
「お、俺またトイレ行ってくるから……」
「…………」
エレナはテレビを夢中で観ていた。 これなら朝みたいにトイレで待ってたりドンドン叩かれる事はないな、良かったかもと思いトイレに入る。
そしてまたげっそりとしてトイレから出るとエレナは尚もテレビを食い入るように観ていた。 ニュースなんだけど観ててそんなに楽しいのかな?
エレナにとって多分初めてかもしれないのでなんでも新鮮に見えるのかもしれない。
するとエレナは俺を向いた。 テレビを指差し……
「直也いっぱい…… 何してる? こわかった時も直也いっぱい」
「え?」
テレビには学生が映し出されていた。
「ああ、あれは勉強してるんだ」
「勉強?」
「ほら」
俺は鞄から教科書を取り出しエレナに見せてみた。
「わかんない……」
だと思った。 だが体調が良くなったらエレナに少し勉強させてみようと思った。 あれだけ熱心にテレビ観てたしわかんないながらも今も教科書を食い入るように見ているのでもしかしたら……




