13 招待
エレナと一緒に公園に向かっているんだけど結構目立つ。 まぁそりゃそうだ。今のエレナの出で立ちはホームレスのようだ、女の子なのにな。
だけど俺の隣を歩いてるエレナは少し機嫌が良さそうだ。 相変わらず表情の変化に乏しいけど雰囲気的に。
公園に着くとエレナはベンチに座り食べ物ちょうだい! と言わんばかりに手を差し出してきた。 だが……
「エレナ、手が泥だらけだ。 まず手をそこに水道あるから洗って来いよ」
俺がそう言うとエレナは自分の両手を見た。 するとペロッと泥をひと舐め。
「え!? な、何してんだ?」
「猫さんやる」
猫? まさか猫の真似か!? 猫はそんな仕草するだろうけどお前は人間だぞ! どんな野生児だよ……
尚も手に付いた泥を舐めようとするエレナの腕を掴んで止める。
あ…… ああーッ! 自分から触りに行ってしまった。 なんたる不覚、もうお嫁にい(ry
冷静になれ、女の子だと思うな。 そう! これは猫だ、猫だと思おう!
「直也……」
腕を掴まれて何やら考え出した俺を見てしびれを切らしたのか早く食べたいという顔をエレナにされる。
「待て待て、そこで手を洗ってからだ(こいつは猫、こいつは猫だ)」
「うー……」
手を引いて水道まで行ってエレナの手を洗う。 こちらとしても早くこの状態を解きたいので手早く洗った。
「手きれいー」
「よ、よし…… ふぅ。 じゃあ食べて良いぞ?」
「食べ物食べ物♬」
エレナはメロンパンをバリっと勢いよく開けるとメロンパンが宙に飛びあろう事が泥だまりの中へぼちゃん……
よ、よりにもよってなんでそんな所に泥だまりがあって運悪くそこへ落下させるんだよ!?
魔のコンボでメロンパンは食べれる代物ではなくなってしまった。 そう思った、思ったのは俺だけだったようでエレナは構わず泥だまりからメロンパンを拾い上げガブッと一口……
「えええッ!? お、お前!」
「おいひぃーッ」
腹壊すだろそれ…… しかも手を洗った意味は!?
「エレナ、それもうダメだ!」
「え?」
サッとエレナからメロンパンを取り上げる。 するとエレナは悲壮な面持ちで返してと俺の腕に手を伸ばす。
「ダメだって! バイ菌あるかもしれないだろ!」
「嫌ッ!」
「お、おい!」
必死に腕を伸ばすが届かなくてエレナは泣きそうになる…… 仕方ない。 俺は泥だらけのメロンパンを半分ちぎった。
「小さい……」
「俺も食べる。 腹壊すなら一緒に壊してやるよ」
「?? うん!」
あまり意味はわかってなさそうだけどこれでいいよな? それよりも聞きたいような聞きたくないような……
「エレナ、今まで何食べてた?」
「ん? んー、それ!」
何やら探してそれ(自主規制)を指差した。
うげげッ、マジで? 野生児ここに極まれり…… すげぇワイルドな生活してたんだな。
「猫さん食べる。 美味しくない」
猫を見習って猫と同じ食べ物を食べてたのか!? そのまま食ってたのだろうか? それは美味しくない……
「腹壊さなかったのか?」
「?」
反応見る限り、てか今の状態見てると大丈夫そうだけどなんかドブ臭い…… 足とか泥だらけだし。 絶対そういう所行ったりしてたよな?
「あ、猫さんきたぁー! 食べ物だよ、にゃあ〜ッ」
無邪気だな…… 缶詰の開け方が分からなくて四苦八苦しているエレナを見ていて…… いや、もう今日の様子見てるとわかるがこいつには帰る所ないんだと思う、理由は知らないけど。 このままじ狼に育てられたアマラとカマラの二の舞になりそうだ……
俺はそんなエレナに何かを動かされたのかとんでもなく身の程知らずで他の女には言わない事を言っていた。
「エレナ、俺の家に来ないか?」……と。




