12 これって仲直り?
学校が終わると俺はそのままコンビニへ行き一応エレナの分のパンやら何やらを買っていく。
ここ最近ずっとそうだ。 結構金が掛かるわ、それも空振りだったから尚辛い。
でも来てくれたらそんなの吹っ飛んでしまうんだろうなぁ。
ええと…… まずは町内一周してみるか。 ランニング代わりになるし。 制服だってのが気に食わないけど。
エレナを探しながらグルッと町内を見て回る。 でもどこにも居そうにない。 ちょっとした物陰や草むらの中にいるかもしれないと思うと猫や虫を探してるみたいだ。
ふと道路のマンホールに目が行く。
まさか…… いくらなんでもこんな所には入ってないよな?
でも草むらから出て来たエレナを見るとガタンとマンホールを開け顔を出している所を想像してしまう。
いやいや、いくらなんでもそりゃないわ。 マンホールの蓋って結構重そうだし。
すっかり空がオレンジ色に染まった頃、俺はコンビニの方まで戻ってきた。 結局見つかんなかったな。 そう思いガックリとしているとコンビニのドアの辺りで何か騒いでいる。
なんだなんだ?
少し人集りが出来ている。 俺も近付いて行って騒ぎを見るとその騒ぎの中心にはエレナが……
店員のオッサンに腕を掴まれ責め立てられていた。 エレナの手にはメロンパンとキャットフード、地面にはお菓子類が落ちていた。 まさか買うとわからないでそのまま持って来たのか?
エレナは前よりもくたびれた感じになり髪はボサボサで服も泥やら何やら肌色だったニットワンピはもう見る影もない。 エレナ自身も相当やつれている…… どんな生活してたんだ?
「こいつ!」
「食べ物…… 欲しい」
「小汚いガキが! 警察に突き出してやる!」
「警察? それって美味しい?」
「こ、このクソガキ!」
「ちょっと待って下さい!」
「な…… おや?」
見ていられなくて止めに入ったけどどうすかっかなこの状況……
「ああん? なんだ? あんたこいつの知り合い?」
「すいません、いも…… じゃなくて俺の親戚の子なんですよこの子。 どこ行ってたんだと思ったら」
危なく妹とか言いそうになった。 似てないのですぐにバレるだろう、なんせエレナは見た目ハーフっぽいし。
「はぁん? そうか、じゃあこのままあんたも警察に付き添って……」
「あ、こいつの分のお金払いますんで警察とかは許して貰えませんか?」
「そんなんで済んだら警察はいらないよ。 常識ないのかお前は?」
少なくてもエレナには常識はないと言っていいだろう。 仕方ない……
「すみません! 許して下さいお願いします!」
「直也?」
「お、おい……」
俺は地面に土下座をして謝る。 頼むからこれで穏便に済ませてくれ、と思ったら人集りから「ここまでしてんだから許してやれよ」と同情の声がチラホラ……
「う…… し、仕方ねぇな。 じゃあ今回だけは見逃すけど次はないからな! そこの小汚いガキにしっかり言い含めておけよ!」
「はい、この度は申し訳ありませんでした!」
良かった、許して貰えた。 これで警察行きはなしだ。 土下座した甲斐あったぜ。
そしてエレナが店から持ち出した分のお金を払う。 結構痛いけどこれでエレナがお咎めなしなら安いもんだ。
「エレナ、もう大丈夫だから行くか」
「…………」
「エレナ?」
エレナは俺の正面に回り込んだ。
「…… 直也、こわい…… ごめん」
「ん?」
「こわい違う…… ごめん」
エレナは振り絞るような声で言った。 エレナも気にしてたのか? でももういい、前のようにエレナと会えるなら。
「こっちこそあの時怖がらせちまったしごめんな?」
そう言うとエレナの目がジワッと潤んだ。
「お腹…… 空いた。 凄く空いた」
「ああ、そうだよな」
「猫さんのも……」
「うん、いいぞ。 公園に行こう?」
「うん……」




