10 嫌われた!?
「直也!」
先輩達の仲間かと思いきや背後から飛び出して来たのはエレナ。
エレナに危うく自分の拳を叩き込む寸前で俺は酷く動揺した。 そしてエレナにもその光景が恐怖と映っているように思えたからもある。
その瞬間の隙を突かれた。 後頭部に鈍い痛みが走った。
「ぐッ……」
頭を押さえて膝をつく。 エレナは唖然としていた。
「うおッ、そこの可愛い女の子ナイスだわ! お前ら今のうちだ、やっちまえよ!」
このままじゃいけない。 エレナも巻き込むかもしれない、俺は立ち上がって唖然としているエレナを押し出した。
バランスを崩して後ろにとてとてとよろめきエレナは尻餅をついた。 少し乱暴だったけど離れててくれ。 そう思っていると背中に衝撃が走る。 また殴られた。
「ははッ! 逃げんなよ? あとそっちの女もな!」
「あ? 逃げる……?」
「え? ぶえッ」
まずは俺の背中に見舞った先輩の顔面に一撃入れた。
「てめぇら覚悟しろよ? もう手加減とかしねぇからよ」
「う……」
先輩達は俺がぶっ飛ばした仲間を見て退く。 こいつはもう起きてこねぇな。
「お、おい! ビビんなお前ら、あいつ1人だ!」
「あ、ああ!」
もはや一撃で1人沈んだ仲間を見て及び腰な先輩達は半ば無理矢理に俺に襲い掛かって来た。
そして……
「あとはあんた1人だな」
「こ、この野郎……」
「大丈夫だって。 当たりどころよければ一発で気絶だ」
「ふざけんなッ! ぐふぅッ」
隙だらけだったのでボディに一発入れる。
「残念、当たりが悪かったな」
「ゆ、許して……」
「は?」
「も、もう俺ら帰るから許してくれ」
「だったら最初からこんな事するなよな? でも今回は許せねぇわ」
俺は先輩に再度拳を叩き込もうとした。
だがちょうど俺が殴ろうとしている正面にエレナが。 その顔はさっきとは非にならないほど怯えていた。
悲しい顔して欲しくないんじゃなかったのか? 俺は……
先輩に負けていた拳をスッと下ろした。
「やっぱもういいや。 そこに転がってる奴ら連れてけよ。 でもな…… 今度来たら最後までやってやるからな?」
「ひいッ」
先輩にそう告げると伸びてる連中を起こしてさっさと退散していった。
いてて。 頭を触ると微かに血が出ていた。 少し切ったか、それにちょっと殴られた。 それよりエレナだ。
「エレナ」
「…… ッ!!」
エレナに近付こうとするとエレナは後退さる。 え?
「エレナ……」
「こわい…… 直也こわいひと、こわいひと嫌ッ!」
「おい、エレナ!」
エレナはどこかに走り去っていった。 追えば捕まえられたがエレナのあんな顔見てしまったら追おうという気持ちがなくなってしまった。
あの怯えた表情…… 俺に向けていた。 そりゃそうか、派手にやっちまったしな。 本気で嫌われたかもしれない。 ………… 学校行こう。
その後当然遅刻して学校へ行った。 そして当然羅衣につっこまれる。
「おいおい…… どうしたんだよその顔? それにめっちゃテンション低くね?」
「これは…… こけた」
「嘘付けや、喧嘩して来た顔だぞそれ。 お前がそんなに殴られるなんて珍しいな? まさか例の真央ちゃんとやり合ったのか!?」
「そんなんじゃねぇよ…… 」
エレナに怖がられたという事実は俺に重たくのし掛かった。
今日見た夢は正夢だったのか? それに明るいうちにエレナを見たのは合コンの時以来だな。 だからハッキリと怯えた表情も見えちまった。
今日夜エレナ居るかな? 俺のそんな淡い期待は夜になり打ち砕かれた。
待っていられるだけずっと待っていたがその日エレナは公園には来なかった。




