表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

がらくた小噺

かつらとお経と猫

作者: チキンカツ

授業で「猫、葬式」のテーマで作品をつくる課題が出ましたが、間に合わず泣く泣く没にした短編。せっかく書いたので投稿してみました。

 暑い夏の日。遠い親戚の葬式に出席することになった。式場ではエアコンディショナー、略してエアコンが効いていて、いくらか涼しかった。

 葬式ではあったが、雰囲気は明るく、あちらこちらで○○さんが今どうしているやら、昔はどうだったやらなどの話し声が聞こえた。故人は大往生だったようで、葬式はさながら同窓会のようなものになっていた。同窓会といえば、ついこの前参加したばかりであった。あのときはわざわざ場所を用意したが、年を取れば自分達も葬式の場が同窓会になってしまうのだろうか。

 そんなことをしみじみ考えていると、棺から何かふさふさしたものがはみ出ていた。そのふさふさしたものは、黒く、先がフックのようなもので止めてあり、そのフックには、つり糸のようなものが括り付けられていた。つり糸の先は棺の中に収められているようだった。

 気になってじっと観察をする。なんと、ふさふさした黒いものはかつらであった。


 …何なんだ、あれは。

 かつらをみていると、何人かと目が合った。彼らも、自分と同じようにかつらが気になって仕方がないのだろう。

棺桶からはみ出したかつらはゆらゆら、ゆらゆらと風に揺れていた。ちょうどお坊さんがあげているお経のリズムと同じくらいのペースで左右に動いている。


 動くかつらとお経。しばらく異様な光景が広がっていた。


 それから数分後。たん、と音がして振り返ってみると、部屋の隅で猫がじっとこちらを見ていた。かつらが左右に揺れる。猫も顔を左右に揺れる。お経の声もなぜか大きく聞こえる。かつらの揺れがだんだん大きくなる。猫もじりじりと近づいていく。


 いよいよ、猫がかつら目掛けて飛びかかった。猫は幾度もかつらに容赦のない猫パンチを繰り出す。何度も猫パンチを受け、かつらがボロボロになっていく。ついに、釣り糸がきれ、黒いかつらは宙へ舞う。そしてかつらはフリスビーのように綺麗な弧を描きながら、お坊さんの頭の上へ落ちた。


 なんとも言えないような空気が続く。お坊さんは、全く動じた気配も見せず、変わらずお経を唱えていた。


 肝心の猫はというと、棺のそばで丸くなりながら、気持ちよさそうに眠っていた。

シュールコメディを目指して書きましたが、上手く出来たかどうかは分かりません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ