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魔界食肉日和  作者: トネリコ
魔界編
9/62

9、魔界博物館

 




 きゃははは


 魔界博物館に反響するちび魔族っ子達の声。

 一応魔界で最も古く、カビが生えまくりそうな程度には歴史ある記念物も最大数保管している由緒正しい博物館ではある。

 脳筋も多い魔族だが、強者好きの血らしく歴代魔王様方へのファンも多いので何だかんだ観光客も多いのだ。

 というわけで今回は書庫番からの出張アルバイト役としてちび魔族っ子達の引率観光案内役である。

 はぁ、金貰えるからやるけどマジめんどくせーわー


「ガキ共わかったかー。つまり現魔王様のおじいちゃんがうっぜー人間達にプッツンしちゃって今に至ってんのよ。ちなみに余裕で勝てたけど面倒いから今はあしらうだけって感じねー、潰しても潰しても幾らでも湧いてくるゴッキーに構うの面倒いっしょー? そんな感じなー。んじゃさっさと次行くぞー」


 わー


 全然聞いてねぇがまるっと無視する。

 はい、次、次


「んでこれがそのこまけー歴史ねー。現宰相作だけどこの細かさがマジ性格表してるよなー」

「はいせんせー」

「何だ?」

「宰相様はずっと生きてるんですかー?」

「あー確か現魔王様と同じ3代目らしいぞー。ちなみにさっき言った登場人物全員生きてるから」

「すーぱーじいじーずですねー」

「だなー」


 小さな三角の旗をぴらぴら振る。

 園児共の質問に答えるのもお仕事の一つである。

 偶に鋭すぎる質問する園児もいるがな。

 まぁこいつら見かけは園児だが中には数年で成人の種族もいるから今のうちに教育中なのである。

 つまりリアル見かけは子供頭脳は大人のマセたやつらもいるということだ。

 おい飛ぶな、ここ飛行走行禁止だから

 聞けっつーの、トラップで死にたくねーだろ?

 尻触んなっつの

 うっぜー、かったりぃ、あー火も禁止だっつーのに


「せんせーこれはー?」

「あ? これは――ぶっっふぁ! ウケる! ワニめっちゃイキってんじゃん!」

「せんせーしりあいー?」

「そうそう、今も存在が黒歴史の脳筋ねー。多分これ万人斬りーとか言ってた武勇伝のだろ。残されてるとかマジ黒歴史」

「おートカゲここかー」


 噂をすればである。

 さっきまで散らばってたガキ共も、流石に壁画やら巻物に残ってたのが目の前に現れたからか興奮気味にわらわら集まってきた。


「あ、ワニ、ガキ共は食うなよ」


 すげー でけー きゃー 硬ってー


 大人気である。

 こいつ等さっきまで全然話聞かなかった癖にげんきんなガキ共め

 ワニも調子に乗って高い高い高すぎるをやっている。

 天井に足の裏を当てさせて自力で地面に向けて蹴らせる遊びである。

 ワニがやると一般より高速かつ危険だし、博物館の天井めっちゃ高ぇけどまあどっちも楽しそうだからいいか


「おートカゲ分かってるってー」

「てかワニこれお前だろ、マジウケたんだけど」

「これなー、勝手に描かれたんだよなー」

「ワニも金とっとけばよかったんじゃね」

「別に困ってねーしなー」


 ねーねーポーズやってー


 興奮した園児達が画を指差しワニへと詰め寄る。


「だとよワニ」

「おー、じゃあトカゲいいかー?」

「別にポーズくれーいいんじゃね」


 興味無かったので適当にひらひらと手を振ってそこらの絵でも見るかーと移動しようとすると、その手どころか腕ごとワニに捕まれた。

 は? 


「おー分かったわー」

「え、おいマジやめ」


 ぶっしゃーと腕が取られる。

 腕を取ったワニはいそいそと画の前まで行っている。

 マジかよー、サービス精神旺盛過ぎだろ

 リアリティマジワロス

 画に比べると貧相な腕だが、大志を抱け的に片腕を掲げたワニが大口を開けてポーズを決めた。

 仕方なしにやられたーという感じでその足元へと寝っ転がる。

 はぁ、引率ってやっぱ割に合わねーなぁ

 って、ちょ、戦斧だすのかよ! 一声掛けろっつの!! 下ろす切っ先で前髪切れたぞ!


 すっげー!! ほんものだー!! 

 あの、写真撮ってもいいですか?


 園児どころかなんか一般客まで集まり出した。

 動くに動けねぇ…、マジかよ


「がっはっは、いいぞー」

「ワニお前が言うのかよ。えー、これが後世に残ったりしたら死んでも死にきれないんだが」

「トカゲいいじゃねーかー」


 ノリノリになったワニの一声で撮影会が始まった。

 フラッシュまぶしい

 おーい、背中側の宰相の巻物が泣いてるぜ?

 まあ血糊じゃなくてリアル血液だから、最近のイベントってすごいわねー、匂いも色も完璧よ、臨場感ヤバイわねーという言葉に全部「ガチっすから」しか言えないのだが


 少しして飽きたワニがむっしゃむっしゃと腕を食べて撮影会が終わった。


「トカゲやっぱうめーなー、好きだぜー。でも時間経つとすぐよりかは味落ちるんだなー。今から結婚しねー?」

「ワニ、セリフが只の食レポだぜ?」


 埃を払って立ち上がっていたら何故か周りから拍手された。

 は? ガキ共ひゅーひゅーとか冷やかすんじゃねぇ。マジ止めろ、羽毟るぞ


「トカゲ返事はー?」

「私が巻物の中だけに存在する時に返事してやるよ」


 しっしと野次馬を追い払い茶化すガキ共を次の担当へ引き渡す。

 茶化すマセガキ共とバカなワニのタッグはマジ最悪だと知った。

 二度と引率なんざやりたくない





「あ、引率ありがとうございました。今日のイベントまたやってくれって問い合わせが凄かったんですよ」

「さいですか」

「で、これ今日のお礼で…」


 じゃらりと明らかに重たい袋が渡される。


「また良ければお願いします」

「喜んで」





 もう1回くらいならいいかもしんない











 

 



 

 やっぱ現役のヒーローに会えたからか、引率以来園児達の間で憧れの人はー?という質問にワニも以前より更に名前が挙がるようになったようだ。

 え?トカゲ? 


園児「とかげー? だれですかー? あ、あのせんせーかー。せんせーたまのこしだから、いまのうちにつかまえとけばいいのになんでだったんだろー。へんなのー」


 …トカゲがんばれ☆(鬼



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