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魔界食肉日和  作者: トネリコ
魔界編
46/62

46、発情期二:こんな時に限って滅茶苦茶会う

 




「トカゲさん、何故そのように観察してくるのですか」

「司書長、今日は司書長だけ見ていたい気分です」

「不可能なことです。しかし宰相より事情は伺っております。こちらとしても今後の作業を考慮し、暫く仕事内容を配慮しましょう」

「司書長神様ですかありがとうございますっっ。結婚してくださいっっ」

「それは現実的ではないですね」


 朝は人影のおらぬ早い内から出勤し、後はもう人を目に入れぬようひたすら司書長の灯りを眺めていたら、手の掛かる子どもを宥めるように言われた。

 というか、宰相が司書長に言っといてくれたようである。流石宰相職、仕事の出来る白山羊さんだ。


 仕事に戻る司書長を見送っていると何か音が…?

 ん?というか段々近付いてきてるような気が


「あ、トカゲさんですよねー? 丁度いいところに」


 後ろから布のはためく音と共に声を掛けられる。カタカタと乾いた音?

 ちょ、今誰にも会いたくねぇんだっつの、誰だよ!?


「チガイマス」

「いや、合ってるじゃないですかー」

「マゾクチガイデス。というか誰だ?」

「そりゃ顔見なきゃ分かんないでしょ~、変な人ですねぇ。とりあえずこっちは仕事なんで、着払いで三魔五戦円お願いしまーす」

「はぁ!? またサイトに値段騙された! 通りで他のより安いと思ったんだよ! あ、しまった顔見ちまったぁッ」

「はいー? 人の顔みるなり酷いですねー。幾ら目がないとはいえ心で涙してるんですよー。死神は繊細な子が多いんですから~。こんなブラック職場辞めたいのに再就職先は見つかる気配もないんですけどね…はは」

「いや、ちょっとのこっちの事情で悪気はないんだが…、な、何かすまんかったな?」

「いえ、はは」


 死神の目が虚ろ…とかは眼窩が窪んでて真っ暗穴状態なので分からんが、あまりに闇のオーラをまとい過ぎててつい謝ってしまった。顔と似合い過ぎてて恐いぞ?その雰囲気でいけば警備会社いけるんじゃねーか? あ、死神は物理防御力が骨しかないか、色々察したかもしれん。心の傷をえぐってすまんな


 とりあえず愛想笑いをしてやる。

 何故か「はは」と骨の癖に更に水分の抜けた笑いになった。

 珍しくこのトカゲ様が慰めてやってるのに贅沢な骨である。

 だが慰めと目が合ったこととは別である。いや、目はないが。


 あー、顔見ちまった…、いや、今の所宰相と司書長と死神というどれを引いても何となく微妙に大丈夫そうなラインナップだがよ

 予想だがどうせ死神や司書長みたいな霊系よりはまだ獣人よりの宰相のが細胞相性は近いだろうしな


 …よし、大丈夫か


 安心すると3魔5戦円の恨みが湧く。

 クッ、もうマジであの悪徳サイト許さんッッ

 魔王様写真集三が地味値上げに値するもんじゃなかったら匿名でサイトを悪く言ってやるッ


「まいどありー。ではこれでー」

「あいよー、じゃあなー」


 ひゅーんと黒いぼろマント、もとい死神が窓から空を飛ぶ。

 若干ふらついてる辺りに労働環境の悪さを感じた。あいつら夜行性なのにこんな朝っぱらから働かされて…


 まぁそんなことは置いといて、よっし写真集を見るk―――


「のう?」

「は、はぃぃぃぃ」

「そんな怯えんでもよかろう」

「い、いえ、気のせいですよハハハ、前宰相は今日もお元気そうでナニヨリデス」

「ほっほ」


 ちょいちょいと引かれた袖先にはコロポックルの前宰相がおわした。


 おい、まさか死神が来た所を待ち伏せされていたのか…!?

 内容やタイミングまで読まれていたのだとしたら戦慄ものの恐怖存在である 

 

「きょ、今日は如何されましたか?」

「いや、ちと面白い事態になってると知っての?」


 好々爺然として面白がる様に微笑みかけられるが、こわひ

 何故宰相と多分魔王様と、司書長くらいしか知らないはずのことを知っているのだ…

 しかも”聞いた”じゃなくて”知った”というところに若干の恐怖を感じる。

 しかし、どうやら魔王様写真集三を狙いにきたわけではないらしい


 …ん?


 そこでハッと思いつく。

 そうだ、前宰相ならいい解き方とか”知って”いるかもしれん!だってあの前宰相だしな!!

 往生際が悪い?知るか!こちとら命掛かってんだ!!


 となれば話は別である。逃げたいとばかりに顔が引き攣っていたが、一転してキラキラとした視線を前宰相へと向けた。


 前宰相様ここで会ったのも何かの縁!どうかよろしくお願いします!

 期待の内心を胸に前宰相へと全力のおねだり開始を決意する。いくぞトカゲ!


「前宰相その件で、いい解除方法を教えて頂ければ!! どうかぜひ!!」

「ほっほ? もう現宰相から聞いておるじゃろ?」

「できればそれ以外はないですかぁぁ。まだ命も処女も無くしたくないんですぅぅ」


 恥じらい? 知るか! こちとら命が(以下略

 体の小さい前宰相にうぉううぉうと周囲に魔族がいたら引くレベルで縋っていると、ベシッとデコピンされて剥がされた。地味に痛い

 

「これ、前魔王様より賜ったローブに皺が寄るであろう?」

「はひ」


 後ろの(呪いの前に死にたくなかろう?)という笑顔の意訳が聞こえたので大人しく居住まいを正すと、顎鬚を撫でた前宰相はふむと呟いた。


「まぁ現在の状態であると現宰相の方法しかないのぉ」

「そうですかぁ」


 前宰相まで言うのならそうなのだろう。

 これはもう諦めるしかないかと遠い目になっていると、前宰相がちょいちょいと袖を引っ張った。

 へい、なんでやんしょ


「しかし、時間は掛かるが方法はあるにはある」

「ほ、ほんとですかッッ!!?」


 前宰相キター!!

 さすがだぜ!! よッ!! 元魔界の影の統治者!!

 内心で小躍りして前宰相を上げまくっていると、またちょいちょいと袖を引かれた。慌てて下を見ると、前宰相が両手を揃えて手の平を上にしている。


 …?

 とりあえずその上に握った手を置いてみた。

 叩かれた。 

 

「お手じゃないわバカもん」

「前宰相ひでぇ」


 理不尽さに涙目になっていると、にんまりと顎鬚に隠れた口元が弧を描く。

 うえ、こわひ


「勿論情報料は前払いじゃよ?」

「金持ってないド貧乏です」

「えばるでない。ほれ、わしは優しいからのぉ、特別にその手に持っている現魔王様写真集三で許してやろう」

「ええッッ、ま、まだ一ページも読んでないのにそりゃないぜ前宰相!!」

「ほお、では情報は諦めるのじゃな。ほっほ、わしはどっちでもよいがの」

「く、くぅぅ」

 

 手に持っている魔王様写真集三を見る。

 前宰相のにこにこ顔を見る。

 魔王様写真集三の魔王様が読者へ向けてあーんしてくれているご尊顔を見る。

 前宰相が手の平を上に向けてはよぅはよぅと催促している。


 くうぅ、絶対これタイミング狙われてたに違いないっ

 私より金持ってるくせになんたる極悪非道なのだ! さすが魔族か!

 

 でも見たかったぁぁ

 そりゃ命掛かってるけどよ、これ三魔五戦もしたんだぜ!? しかもこれ発売初日最速で頼んだから、絶対今から注文したら数か月待ちになるのによぉぉ


 心で血涙し内心でじたばたしつつ、諦めて魔王様写真集3を差し出した。

 くぅ、前払いだ持ってけどろぼー!


「離さんのかの?」

「あ、つい未練が」


 前宰相にほくほく顔で写真集を毟られる。

 悲しい。こうなったら呪い解除して元は取ってやらぁ! 情報こいやぁ!

 

「さて、では対価の情報じゃがの」

「おう!」

「まずわしの伝手で禁書編纂の研究狂いがおるでの、そやつを探して禁書を解読してもらい、新しく解除方法を作り出してもらうというやり方があるの」

「ほうほう、そんな奴居たんだな。研究狂いもほんと千差万別だなぁ。それで、こっちは何をしたらいいんだ?宰相に言って禁書の持ち出しを頼めばいいか?」

「ほっほ、いや待っておけばよい。ただし」

「へぇ、楽でいいや! …ん? ただし?」

「まずアヤツは魔界中からよく狙われておるからのぉ、存在ごとよく秘匿隠遁しておるから、わしの力でもまず探すのに二ヶ月、禁書の把握に半月、解除方法の創生に半月程と予測して計三ヶ月待っておればよい計算じゃな」

「ま、待てよ前宰相。明らかに呪いの発生期間から大幅にはみ出てんだが!?」

「そこはほれ、発情時はそなたの精神力の問題じゃろ? なに、無理なら現宰相の方法で交雑でも体液接種でもすればよいし、三ヶ月乗り切った時用のご褒美保険も用意しておけばよいという話じゃ」

「な、なるほど?」


 何だか納得したようなしてないような?

 騙されてる感じがして釈然としないので、一応質問してみた。 

 はい、せんせー


「前宰相質問なんだが」

「なんじゃ?」

「前宰相予想で三ヶ月後の保険を使う予想は何パーだ?」


 つまり三ヶ月発情に耐えれるかどうかの確率は…


「ほっほっほ、よい質問じゃの。0パーじゃ」

「写真集返せ前宰相おおおお!!!!」


 飛び掛かった瞬間顔面を踏ん付けられて、ほくほく顔の前宰相はしゅたっと窓から姿をくらます。


 身軽か!! くっそ逃げやがったあのじじいいい!!

 完全に詐欺じゃねぇか!! 国民騙してんじゃねーぞこらあああ!!


 地団駄を踏む。

 前宰相に発情してもぜってー三ヶ月耐えきってみせる!!

 うがー!!


 荒ぶっていると、いつもの独特の腐臭が漂ってきた。

 はっ、これはミイラ司書のか! こんなとこアイツに見られたらまた嫌味ったらしくヤレヤレと鼻で笑われる! そんでもって口元の包帯ずらしてニヤっと片頬だけあげやがるに違いねぇ!

 長年の経験上奴の行動は把握済みである。それに今は何が何でもアイツを視界に入れたくねぇ!


 慌ててきょろきょろと視線をさ迷わす。

 どうする、どんどん包帯を引きづる音が近付いてるし…。というかまたアイツ引きづってやがんな、この優しいトカゲ様が一回切れよと言ってやろうか


 ひとまず咄嗟に、適当なドアノブを捻るも鍵が掛かっていた。

 おいまじかよ、何で今日に限って閉まってんだよ

 うお、やべぇ階段上がってきた!

 開け!くそっ次! ここもか! 次頼む!! おお、おっしラッキー!

 

 開いたことに感動して中も確認せずに暗い室内へと一気に飛び込む。


 つ、つっかれたぁ、この騒動が終わったらミイラ司書殴るか引き摺ってる包帯踏ん付けてやる

 理不尽?知るか!こちとら命(以下略


 トカゲ様作の完璧なる策を計画していると、ミイラ司書の臭いで麻痺していた鼻が嗅ぎ慣れた臭いを察知した。

 んあ?これは―――


「あっれー? トカゲから来るなんて珍しい」


 響いた声、光る赤目、独特の饐えたこの鉄錆び臭――― 

 おいおいおいおい、マジかよ


 思わず既に朝っぱらから満腹レベルの遭遇率に対しての怒りが出る。

 マジで…


「…な」

「な?」

「何で居んだよ吸血鬼ぃぃぃ!!」

「ええー、トカゲが飛び込んで来たのに。俺部屋で彼女からご飯貰ってただけだよ?」

「知るか!!」

「理不尽はんたーい」


 血を吸われた後らしきトロンとした金髪ボインちゃん。その上には暗闇の中煌々と赤目が光っている。

 遭遇に次ぐ遭遇に次ぐ、避けたと思ったらまた遭遇。

 何でだ!何で今日に限ってなんだ!と頭を抱えるトカゲと、今日も何やら面白そうな事態になってるなーと察した吸血鬼。


 どうやらまだまだトカゲの一日は本人不本意ながら続くようである。

 皆々様どうぞご期待くださいませ?

 はい、とりあえずがんばれトカゲ☆












 タイトル:こんな時に限って滅茶苦茶会う(あるよねー、なんでだろうねー(棒))

 トカゲ「なんて日だ!」

 トネコメ「過去話を読み漁ったがんばりが集約した日だ! 色んな子出したかったんだ!」

 トカゲ「お、おう…?」


 なおまだ登場させる予定である(内緒話

 そんな日もあるよトカゲさん!どんまいどんまい!まだまだいけるいける!






 死神の職場探しはまだまだ難航するようだ☆

 ちなみに勿論前宰相は内容やタイミングまで読んでいました☆

 え?恐怖存在?そりゃ魔界の統治行えてたんですし(笑顔 

 前宰相のクズ度はトップクラスだが、シリアルキラーの様な無差別残虐系ではなく、研究狂い寄りの目的の為に邪魔なら躊躇なく排除する的な感じである。鳥と似ている気もするが、より真面目に、より規模がデカく、より知恵が回り、より狂信的に策が踊った感じである。つまりよりはた迷惑←


 魔王様写真集三をその後再度予約しようとしたが、案の定「追加発注中です。現在予約は受け付けておりません。入荷次第販売予定ですのでお待ちください」と言われ敢え無く撃沈した。前宰相ぉぉぉというトカゲの嘆きがあったとかなかったとか


 長くなったのでここで区切り

 次は吸血鬼さんの続きと、あの子は確定で、ワニさんは……で、でるかな?←

 わ、ワカッテルヨ?つい悪戯心が湧いちゃっゲフンゲフン。トカゲの運が悪いからに違いないネ!☆

 まぁ正直な所、運命なら掴み取ってみせろよ?というわけで(誰とは言わないが


 はい、何だかんだ予告より早く投稿出来てるのですが、(若干後半更新を焦って走り過ぎちゃった気がするので手直ししようか迷い中だが、それにしても)未だに目的のエロい感じまでいけてない!何故だ!トネリコも謎だ!←

 まぁ焦らしプレイということで…

 着々とトカゲの退路も無くなっていってますのでまた次話もよろしくでさ~


 ではでは☆


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