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魔界食肉日和  作者: トネリコ
魔界編
32/62

32、名前

 



「トカゲー何読んでんだー?」

「うおっ、びびって落としちまったじゃねーか」

「おー悪ぃ悪ぃ」

 

 三階のベランダで読んでたら急にワニが来た。

 

 急に前から現れるなよ

 ここ一応三階だからな

 お前に地面の概念はないのか


 ひゅーるりと手から離れて落ちてったが、瞬きの間にワニが手に持って現れる。

 いや、助かるけどよ、ワニマジ人外な

 空中キャッチとか…、自由落下速度を超えれるというのが意味不明

 呆れているとほいっと渡される。


「これでいいかー? 名前図鑑なー。トカゲこんなん興味あったんだな」

「いやねえぞ、カバーだけだ」


 ペラリと捲る。

 ふっ、勿論漫画よ

 どやあ!

 図鑑って付いたらちょっとは外聞いいだろ


「トカゲ賢いなー」

「褒めれ褒めれ」


 ぱたぱたとカバーを団扇にして扇いでいると、ふと疑問に思ったので尋ねることにした。

 そういや前々から謎っちゃあ謎だったのである。


「なーワニ、何で龍族も入ってんのにワニって名前なんだ?」

「おー、俺の兄貴が完全龍族ばっかでよー。鰐族らしい容姿持ってたのが俺だけでな。母親が喜んじまって速攻決まったらしいぜー」

「なるへそ」

 

 まあ龍族のが優勢遺伝子だしハーフ自体が珍しいしな

 魔族は大抵親のどちらかの種族で産まれるのである。

 ワニの母親が喜んだのも分かる気がするな


「てことはワニの兄貴にはリュウとかもいんのか?」

「おートカゲ当たりだぜ。長兄がそれな。基本母親が名前決めたからよー、他はリュウジ、リュウミとかだぜ」

「やっべ、生まれた順なんだろなと速攻分かるな」


 ちなみにリュウミも雄らしい

 ワニ母ェ…

 

「トカゲこそ何でトカゲなんだー?」

「あー…」


 まあ確かに変っちゃ変だよな

 ワニなら分かるけど見かけこっちは人族だしよ。一応瞳孔だけ蜥蜴族要素あるんだがショボイしな。

 漫画にカバーを付ける。

 まぁ今更だし言い淀むもんでもないか


「母親人族だったんだけどよ、蜥蜴族って卵性なのよ。てことで卵で生まれたわけなんだが」


 蜥蜴族は最初小さな卵で産まれ、柔く伸びる卵の中で急速に成長してから生まれる。

 産まれてからというと語弊かもしれないが孵化はその一ヶ月後だ。

 その時には人族でいう三、四歳程度の見た目をしている。

 これは私においても適応されていた。

 だから外の世界へ出た時、意外と目も見えるし声も聞こえていたのだ。


 ベランダに布団の如くだれ下がるワニの頭に漫画on図鑑カバーを乗っける。

 自分でも昔のことは結構記憶も薄れているが、初めて殻を割り ははおや というものを目にした時の顔は今でも覚えていた。


「まーそりゃ衝撃だわな、まとも状態の母親の記憶は少ねーけどよ」


 肩を竦める。


 数いた兄妹の中で、まとも状態の母親と唯一過ごしたのが私だろう

 他の兄妹は完全に蜥蜴族の遺伝子が優って、ハイハイ姿は完全にまるまるした蜥蜴だったし。ころころして可愛くはあったんだがな


 まあそんなこんなでお陰様で感性は魔界でも独特だと思われる。

 勿論蜥蜴族においても。


 例えば…


 蜥蜴族は名前を持たないというか、普通こだわらない。

 小さなコミュニティで暮らすので、呼ぶのは青いのやら短いのやらで十分だからだ。

 ひょいっとワニの頭に3冊乗っけた。


 もうちょいイケそうか 


「母親が名付けたんだけどよ。忘れねーようにだってだと」

「何をだー?」

「ばーか、簡単だろ」


 ついでに六冊乗っけたら流石に崩れた。

 ワニはせっせと落っこちて行く本を空中でキャッチしてる。

 それをベランダに肘付いて眺めた。

 元気である。


「ふーん? トカゲの兄妹は何て言うんだー?」

「ねーよ。確か長いのやら最初のやらは居たけど、結局甲斐性なしの親父に皆食われちまったしな」

「俺は甲斐性あるぞトカゲ」

「食ってる同類がうっせえ」

 

 モグラ叩きの要領でワニのひょっこり覗く頭に図鑑を振り下ろす。

 ゲーム気分なのかひょっこひょっこ頭を引っ込めたりしている。


 動くのだりーから腕の範囲な

 途中で腕の上下運動すら疲れたので、とってこーいと漫画を投げた。

 

 もう1回とか調子乗んな

 面倒い


「なートカゲー」

「あー? 何だワニ」

「いや、何でもねえ」

「何だよ」


 ワニはまたひょっこりと此方を見上げた。

 何だ、腕はやらんぞ


 そろそろ戻るかと本を拾う。

 兄妹の中でお前は人族じゃないと唯一名付けられた名前は酷く皮肉寄りだ。


 名付けた時もそういえば初めて見た時と同じ表情だったか、似たのだったか

 昔の記憶は酷くふわふわとして薄らだが、こびり付く様に忘れ去れないでいる。


 血も赤も無力感も理不尽な絶対的な強さも愛情だという傲慢さも嫌いだ

 今は亡き愚かで無様な父に会ったら今度こそ唾を吐くだろう。

 気に喰わねえ


「なートカゲー」

「ああ? さっきから何だワニ。暇なら布団ってないで手伝え」

「好きだぜー」

「はいはい、そうか」

「トカゲって呼んだら振り向くだろー?」

「まあそりゃ一応な」


 じゃなきゃ引き止められた時に肩抉れるだろ

 いい加減力加減を覚えろ

 卵じゃねえ、フだ、フを破らないようにするんだ


 最後にワニが頭に乗っけたままの漫画を回収する。

 何で空中で逆さになっても落ないんだこの漫画。


「トカゲトカゲ」

「あー、うっせえ一回で分かるわ! だから何だよ!」


 服引っ張んな!


「俺は呼んだら反応してくれるからトカゲの名前好きだぞ」


 きょとんとしてしまった。


 そんなこと言われたことなかった


 ワニが柵に垂れ下がりながら此方を見上げる。

 何だか気が抜けて、蜥蜴族らしく気にしてもしゃあねーって気がしてくる。

 回収した漫画で目隠しする様にワニの頭を叩いた。

 

「ばーか、一ヒットな」

「おー、当たっちまったか」

「んじゃヌメヌメって名前だったらどうするよ」

「おーそれもいいんじゃねーの」

「ばーかそこは否定するとこだろ」


 ヌメヌメもうまそうだなーと呟くワニの頭に呆れの漫画チョップを繰り出す。


「このお気楽ワニめ」

「おートカゲ好きだぜー」

「知るかばーか」


 その時背後でギィ…と音がした。

 何だ? 冷気が…


「勤務中にいい度胸ですねトカゲさん」

「し、司書長、なんだかいつもよりお怒りで…」

「後ほど来てくださいね。それと漫画は消失させて頂きます」

「そ、それだけは! まだ読み終えてないのでお許しをっっ」


 

 勿論ふぁいあーされた

 お小言もがっつり貰った

 何故かいつもよりも長かった気がするが気のせいだろうk――ひぃ!よそ見すんません!








 






司書長は何かを察知したらしい


また司書長の話もしたいな~♫ 魔精族です♫詳しくは後日♪

トカゲの両親は恋愛結婚でなく、父親が集落で食べる予定に入ってた母親を盗んで囲ったのが始まりです~

そのため集落仲間から逃げての生活。餌場の確保にも苦心し日々困窮してました

最後の結末は決まってしまってますが、それでも過程があったようで

今はここまで~♫

ダークな過去ですがいずれトカゲが語る日もくるかもしれません




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