14、金欠
「トカゲー、結婚しよーぜー」
「ワニ見て分かれ。今家賃納めれるかどうかの生死が掛かってんだ」
「トカゲまた金欠かー」
「ワニ、十分十厘お前のせいな」
かまえよーとのしかかってくる。
邪魔だ! マジで命掛かってんだよ!
鱗当てんな! 商品に血がつくわ!
この魔界で雑魚がふらふらと縄張りを侵そうものなら速攻ぺろりんちょである。
必死になるに決まってる。
マジ離れろ、おさげ切って向こうに投げてやろうか
せっせと写本していると、ふと思った。
ん? コイツのせいなのに何故この私が必死こかねばならんのだ?
こいつに手伝わせりゃよくね?
はっとする。
目が覚めた
「おいワニ、そこ座れ」
「おー」
「ふん!」
ワニの鱗に指を掛ける。
こいつの鱗絶対高く売れるわ。少しくらいブランド力あるだろ
おりゃーと引っ張ればぶっしゃーと、我が指が切れて落ちた。
クッソ、鱗にすら負けるのかクッソ
我が防御力クッソ!!
「トカゲ変な遊びだなー。落ちたの食うぞー」
「ワニ、拾い食いはやめとけよなー」
ぶっしゃーと指を生やしつつ、今度はペンを鱗の隙間に入れてみる。
テコの原理である。
魔力通すなよ? 力抜けよ?
ぐぎぎ、はーがーれーろー!
ボキッと音がした。
爪の先くらいしか欠けなかった。
ペンは折れた。
やっべ、くそ硬ってぇ
でもここでやめたら出費が出ただけである。
ぺろりんちょコース真っ逆さまだ。
うう、嫌だぞまだ死にたくねぇぞ
段々近付きゆく我が墓場から全力で目線と思考を逃亡させていると、ワニに覗きまれる。
「トカゲ式マッサージかー?」
「ワニの鱗が欲しーんだよ」
金のために
こうなったらワニに一部位百魔円で売るかと思いつめていると、やけに弾んだ声でワニが立ち上がった。
おい、デカイんだから急に立つな
「トカゲそれなら先に言えよー。別にいいぜー」
「ワニマジか、お前も時には役に立つな」
ベリッとワニの手で簡単に鱗が剥がされて、手の平へと渡される。
おっも!
この重さじゃあ武器にしようにも安くなりそうだな
もう1枚貰っていると、遠慮すんなとベリベリ剥いでいた。
こいつやっぱドMだろうか
「ワニ十分だぜー」
「トカゲそうかー? 欲しくなったらいつでも言えよー。食ったり身につけたりなんかじゃ少ねーだろーし」
「はー?」
ワニは何故なのか全く分からないが、珍しく照れながらにっこにっこしている。
その選択肢は無かったわ
むしろ何故それで照れるのか本気でわからん
「売るオンリーだぞ」
「マジかー、トカゲ冷てー、でも好きだ」
「はいはいそうか、運ぶの手伝え」
「おー」
そんなこんなでワニ本人が居たお陰でブランド力が増した。
力技で高く売りつけたとも言う。
売るよりもワニをカツアゲした方が早かった気がするがまあいいだろう。
ペンの時に欠けた鱗は小さ過ぎて売れなかった。
仕方なしに持っといてやることにした。
試しに口に入れてみた
口内切った
マジクッソ




