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神様はいません(消されました)

 「そもそも俺はなんで死んだんだよ?」

 

 とりあえず一通りの疑問が解決したところで根本的な疑問が解決してないことに気づき、再度セレナに尋ねる。

 

「それは哲也、余がそうしたからに決まっておるじゃろ?普通に死ねばここにいることはまずないからのー」


「えー・・・つまりお前が俺を殺しちゃった的な感じでいいんですかね?」


「うむ!その考えで間違っていないぞ!」


 思わず頭を抱えましたよ、はい。

 なんていうことをしてくれたんだこのゴスロリさんは・・・。


「まあまあ、そう気を落とすでないぞ哲也。気持ちは正直分からんが、これはこれでいい経験になったじゃろ?」


「何の経験になったんだよ・・・。臨死体験ですか?そういうことですか?ってかなんで俺が選ばれちゃってるんだよ!」


「そんなの決まっておるではないか。哲也が『探偵』という仕事をしていたからに決まっておろう」


「なっ・・・!なんでそれを・・・!」


 確かに探偵という仕事はしていた。けれどもう一年前から探偵業からは足を洗ってコンビニでバイトしている。

 しかも、探偵の手伝い程度しかしてない俺が選ばれる?なぜ?

 またしても考え込んでしまった俺に、セレナは心を読んだわけではないだろうが俺の疑問に答えてくれる。


「そもそも、本来は哲也のような三流探偵を呼ぶ予定ではなかったのじゃ。しかし、別の世界から呼び出すのはそもそも難しいことでの・・・。本来、その世界の住人は別に世界に移ることは不可能なのじゃ。けれども唯一方法があったのじゃ」


「三流探偵って・・・。まあいいけど、それが死なせることだったのか?」


「半分正解じゃな。その条件ならば別に哲也じゃなくてもよかったのじゃ。それにはもう一つ条件があっての。それは17歳の若者にしか適用できない、ということじゃ」


「確かに俺は今17だけど・・・。何の意味も無さそうなんだけど」


 俺が生きていた時は17歳で特別なことがある、とは聞いたこともないな。

 海外の国によってはお酒が飲める年齢・・・ぐらいしか思い浮かばない。


「少し、難しい話になるが仕方がないと思って諦めておくれ。17歳という年齢はの、魂の不安定な時期でもあるのじゃよ。全世界の基準として人間の18歳は大人になる年齢なのじゃが、そこでさらに深くその世界と結ぼうとして魂が一旦世界から離れるのじゃ。本来はそこに肉体が存在するため大した障害にはならん。しかし、外部から魂だけを引きずり出せば、哲也のようになるという寸法じゃ」


 セレナの口から発せられた言葉には色々と疑ってしまうようなことばかりだったが、実際俺がここに存在しているのは事実であるため、セレナの言っていることは紛れもなく本当のことなんだろう。


「つまり、18歳の人間は魂が固定されているから俺のような若者、しかも17歳しか呼び出すことができないために俺が選ばれっちゃったわけか」


「そういうことじゃ!意外と哲也は頭が回るのー」


「意外って、ちょいちょい失礼な天使様だなおい」


 いや、まあ確かに見た目は頭よさそうには見えませんけども。


「天使様ではなく、セレナと名前で呼んでほしいのじゃ。余も哲也と呼んでおろう?」


「突っ込むところはそこかよ・・・」


 少しだけ頭が緩い天使様に出会ったことに頭を抱えつつ、こんな奴に殺されてしまったのかと思うとますますやるせない気持ちになってくる。


「ん・・・?待てよ・・・。お前は天使なんだよな?」


「セレナ」


「いや、別にそこはかんけ「セレナ」・・・関係なくないですね、はい」


 名前呼ばなかっただけで目の奥が怪しげに光るセレナさんに多少おびえつつ再度質問を繰り返す。

 ってかマジで怖かったです、鳥肌立ちました、はい。


「えっと・・・セレナは天使なんだよな?」


「正しく言えば大天使だがの。まあ大天使とはいうものの、4人しか天使というものはおらぬから特に意味はないんじゃがの」


「大か小かの話は今はいいんだよ、その話は後日トイレでな。つまり天使が存在するってことは・・・」


 そう、世界にはありとあらゆる宗教が存在するが、その宗教のほとんどがある人物を祖として崇めていたはずだ。

 天使がいるというのならば、その天使を作った人物も存在するはずだ。つまり・・・


「神もまた存在するってことだろ!!!」


「いや、そんな奴は存在せんよ」


「なんか世界の創造主って考えただけで興奮してきたぞ!俺は今特別な存在なんだろ?なら神様ぐらい会わせてくれよー。じゃないと俺が浮かばれないだけじゃないか!」


「いやだからそんな奴はおらぬと・・・」


「頼むよー、ちょっとでもいいからさ。何ならちらっ、程度で我慢するからさー頼むよー」


「話を聞かぬか哲也。だから神なんぞ存在せんと・・・」


「ってか神様ってどんな姿してるんだろうなー。やっぱりひげ生やしたりしてるのかなー?もちろんセレナは見たことあるんだろう?容姿だけでも教えてくださいよーセレナさー・・・い、痛い痛い痛い痛い!!何するんだこの堕天使!」

 

 セレナは若干涙目で俺の胸をポコポコ叩いてきた。地味に痛いんだが行動が予想外だった。

 そのためなんかかわいい生き物だな、なんて思い認識を少し改めた。


「何が堕天使か!話を聞かぬ哲也が悪いんじゃろうが!」


「え?何か言ってたのか?」


「さっきから言うとるわい!とりあず落ち着いて話を聞かんか!」


 セレナは肩を上下しながらフーフー息を切らしていた。

 最後に大きく息を吐くと、とんでもないことを口にした。


「哲也がさっきから言っておる神だがな、もうそんな奴はおらんぞ」


 え・・・


「え―――――――――――――!!!!!!」


「声が大きい!うるさいわ!」


 両耳を塞ぎながら言い返すセレナに、やっぱり意外とかわいいところあるなと、頭の片隅で思うが今はそれどころではない。


「神様がいないだと!どういうことだよ!」


「んー・・・これも話が長くなるんじゃがの・・・簡単に言えば余を含めた大天使4人で消したと言えばいいかのー・・・」


「いや、さっきから簡単に言いすぎだろ。消したって・・・つまり殺しちゃったってことか・・・?」


「まあそういうことになるのー・・・」


 少し視線をずらしながらやらかしちゃった感を醸し出すセレナにただ呆然とするしかない。

 ここまで問題児だとは思わなかったなー・・・。

 自分に軽蔑の視線を送る俺に気づいたのか、セレナは慌て始めた。


「て、哲也!そんな顔をするではない!これにはちゃんとした理由があるのじゃよ!」


「理由?どうせ大したことないんだろ?」


「あるんじゃ!大した理由があるんじゃ!」


 涙目で必死に呼びかける彼女に呆れつつも、その行動に免じて一応話だけは聞いておくとする。

 

「ううっ・・・まだ疑っているようじゃの・・・。とりあえず話すぞ・・・まだ人間が誕生していないころに神がいたんじゃが、神は暇つぶしに世界を創ろうと思い付きで考えたんじゃ」


 人間は神様の暇つぶし道具なのかよ、と思ったが口には出さず視線で続きを促す。


「その時には余達、大天使はすでに神によって作られ世話係として存在していたのじゃ。じゃが神は一人で世界を創るには限界があると言い、余達にも手伝うように命じたのじゃ」


 神様は万能じゃないんかい。


「そして大天使も手伝うこととなり、ついでに4つの世界を創ることとなったのじゃ。しかし、やはり神でも4つも世界を創ることは疲れたのか、出来上がる頃には神はだいぶ疲れておったのじゃ。その様子はまるで死んだ魚のようじゃったのー。目とかそっくりじゃったよ」


 そんな神様想像したくねー・・・。ってか暇つぶしなのに全力出しすぎだろ。


「そんな様子を見た余達は考えたんじゃ。殺れるのではないかとな」


 いきなり発想が飛びすぎだろ。普通そこまで考えんわ。


「なぜ、そんなことを考えたのか疑問に思っている顔じゃな?実はの、余達は神に逆らえないことをいいことに、神・・・もといよぼよぼジジイにセクハラされまくっていたのじゃ!!」


 ついに神様をジジイと言い始めたセレナはその時のことを思い出したのか、怒りを隠すことなく髪を逆立てていた。

 ってか神様もセクハラするんだな・・・。


「あまりのひどさに余達はチャンスがあれば懲らしめようと思っていた、まさにその時に千載一遇の機会が巡ってきたのじゃ!これは神が与えたチャンスだと確信したのじゃ!」


 チャンスを与えた神はどこの神だよ。やっぱりこいつ少し頭緩いな。


「そして、余達はジジイに向かってありとあらゆる力をぶつけたのじゃ!その結果・・・ジジイは抵抗する暇もなく一撃で倒されてしまったのじゃ・・・」


 どんだけ弱ってたんだよ神様。ご老人なんだから少しは手加減してあげなよ・・・。


「けれどこれは余達も予想外での・・・。まさか一撃で倒れるとは思ってなくて・・・。まあセクハラジジイは消えたので良しとしたがの」


 神様も自業自得とはいえ浮かばれないだろうなー・・・。


「そして余達は4つの世界、それぞれに分かれて生きていくことにし、世界の様子を見守ることにしたのじゃよ。せめてもの情けじゃな」


 そう言い終わると、なんかドヤ顔してきたのでとりあえず一言だけ伝えといた。


「それで神様はどこなの?」


「話を聞いてなかったのか貴様は!!!!」

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