無能力者
俺が異世界?に転生してからはや6年ほどは経とうとしている。
何を言っているかわからないと思うが俺もそれ以外に説明しようがないんだ。
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28歳、都内住み、IT系で仕事をしている。彼女は3年ほどいない。
冬の時期の残業終わり、コンビニで飯を買って家に向かっている最中に意識を失ったと
思ったら赤ん坊になっていたのだ。
最初は何がなんだか全くわからず、困惑していた。だが2ヶ月も経つ頃には状況が飲み込めて
きた。
むしろ人生を最初からやれるなんてそうできるものじゃない。小説などでよくある展開である。
これはおいしい展開かもしれない、幼少の頃から魔力量を増やして少年の頃に魔法学校に行って
ハーレム展開ってわけだな!これは楽しみだ!と思っていた時期が俺にあった……。
生まれは恵まれていたんだ、生まれは……。ただ俺が1歳になるころ、領地の神官がやってきて
俺を占い始めたのだ。
そこで俺は前世にも体験したことのないような絶望を味わった。
「クロード卿、残念ですがご子息に魔法の才能がありません…魔力量も少ないです」
「そうか…残念だが次男のこやつには期待できんな。やはり長男のアレンを次期領主にする」
えぇ…。割と俺の人生詰んでるんじゃね…?魔力なきゃスキルとかも使えないんじゃないの?
そもそも神様?にも会った事ないし、ステータスとか鑑定?とかない感じですか…??
その一件があってから明らかに俺に対する両親態度が変わったを覚えている。
元々居た部屋は移動させられ、六畳一間ほどの部屋に移された。飯も両親と
食べていたが部屋で1人寂しく食べさせられている。
ちなみに話に出てきた兄には今まで会った事が無い。両親が会わせない様に
しているみたいだ。ぶっちゃけ会ったところで俺のような無能力者が劣等感を
覚えるだけだから進んで会いたくはないけどな……。
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書物などは自由に読めるように手配はしてくれていたから、半年ぐらいは魔法が
使えないかと淡い期待をして特訓をしていたもんだ。何もかも無駄だとわかった時は
神官に言われた時よりも深い絶望だったよ。
俺の生まれた家はグリザリア王国の辺境伯らしい。位は伯爵だから日本で言うと大名
クラスになるのかな?辺境って頭につくのが気になるが……。
三百年前にあった種族間戦争とやらで武勲をあげたクロード一族がこの地を王より与えられた
らしい。
武力で成り上がった家系らしく完全な実力主義で、魔法が使えない俺は成り上がる手段すらない
ってわけだ。
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俺が居る離れにある小さい屋敷の隣には大きい森林がひろがっており、種族間戦争の前は
エルフが住んでいたそうだ。今では我が領土に冒険者を呼び込むために半ば放置している
状態である。
そこで冒頭に戻るが……ほぼ幽閉状態の俺は6歳に何もかも投げ出して森の中に逃げ込む
ことにした。魔物もいると聞いていたし、自暴自棄になっていたんだと思う。
ただひたすら森の中を走り回り、疲れ果てた俺の周りを狼のような魔物?が囲んでいた。
短い人生だったが一生幽閉されるくらいだったら、自由になって死んだほうがマシだ。
チラッと狼のほうを見ると10匹ほどいる。うん、確実に逃げられない……。大きさも
1メートルぐらいあるし……。
死を覚悟したそのとき、狼が大きく吹っ飛ばされてローブ姿の人物がSFに出てきそうな
光る剣で狼を切り倒していく。何者なんだろうか……?
「お主のことを待っておったぞ、運命の子よ」
急に何言ってんだこいつ!?