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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第十章 そして、その少年の名は——。

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209.VSシザス帝国について 2

12/30三話目

 ドドドドドドッと大きな音を立てながら、召喚獣達が駆けている。

 現在、シザス帝国の帝都へ向けてヴァンと共に駆けているのは五匹の召喚獣達である。

 《ブリザードタイガー》のザード、《レッドスコーピオン》のオラン、《サンダーキャット》のトイリ、《ファイヤーバード》のフィア、《スカイウルフ》のルフである。

『ご主人様、あの砦の人間たちは生かしておいてよかったのかしら?』

「殺しつくす事は出来るけど、まぁ、そこまでしなくていい。砦を破壊しているのは只の憂さ晴らしだから」

 《ブリザードタイガー》のザードの上に乗っているヴァンはオランの問いかけに不機嫌そうな顔を隠そうともしない。

 ヴァンはトゥルイヤ王国のトージ公爵家でナディアの事を助けられなかった事に苛立っている。自分への不甲斐なさと、ナディアを他国にまで連れ出したシザス帝国への怒りと——様々な思いが絡み合っており、不機嫌である。

『主、目の前にある砦とか全部そうするのか?』

「うん、だって邪魔でしょ?」

 さらっと口にしているヴァンは、やっぱり心の底からシザス帝国に対して怒っているらしかった。

 目に付いたシザス帝国民を全て殺しつくそうなどという残虐な思考はしていないが、シザス帝国の帝都に辿り着くまでの間の障害物は全て破壊し尽そうなどと物騒な事は考えていた。

(……トージ公爵領の方でも、もっと真正面からやればよかったかもしれない。そしたら、ナディアがもう隣に居たかもしれないのに。ああ、もう、考えても仕方がない。とりあえず、シザス帝国からナディアを取り戻す。ナディアに何かした奴らは殺す)

 ヴァンはトージ公爵領でもっと上手く動いていれば、ナディアを取り戻せていたかもしれないと思うと自分自身に苛立っていた。その苛立ちが魔力として溢れ出ており、一緒に居る召喚獣達はその魔力に当てられて気が気ではなかった。

 ヴァンは目の前に街があろうが、砦があろうが帝都に向けて迂回をせずに直線距離で進む事を決めていた。他の誰がどうなろうとも、ナディアの事を早く助けたいと思っていたからだ。

 最も、そんなヴァンの選択は現地で普通に暮らしている帝都民からしてみればたまったものではないのだが……そういう所までヴァンは気を配る気はなかった。

 

 そんなわけで、帝都への通り道にある建物に住む人々にとっての悪夢が開始された。



「な、なんだ、あれは?」

「魔物?」

「待て、人が乗ってるぞ! な、何をする気だ?」

 大きな音を立てて迫ってくるヴァン達一行にシザス帝国民が気づかないはずもなかった。彼らは迫ってくる召喚獣達に、目を見張る。そして、人がその背に乗っているのを見ると、何をする気だと叫んだ。

 でも、叫ぼうが、人が居ようが、ヴァンにとって目の前にある街はナディアの元へ向かうための障害物でしかなかった。

 ドドドドドッと大きな音と共に、破壊される。

 ただ通るのに邪魔だったからという理由で、街の一部が破壊されるのだ。

 一瞬で終わる破壊行為。

 迫ってきたかと思えば、破壊して、過ぎ去っていく。

 誰も死んではいないが、それでも悪夢な事には変わりはない。しかし、召喚獣達に乗って過ぎ去っていく彼らを止める術を持つ者はそこにはただ一人としていなかった。

 街が、村が、破壊される。

 僅かに存在する森が、その場に佇んでいる岩も——全てが破壊される。

 通るのに邪魔だからという、ただそれだけの理由で。

『なー、主、シザス帝国ならスノウみたいなのとか、そうじゃなくても変な奴居るかと思ったけどいないんだな』

「そうだな。もしかしたら帝都周辺にしかいないとかあるのかも」

 《ファイヤーバード》のフィアは、もしかしたらあの異形の少女であるスノウと同じような存在や、そうでなくても以前ヴァンが戦ったという異形の見た目をした合成獣の姿がもっと見られるのではないかと思っていた。

 しかし、そういう存在を今の所見ていない。フィアは拍子抜けしていた。

『あんなの、簡単には生み出せないんじゃない?』

『その通りだと思いますわ。あんなもの、簡単には生み出せないでしょう』

 トイリとオランはそんな風に言う。

 正直言って、合成獣という存在が多く存在したのならば幾ら召喚獣達であろうとも対応が難しいかもしれない面が多くあった。それだけの力をその合成獣は持ち合わせていた。

 しかし、本当にそれだけの存在を従えられ、数を多く用意出来たのならば、こんな風に人質を取るといった遠回しな事はせずに、直接的に戦争をしかけてくるはずである。

『その通りだと思うよ! というか、普通に考えて、制御とかは出来ないんじゃない? それだったら、その帝都付近に近づけば近づくほど、そういうのが居るかもしれないってことだよね?それなら、思いっきり暴れられるね』

 ルフはこんな状況であるが、ヴァンと一緒に暴れられるのが嬉しいらしく嬉しそうな声をあげていた。

 ――そんな会話を交わしながらも彼らは、邪魔な建物を破壊し尽しながら帝都へと向かっていた。



 ――VSシザス帝国について 2

 (通るのに邪魔だという理由で彼らは破壊の限りを尽くす)



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