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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第九章 外交と、波乱の幕開け

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200.少年の中で何かが切れた瞬間について

12/16 三話目

 その日、ヴァンはのんびりと過ごしていた。

 相変わらずナディアに会いたいという思いを抱えながらも、もうそろそろナディアが帰国するという話を聞いてご機嫌だった。

 ヴァンはナディアの事を心から思っている。

 他の誰かなど考える事がないぐらい。ただ、ナディアの事だけが全ての基準で、他の事はどうでもいいとさえ思っている。

 だからこそ、

(ナディアが、もうすぐ帰ってくる)

 その事を思うだけで、ヴァンの心は高ぶっていた。

「ヴァン兄、嬉しそう」

 スノウにもそんなことを言われるぐらいには、ヴァンはご機嫌だった。ご機嫌だったので、魔法を使ってスノウを浮かしたりして、一緒に遊ぶぐらいには機嫌が良い。

 思わず見ていたフロノスは口を開く。

「ヴァン、スノウに怪我をさせないようにね」

「うん、その辺はちゃんとやる」

 ヴァンは風を起こしてスノウを放り投げて、魔法で受け止めるという一般的に考えて危険な遊びをしていた。それをされているスノウは嬉しそうにきゃっきゃっと笑っている。

 本人達が良いのならば口を出すことではないかもしれないが、ヴァンが魔法の操作をミスすればスノウは怪我をするかもしれない遊びだった。

(それにしてももうすぐナディア様とディグ様が帰ってくるのね。早く帰ってきてほしいものだわ)

 フロノスはそんなことを考える。

 フロノスは師であり、義理の父親となっているディグの事を尊敬している。そのため、ディグがいないということに本人には言わないが寂しさを感じていた。

 ディグが帰ってくることをフロノスも疑う事もせずに、早く帰ってこないかなとそればかり考えていた。

 そんな中で、スノウと魔法で遊んでいたヴァンはふと、召喚獣を呼び出すことにした。ただ、機嫌が良かったからである。スノウが《ルーンベア》のリリーを気に入っている事を知っていたのでリリーを呼び出したのだが、呼び出したリリーは間髪おかずに言った。

『―――主人よ、今すぐ、フィアを呼び出すのだ。そして話を聞いてくれ』

 その只事でない様子にヴァンは驚く。その様子を見ていたフロノスも何事かと近くに寄ってくる。リリーと遊べると思ってにこにこしていたスノウも不思議そうな顔をしている。

 リリーの言葉通りに、ヴァンはフィアを呼び出す。

(フィアはナディア様につけていたはずだが、どういうことなんだ?)

 そう思いながら、フィアを呼び出せば、呼び出されたフィアは真っ先に土下座するような形で頭を地面につけた。

『主、ごめん!』

「は? ごめんって、何?」

 そう問いかけるヴァンの声は先ほどまでの機嫌が良かった様子が一瞬にして反転していた。ヴァンの言葉に、フィアは恐る恐るといった様子で声をあげる。

『気づいたら強制送還されていた! 何か俺達がその場に入れないようにするようなものがあったらしい。そんなものあるなんて想像出来なかったとかただの言い訳でしかないのかもしれないけど!!』

 フィアは叫ぶように、信じられない経験をしたとでもいうように言った。

 そう。《ファイヤーバード》フィアは確かにナディア・カインズの側で見守っていた。ナディアのトゥルイヤ王国での最後の食事をとっていたのを見守っていた。……だというのに気づいたら異界に戻されていた。

 フィアだけではなく、他の面々もである。

 姿を現さないと思っていた《ホワイトドック》のワートと《ファンシーモモンガ》のモモも、異界に戻されているのかもしれないと思った。ただ、異界は広く、同じ契約主がいるとはいえ、異界で他のヴァンが契約している召喚獣に遭遇できるのは稀である。運よく、リリーに遭遇する事が出来、たまたま、ヴァンがリリーを召喚したことでどうにか情報を伝える事が出来た。

 運が良いのもヴァンの才能の一つなのかもしれない。

 しかし、どうにか情報を伝える事が出来たとはいえ、これはフィアたちの失態である。

 自分達ならば問題がないと驕り、まさかそんな何かしらの力が使われるなんて思いもせずに呑気にしていたため、現状ナディア・カインズの側には誰もいないという状況にある。

「は? それで、ナディアは?」

『分からない! けど、何かしら起きてるのは確定だ! 本当に、すまん、主!! カインズ王国との国境沿いにあるトゥルイヤ王国のトーグ公爵家で起こった出来事だ。そこの家が何か起こしたのだろうけど! ただ、俺達が強制送還されてから何が起こっているか分からないから、正直、どこにナディア様がいるか分からない。本当にすまん!!』

 フィアは必死にヴァンに対して謝罪を繰り返している。それだけヴァンという存在の事を恐れている。そして明確にどういう状況か告げながら、自分の主がどんな反応をするのかとはらはらしていた。

 フィアの言葉を聞いて、ヴァンは一瞬黙った。

「つまり、ナディアが何処にいるか分からなくて、危険に晒されているかもしれないってこと?」

 そして、問いかける。恐ろしく冷たい声で。

 それにフィアはこくこくと頷く。

「そうか——」

 冷たい声と共に、その場にいる者達は何かが切れた音を確かに聞いた。




 ―――少年の中で何かが切れた瞬間について

 (召喚獣からの報告を聞いて少年の中で、何かが切れた)




中途半端かもしれませんが、第九章は一旦これで切ります。

第九章 外交と、波乱の幕開けはこれで終わりです。次から第十章 そして、その少年の名は——。に続きます。

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