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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
番外編 6

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《雷鳴の騎士》の弟子は第一王女への思いを募らせてる。

 カインズ王国の同盟国、トゥルイヤ王国。

 その国の英雄として名を知らしめている『雷鳴の騎士』、ルクシオウス・ミッドアイスラの弟子、ザウドック・ミッドアイスラ。『雷鳴の騎士』の養子にして弟子という立場であり、なおかつ顔立ちもそれなりに整っている彼のことを今の内から身内として引き込んでおこうとしてくる勢力はトゥルイヤ王国内で多くいる。娘を彼の元へ嫁がせようという勢力もあるものの、彼は一切なびく様子を見せない。

 カインズ王国に行く前は、ただそういうことにまだ興味がない年齢であったというだけであった。でもカインズ王国で、フェール・カインズという美しき王女様に出会ってからその人以外見えていない少年であった。

(……フェール様からの、手紙だ!)

 フェール・カインズとザウドック・ミッドアイスラは、あれ以来文通を交わしていた。

 フェールが文を返してくれるというその事実だけでザウドックはそれはもう嬉しそうに笑みを零すのだ。普段は見せないような笑みも浮かべているザウドックである。

「女一人の手紙でそこまで喜ぶものかね……」

 その師であるルクシオウスは女からの手紙で喜ぶ気持ちが分からないままに、ザウドックの様子を面白そうに見ていた。

「嬉しいに決まってる! ルクシオウスは好きな人いないからそんなこと言えるんだ!」

「はいはい」

 ルクシオウスはザウドックの言葉を適当に聞き流しながら、その手に持つ手紙を奪う。封の空いているそれを勝手に読み始める。

「ルクシオウス! 勝手に読むな」

「いいだろ、別に。やましいこと書いているわけでもあるまいし。何々……大体が、兄妹のことだな、あの王女様。ついでにヴァンのことも書かれてるな」

 ルクシオウスはつぶやきながら、誘拐事件に対して思いを馳せる。カインズ王国で起こっていたような誘拐事件はこの国でも起こっていた。攫われていたものを助け出すことにも成功したものの、この国ではシザス帝国の手の物であるという証拠をつかめていなかった。

(……人の姿をした合成獣ね。獣の姿の合成獣ならこちらにもいたが。そのことを考えるとシザス帝国はカインズ王国のことを一番警戒しているのかもしれない)

 カインズ王国と違って、トゥルイヤ王国はシザス帝国と隣接していないからというのもあるだろうが。

「……フェール様の手紙、ヴァンの事多いんだよな」

「何落ち込んでんだよ。別にあの第一王女はヴァンのことを恋愛的な意味で好いているわけでもねーだろ」

「知ってる! けど、なんかやだ」

「なんだ、お前嫉妬してんのか」

 嫉妬していることに対してルクシオウスは面白そうに笑い声をあげる。

「……だってフェール様、ヴァンのこと少なくとも大切に思ってるし。それにヴァンはナディア様の近い場所にいるからフェール様ともよく一緒にいるし」

「お前がもっと名声をあげて、第一王女の事を娶ればヴァンよりもずっと一緒に居られるだろうが。それを目指して頑張るんだろう? 頑張れ頑張れ」

「おう! 俺はもっともっと、強くなってフェール様をいつかお嫁さんにする!」

 ルクシオウスから見ても、ザウドックはフェールと約束をしてからというもののより一層強くなるために、このトゥルイヤ王国の中で成り上がるために頑張っていた。ルクシオウスには召喚に関する才能は皆無であるため召喚獣を持っていないが、ザウドックはまだ召喚に対する才能があるかどうかも試していない。ヴァンと同じように召喚獣を一匹ぐらい持ちたいと言っているザウドックに今度召喚獣の召喚をやらせる予定である。

「でも律儀にお前の手紙に毎回結構な枚数の返信くれてるんだから、脈はあるんだろうな」

「そうだと、嬉しいけど……」

「お前、変なところで自信なさ気だな……。俺の弟子ならもっと自信持てよ」

「だってフェール様凄い綺麗なんだよ! 絶対もてもてだし」

 ザウドックは、師ほど自信満々にはなれないのであった。しかし、ザウドック・ミッドアイスラとフェール・カインズが仲を深めているのは確かな事実である。ザウドックが送る手紙に律儀にフェールは返信を返している。その文通によって、互いのことを少しずつ理解しあってきている。

(フェール様は自分が美しくあるためにって凄く努力している。元々綺麗だけど、努力しているからこそもっときれいになってて。兄妹のことを思っていて……やっぱ好きだなぁ)

 一目ぼれから始まったけれど、知れば知るほどザウドックはフェールの事が好きだと思ってならないのである。あれ以来会えていない。だけれど、手紙を通じてフェールという存在に触れることが出来る。そして知れば知るほど、彼は惹かれている。

「……俺、もっと頑張る」

 そして、惹かれているからこそもっと頑張ることを彼は決意するのだ。



 ――――《雷鳴の騎士》の弟子は第一王女への思いを募らせてる。

 (《雷鳴の騎士》の弟子は第一王女との文通を通じて、益々彼女に惹かれている)



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