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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第六章 《雷鳴の騎士》とその弟子

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128.『火炎の魔法師』が国王陛下から聞いた話について

 「あいつが、この国にくる?」

 ディグ・マラナラはカインズ王国の現国王陛下、シードル・カインズから聞いた言葉に驚いたような顔をした。

 何故、彼が驚いているかといえば、

 「ああ。『雷鳴の騎士』とその弟子がこの国にくる」

 そのことを先ほど聞いたからだ。

 『雷鳴の騎士』は、五年前に戦争が終結するまではディグと競い合っていたライバルである。殺し合いをしていた相手で、戦争をしていた国の英雄であったが、その実力をディグは認めていて、だからこそ敵国の人間であっても憎しみなどは感じていなかった。

 その『雷鳴の騎士』とはカインズ王国とトゥルイヤ王国との同盟国としての交流の場では時々会っていたが、今までカインズ王国の王都へ『雷鳴の騎士』が訪れる事はなかった。国を揺るがせるほどの英雄が、動くとなるとどういう事情なのだろうかと考えたのだ。

 「この間、ディグ達が片づけた件だが、あちらでも似たような事が起こっていたようだ。それも含めて詳しく対策をすべきだという話になり、使者として『雷鳴の騎士』が来る事になった」

 「へぇ、それに、あいつの、弟子ねぇ」

 ディグは面白そうに笑う。

 (あいつが弟子をとったという話は聞いていたが、確か貴重な雷属性の魔法を上手く使える少年だったが。ヴァンは……それももしかしたら普通に出来そうだな)

 どのような魔法が得意であるかというのはある。ディグは火炎系の魔法が得意だからこそ『火炎の魔法師』と呼ばれているのだ。

 ヴァンに関しては、正直全てをなんなくこなしているため、ディグはヴァンがどのような呼び名で呼ばれ始めるかと考えると何だか面白くなってきた。

 (あいつ魔法より召喚獣の方が目立ちそうだし、そっち方面で呼ばれるんじゃねぇかな)

 ディグは、そんな風にヴァンがいずれどう呼ばれるかと考えるのも楽しかった。

 (それで、『雷鳴の騎士』の弟子とライバル関係とかになってたら、それはそれで面白いな。あいつの弟子ならば、いずれそういう名が有名になるだろうし。ヴァンも、フロノスも、俺の弟子たちもそういう存在になるだろうしさ。そういう未来を想像するのも結構楽しい)

 ディグがそんな思考に陥っていれば、シードルが口を開く。

 「それでだな。『雷鳴の騎士』はヴァンに興味を抱いているようだ。噂はあちらの国にまで通っているようだから」

 「ははっ、面白いですね。まだ二つ名もついていないのにそれだけ噂が出回るなんて、本当にあいつは俺がいった通り大物になりますよ。この国に留めておかないと、カインズ王国への大きな損害になる」

 「その通りだ……。本当に規格外な子供だ。あの歳でああとは、本当に、驚くべきことだ」

 シードルはそう告げて、しみじみと頷く。

 はじめ、ディグに「あいつは国外にやらない方がいい」と告げられた時は今ほど本気でシードルは考えていなかった。

 それからヴァンはまだ幼いながらに、『火炎の魔法師』の弟子として確かに功績を積んでいる。召喚獣を大量に引き連れ、一度に何匹も顕現させ、様々な事をさせることが出来る。ヴァンは二十匹の配下を持つと言えるだろう。二十匹の召喚獣たちが同時に暴れた事はないが、同時に動かせばどれだけの事が出来るかと考えるだけでもシードルはいくつももしかしたらこれも出来るのではないかという事が浮かぶ。

 シードルは親バカであるから、娘が可愛くて、ナディアにはまだ恋など早いと思っている。でも、ナディアはヴァンに心惹かれている様子であるし、ヴァンはナディアに一途であるし、何よりナディアの結婚相手としてはぴったりで、良い相手であるともちゃんと思っている。

 「ヴァンはディグほど活躍できるなら貴族籍を与えられる。そうしたらナディアを降嫁させることを考えている。流石に平民には王女はやれない」

 「そりゃ、そうですね。でもまぁ、ヴァンはこちらでナディア様と結婚の話が出ていることも知りませんし、あんなに好き好きオーラ出しているのに告白もしていないですししばらくは見守っておきましょう。正直ヴァンがそれを知った時どんな反応をするかも見てみたいですし」

 「まぁまだ二人とも幼いのもある。しばらくは見守っておくとしよう」

 結局二人の会話はそんな結論に至った。

 ヴァンは、『火炎の魔法師』の弟子になり、ドラゴンを倒し、異形の化け物も簡単に倒し、規格外の魔法具もつくりだし、本当にこの国にとって得難い人材である。そしてきっとこれからも何かを起こし続ける存在である。

 「……『雷鳴の騎士』の弟子も、ヴァンのような存在なのだろうか」

 ふと、シードルはそんな思いにかられ、そんな言葉を口にする。

 「流石にそれはない……はずです。あんなのがもう一人いたら流石に俺も驚きますし」

 「……そう、だな。流石にありえないであるな」

 「……おそらくそうでしょう」

 と二人は話しながらも、もしヴァンのように『雷鳴の騎士』の弟子も規格外だったらなどと想像するのであった。




 ―――『火炎の魔法師』が国王陛下から聞いた話について

 (『火炎の魔法師』は国王陛下から来訪する者についての話を聞いた)



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