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ガラス職人の息子は初恋の王女様を守ります。  作者: 池中織奈
第五章 砦での生活

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118.側妃二人の動きについて 2

 「レイアードお兄様、このお二人はキリマお姉様の侍女の殺害を指示されたものたちですわ」

 ナディアは召喚獣たちがとらえた実行犯になるはずだった存在を、とりあえず王太子であるレイアードに突き出した。自分だけではどうするべきか分からなかったのもあり、ひとまず信頼のできるレイアードの判断を仰ごうと思ったのだ。

 「キリマの侍女の殺害を……? あの二人のどちらかかい?」

 「キッコ様が指示を出していたそうです」

 「……本当にあのものは……」

 「私が表に出てきたから余計に気に食わないのでしょう。キリマお姉様に私を殺害する手助けをしなければ侍女を殺すと脅していたみたいなので。でもこれだけでははぐらかされる可能性もあります」

 ナディアは、召喚獣たちが守ってくれているのもあって冷静である。元々側妃の二人に嫌がらせをされていたのもあって慣れているといった面もあるだろう。

 『どうせ、上手くできていないなら実力行使に出ると思うよ』

 『あの女の人、凄い癇癪起こしてたし、侍女を見下しているみたいだったよ。多分すぐ殺そうと行動するんじゃないかな? それで実行犯でとらえたら?』

 そう口にするのは、キリマの侍女を殺害するように指示されたものたちをとらえた《サンダーキャット》のトイリと《アイスバッド》のスイである。

 二体の召喚獣たちから見て、キッコは失敗したらすぐに行動しそうなように見えたようだ。

 「そうか。なら、キリマの侍女達に護衛をつけよう。あの者が行動に出たら、とらえて、キリマにナディアを殺害するように指示を出した事も含めて処罰できるだろう」

 『それよりさー、フェールの母親の方が何するかわかんない感じだと思う』

 王太子のレイアードに対して、トイリは軽い調子でいう。召喚獣たちにとって、人間は人間でしかなく、王太子などという立場だろうと敬う必要がないからこその態度であるが、レイアードの側付きは何か言いたそうにトイリを見ている。が、そんな視線は当然無視である。

 「フェールもそのことを気にしていた。静かであるからこそ余計に不安だと。何かを起こすかもしれないのだと」

 レイアードはそういいながら思考する。

 (可愛い妹の母親を処罰するのは心苦しいが、ナディアを害するものを許せるわけがない。殺そうとしているなどと……。アンの方は本当に何をするか分からないから、監視の目を強めなければならない)

 シスコン王太子は、妹を害するものをどうにかするのだと気合いを入れている。

 キッコは召喚獣たちやレイアードの目でもすぐにわかるほど行動しているのだが、フェールの母親であるアンは、本当に不気味なほどに静かである。確かにナディアの事を疎んでいるはずで、ヴァンという英雄の弟子が傍に居ないいまこそ好機なはずなのに動かない。

 それが余計に不気味で、何かを起こそうとしているのではないかと思ってしまう。

 「……フェールが見ていてくれているらしいが、怪しい点は全然ないらしい。もう何かしら行動を起こしているのか、よくわからない」

 静かにしているのは、ナディアに何もする気がなくておとなしくしているのか、それとも何かしら行動を起こしていてそれが実るのを待っているのか、正直どちらなのか分からない。

 「アン様の事ですから、私をどうにかする事をあきらめているという事はないと思います。だから、注意していた方がいいとは思うのですわ」

 ナディアはアンが自分を害する事をあきらめているとは思っていない。そもそも諦められるようなものであったなら、召喚獣たちに邪魔されて散々失敗しているうちに諦める事だろう。

 「……ナディア、本当に危険な時は私かライナスを頼るのだよ。私たちはナディアの味方だからね」

 「はい。もちろんですわ。でも、私にはヴァンの召喚獣たちが居るのと、ヴァンからの贈り物もありますから大丈夫ですわ」

 レイアードの心配そうな言葉に対して、ナディアはそう告げるのであった。

 ナディアは自分が狙われてようと、心配はしていない。なぜなら、ヴァンの召喚獣たちがいて、ヴァンからの贈り物もあるから。ヴァンが守ってくれる事を知っているから。だから怯えたりもせずに、自分を害そうとしてくるものと正々堂々向き合おうとしている。

 「私はなるべく、自分の手で決着をつけます。ヴァンの隣に立つためには、アン様とキッコ様の事ぐらいどうにか出来なければなりませんから」

 「そうか……でも私もナディアを守るために行動するからね」

 そう口にするレイアードの内心は穏やかではない。

 (ナディアが頑張ろうとしてくれているのは嬉しいけれど、ヴァンのためにというのが……。ああ、これが「レイアードお兄様のために」だったら私は幸福を感じるというのに。愛しい妹の成長が、ヴァンのための成長というのは、こう複雑な気分だ)

 相変わらず、レイアードは複雑な気分だった。ナディアの事をヴァンが守ってくれていることも知っているし、ヴァンが居たからこそナディアが平穏な日々を送っていることも理解しているし、ナディアがヴァンを好いていることも分かっている。それでも複雑な思いになってしまうのがシスコンの心なのである。

 そしてその翌日、キッコは自ら侍女に手を下そうとして現行犯で捕まり、キリマの証言もあり一生出る事が叶わない修道院に送られる事になるのである。





 ―――側妃二人の動きについて 2

 (ナディアはヴァンの隣に立つために。隣に立つ事を認めてもらうように、そのために動いている)




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