麻奈と航汰
あいつ、今どうしてるのかな...
あれから3年の月日がたって、
私は少しずつ大人になれたのかな?
あいつは今頃向こうで元気に
してるのかな...
私はまだ君のこと諦めてないから。
航汰...
~ 壱 ~
私は後藤 麻奈。 (ごとう まな)
ごく普通の中学一年生の女の子だ。
吹奏楽部でホルンを吹いているが、
大して上手いわけでもない。
見た目もブスでもなければ
かわいくもない。
本当に普通の女の子である。
そんな私には好きな人がいる。
川村 航汰 (かわむら こうた)
幼なじみで昔からモテていた。
小学生のころは彼女が3人。
相当モテていた。
おまけにサッカー部でかなり強い。
もう完璧に近い人である。
そんな彼に昔から好意を寄せていたが、
彼は私を単なる幼なじみとしか
見ていなかった。
しかも中学に入ってから急に、
「おい、後藤。」と、呼ぶ。
昔は麻奈って呼んでいたのに...。
それに小学生の頃はいっしょに
学校に通っていたのに、
中学に入ってお互い部活で
忙しくてバラバラに登校している。
クラスも違うので、
会うこともなかった。
「はぁ...」
もう疲れた。
昨日の定期演奏会で疲れていたのだ。
「麻奈、また航汰くんのこと
ばかり考えてるの?」
「ちがうよ。疲れてるの。」
「あ、昨日だったんだ。お疲れ様。」
彼女は中村 奈々。(なかむら なな)
かなりのモテ子である。
バスケ部で笑顔がとてもかわいい。
この笑顔でどれほどの男が
やられたことか。
そして、彼女も航汰が好きだ。
「奈々、今日部活休みだよね?」
「うん。でも用事があるんだ。」
「そうなんだ...。」
こりゃフられましたね(笑)
今日は一人で帰ろうか。
たまにはそういうのも悪くないかな。
「ごめんね。また今度帰ろうね。」
「うん。じゃぁバイバイ。」
そう言って私は奈々と別れ
おとなしく家に向かって歩いた。
三学期が始まって一週間。
辺りには雪があり風も冷たい。
コートを着ているが、
スカートなので下から風が来て寒い。
短パン履いとけばよかった。
「あぁ~。寒いよ。」
後ろから声が聞こえた。
振り返ってみると、
そこには航汰がいた。
「おぅ。後藤じゃん。」
「ねぇ。その後藤って止めてよ。」
「だって名前で呼ぶと、
付き合ってるみたいじゃん。」
「...それでもいいかも。」
「え?何か言った?」
「え...なんでもない。」
「なんだよ。おかしなやつ。」
鈍感な男だとつくづく感じる。
でもそこが好きなんだ。
「俺これから練習あるから。じゃあ。」
「あ、うん。じゃぁね。」
彼は行ってしまった。
少しだけど彼と話せて幸せだった。
今から練習なんて大変そうだ。
もうすぐ試合があるって
クラスの男子が言ってたのを聞いていた。
スタメンに入れるのかな...。
それよりも、今日は早く宿題やらないと。
とにかく早く帰ろう。