とある店の、とある水槽の中の話
小さな世界。
そこからさらに、小さな世界。
流されて、流されて。
僕らは何処へ行くんだろう?
「なあ、カメ夫さん」
「なんだい、カメ吉君」
プカプカと心地よい水の流れに身を任せながらカメ夫は語る。
「なんで、この水槽の中に、私たちはいるのかなあ」
小綺麗な部屋の、たくさんある水槽の中の一つ。
そこにカメ夫とカメ吉はいた。
「気づいたらここにいて、気づいたらプカプカと流されていた。……なんでなんだろうなあ」
カメ吉は、思ったことを流されたまま、流れるままに口にした。
「ついさっき、ここに放り投げられてやっと今、不思議に思ったんだ。……本当に、なんでなんだろうなあ」
砂利の上でゆらゆらと揺れながら、カメ夫は流れで答えた。
「それはきっと、私たちにはどうにもできないことなんだよ。
カメ吉君、流されたままでいいんじゃないかい」
カメ夫は、そういうカメだった。
「大体この名前さえ、人間から流れでもらったものじゃないか。今更だよ、そう思わないかい?」
カメ吉は思う。そう、きっと一生僕らは流されて生きてゆくのだと。
知らぬ間に大きな渦に巻き込まれて、知らぬ間に消えてゆくのだと。
「……でもね、カメ夫さん」
「なんだい、カメ吉君」
お互いに水の流れに身を任せながら言葉を交し合う。
一方は上に。
一方は下に。
「きっと、この流れに少しだけ逆らってみれば何か変わるかもしれないよ。こんな小さな世界だけど、きっと何かが変わると思うんだ」
カメ吉は、そう言ってまた流されてゆく。今度はゆっくりと下へ落ちてゆく。
「そら見たことか、カメ吉君。君は、逆らえなかったじゃないか。こんな止まった世界にさえ逆らえないんだよ、僕らは」
カメ夫は言った。少し後ろに落ちてくるカメ吉に向かって。
ほんの三年ほど前に、同じ場所で交わした言葉を思い出しながら。
ゆらゆらと砂利の上で揺れながら。
◇◆◇
「――って話を思いついたんですけど、恭介さんはどう思います?」
「知るかよ……ってか真面目に店番しとけ!」
うーむ。
上手く書きたいことが書ければ良いんですけどね……
読み辛かったらすいませんね、ハイ。
読んでくれてありがとうございました。