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シボレテ  作者: ジャンガリアンハムスターは世界最強種
8/10

チートな義弟と平凡な姉

あれから、私は勉強を口実に21時に帰るような事はしなくなった。

夕方に帰り、お母さんとシンタローと3人で夕食を食べる。食器を洗い、部屋で90分位勉強する。

気分転換に居間に行くとお父さんが帰ってきてご飯を食べている。

お父さんとは、あの日を境により仲良くなった。

良き父として、相談相手として、私にとって本当に掛替えのない人だ。



この日は、うちのチートな弟に数学の勉強をお願いしていた。

こいつはわたしの受験現役時代に、大学入試レベルの〇会の数学の問題ですら解いていた。

当時はシンタローも受験生だったので遠慮していたが、現在は高校1年生だし、家庭教師をお願いしていた。

私はその通信教育のみで、塾には通っていなかったので、シンタローの解説は分かりやすく、お金も掛からないし重宝していた。


勉強が一段落して、夕食の準備に取り掛かる。

今日は両親はデートに行っており、二人のみなのでシンタローの大好きな鳥の唐揚げだ。

シンタローにも手伝ってもらう。

漬物、キャベツを切ってもらい食器に盛ってもらう。

私は唐揚げをあげて、朝の残りの茄子の味噌汁をよそう。

パリッ ジュワ~として、美味しい。

突然シンタローが話し出した。


「俺には話してくれないの?」

「話?」

「俺だって、黙っているの限界。

 あの日から、父さんとも最近嫌味なくらい仲良いじゃない。俺だけ仲間はずれにしないでよ。」


嗚呼。今までこれに悩んでいたのか。

シンタローは本当に良い子だなぁ。と目頭が熱くなる。

直球で、ちょっとシスコンだけど、私の心に土足で踏み入る様な事を決してしない。


「何があったの?話せる所まででいいんだ。」

「何が知りたいの?」

「全部。雪ちゃんがどんな事をされたのか。どんな事をして、どんな事を考えているのか凄く凄く知りたいんだ」

「長くなるよ」

「いいよ。俺にも、ちゃんと、過去の話をして欲しい。俺は何も知らないから。」


モッキュモッキュ。

???

あれ?何だか、噛みあわない。


「知らないの?」

「知らない」

「私が部屋に閉じこもった日に聞いたでしょ?」

「何も」

「初対面の日は?ホテルで中華料理食べた日、お母さんと二人になったでしょ?何の話したの?」

「え?俺の好きな食べ物とか苦手な物とか、あ~あと、雪ちゃんの好きなタイプとか」

「お父さんやお母さんから聞いてないの?」

「何も」

「何も?さっきから何もってどういう意味?

 『先日急に変になったのは、どの部分が問題なの』ってこと?

 それとも『先日の事だけじゃなくて、その原因それ自体知らない』ってこと?」

「後者の方。具体的な事は本当に何も知らない。

 何となく男の人が苦手なのかな、とか大きな音にビクッとするなって事くらいしか、知らない。」



呆然とした。

―――――『知らない』?

勝手にシンタローはチートだから、何でも出来るし知っているもんだと勘違いしていた。

嗚呼。

この子は、何て真っ直ぐな子なんだろう。

私は何て周りの人間に恵まれているのだろう。

本当に、大好きだ。

シンタローは、私を嫌いになるかもしれない。

私を、軽蔑して『人殺しがっ!!出て行けッ』って言うかもしれない。


でも、この子は今も真っ直ぐ私を見ている。


―――――大丈夫よ―――――


頭で、誰かが囁いた。

うん。大丈夫。



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