200文字小説 恐怖の拳
水守中也先生の「かりんとうが怖い」を読んで無性に書きたくなった作品です。
「お……お兄ちゃん、やめて」
追い詰められた妹の膝が、情けないほどに震えている。
兄は残虐な笑みを浮かべて、まるで狩りを楽しむかのように、一歩また一歩と部屋の片隅に追いやられた哀れな妹に近づくいてゆく。
「逃がしはしないさ」
蒼白に歪む妹の表情。
「やめて、来ないで」
ゆっくりと恐怖の拳が掲げられる。
「いやあああああ」
部屋に妹の絶叫が響き渡る。
悪しき封印の拳が、妹の顔面で解き放たれる。
――――握りっ屁――――