表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/107

第96話 決戦間近 #2

 魔王は、なにも答えない。

 僕は、聖女を見た。

 聖女は、鼻歌交じりに望遠鏡を放さなかったが、こっちが辛抱強く視線を送り続けていると、嘆息してから振り向いた。

 目の周りに、望遠鏡の跡がついていたが。肩をすくめて、答えてくれる。


「まー、訊かれちゃったら、答えないとダメか」

「おい……よせ。腐れ聖女。言うな」


 魔王が語気を強めて制止しようとするが、聖女は続ける。


「心なんて大層なものを、作る魔物に込めるなんて無理さ」


 僕は、ん? と思った。魔王の説明と、いきなり食い違っている。

 こちらの顔に気づいているだろうが、聖女は構わず、さらに続けた。


「でも、心を持つ魔物を作ることはできる。……まあ、私に言えるのは、ここまでだねぇ。さすがに、決戦の前に少年に聞かせるようなことじゃないからさ」

「……なぜです?」

「なんでもさ。大人の事情ってやつよ。終わってもまだ覚えてたら、教えてあげるよ。適当に、自分で考えな。聞いたらたぶん、少年は戦う気を無くしちゃうだろうからねぇ」


 聖女は、そう言い切った。


 一体、どういうことだ。魔王と聖女のふたりは、それが分かっているのか。

 守護龍と、破壊龍に、どんな関連性があるのか……。


 魔物を作るときに心を入れることはできない。

 しかし、心のある魔物を作ることはできる。


 どういうことなんだ。


 僕が考えていると、聖女が言った。


「ふ、まあ、ほのめかすだけじゃあ、そうなっちまうよねぇ。でも少年、そんなに考えすぎるなよ。つまるところ、戦うのは君だ。だから……そうだな、その猫は口うるさく言うけど、少年は少年の好きなようにすればいいのさ」

「おい、腐れ聖女――」

「猫は黙ってな。いいか、少年。君は勇者だ。誰かに認められたからとか、そういう資格があるとか、なるべくしてなったとか、それだけ強いからとか、そんな理由で勇者になったんじゃない。君はねぇ、自然と誰もがそうだと認める、本物の勇者なんだ」


 そんなことを言われても、ちっとも実感はないが。

 聖女は続けた。


「そんな君だから、君の選択には、意味がある。君が特別だから意味があるとか、そういうことじゃないぜ。いや、そういうことでもあるんだが、そうじゃない。いいか、破壊龍は倒さないといけないが、その戦いの中で感じたことを、君なりに大事にしろ。そうすれば、きっと……みんな、納得できる、そういう結末になるはずさ」


 僕は――聖女の言う意味を、頭では理解できなかったが。

 聖女の目を真っ直ぐに見つめて、頷いた。

 魔王も、なにも言わない。もう、聖女に抗弁する気はないようだ。

 一応、魔王に確認をする。


「僕なりに考えて戦います。もちろん、倒すつもりなのは変わりませんけど、なにか気づきがあったら、変なことをしちゃうかもしれません。いいですか?」

「……まあ、仕方あるまい。まったく、決戦前に、話を複雑化させおって。終わってからいくらでも考えれば良かったものを……」


 ぼやく魔王。だが、僕の頭をてしてし叩きながら、結んだ。


「小僧の好きにしろ。お前の出す結論は、見届けてやる。無論、気に入らなければ蹴り飛ばすがな。いいな?」

「はい」

「よし。相手は古代文明を破壊し尽くした龍だ。ぬかるなよ」


 迷いかけていた心は、これで決まった。あくまでも、僕として考え、それを大事にして、僕として戦う。


 破壊龍との戦いの中に、なにが見えてくるのかは分からないが、僕なりの最善を尽くしてみせる。

 そしてなにか事情があるのなら、破壊龍のことも救ってあげたい。


 聖女は言った。悪い面だけのものは存在しない。良い面だけのものも存在しない、と。

 例外は作りたくない。それはもちろん、破壊龍も同じだ。


 と――

 守護龍は、今の話をちゃんと聞いていたのか、僕に訊いてきた。


「あのう……。今まで、勇者さんのお話の通り、アイツのこと、クソ龍だと思っていたんですけど。アイツにも、なにか……事情とか、あったんでしょうか?」


 それに、僕は曖昧に首を振った。


「それは、僕にも分からない。でも……もし、事情があるなら。僕たちが、受け止めてあげないと。暴れるのを止められるのは、僕たちだけなんだからね」


 それは、特に考えて言った言葉でもなかったのだが――


 聖女はふっと笑って、僕の背を叩いてきた。

 兵士長の娘は、目に決意の炎を灯して、頷く。

 そして守護龍は、両手を握り拳にして、大きく頷いた。


「はいっ……! 分かりました! あの、私、動物さんと遊んでから、いろいろ、頭の中がぐるぐるしていたんですけど……アイツも生き物なんじゃないかって思うと……」


 しかし守護龍の瞳には、そんな迷いの影は、少しも感じられなくなっていた。


「でも! 今の、勇者さんの言葉を聞いて、分かりました! ぶっ殺しちゃうかもしれませんけど、止める! 止められるのは、私たちだけ! その通りです!」

「ああ、良い言葉だったよ。そういうとこさ、少年。あっさりと、そうやってやるべきことに辿り着くんだからねぇ。さすが、生まれながらの勇者だねぇ」


 そんなに良いことを言っただろうか?

 困惑していると、魔王がすっと、気配を鋭くした。


「ほのぼのしている場合ではないぞ。……来たようだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ