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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第94話 守護龍ちゃん #3

 街を歩きながら、守護龍は言った。


「人間さんたちが……こんなふうに、一生懸命生きているなんて、思いませんでした。地上には、楽しいことがいっぱいあるっていうことも、知りませんでした。ひとつひとつの命が、あんなにも……尊いものだっていうことも、今日、初めて知りました」

「ずっと、封印されていたんだもんね」

「はいっ。お話したことがあるのは、勇者さんと、魔法使いさんだけで。私は、最低限の知識しかなくて。とにかく、あのクソ龍が復活したらやっつけるんだってことだけ、考えて眠っていました」


 きょろきょろと、守護龍は街を見回す。


「あの、勇者さんの作戦は、絶対正しいと思います! この街を……私は、あんなクソ龍に壊されたくない。みんなを……守りたい。そのために戦いたいって、今日、すっごく強く思いました!」

「うん。必ず、僕たちの手でこの街を守ろう」


 僕が答えると、守護龍は頷くと、笑顔で言った。


「はいっ! 絶対守りますっ! この街のみなさんを守れた、っていう記憶があれば……また眠りについても、きっと、そんなに寂しくないはずですし!」


 その言葉は、僕をどきりとさせた。


 そうか、と思う。


 この子は、この大陸を守る、守護龍だ。そして、目下の敵は、黒い巨龍だ。

 それを倒せば、ひとまずはこの子の役目は終わる。北の封印されしものは、僕と魔王で倒すのだから、この子の出番はないのだ。

 つまり、また、眠りにつかないといけない。


 僕は、この守護龍の孤独に、思いを馳せた。


 何年も、何年も……あの箱の中で、自分の出番はいつだろう、と思って、じっとしていたのだろう。

 この子はきっと、寂しがり屋なのだ。

 だから自分で出てきてしまったし、ステーキハウスでは、あの黒い巨龍が出てきてよかった、ということも言った。


 それを考えると――問題は、黒い巨龍を倒すことだけではなくなっていた。


 僕は、みんなに幸せになってほしい。

 それはもちろん、守護龍である、この子にもだ。


 そのための方法も、なんとか考えつかないといけない。

 が、守護龍が、人間に混じって、生きていけるものなのだろうか。


 頭を必死に回転させながら、僕は、守護龍に手を差し出した。

 一瞬きょとんとしたが、すぐに意味が分かったのか、僕の手を握ってくれる。

 もう片方の手は、兵士長の娘が握った。


 そうして夕暮れの道を歩きながら、彼女が言う。


「うふふ。なんか、妹ができたみたいで、嬉しいなぁ」

「私も、楽しいです!」

「仲良きことは美しきかな、だねぇ。じゃあ、そろそろメシの時間だねぇ。今日はなに食べる? 今日は呑みたいんだけどねぇ。馬刺しでもいっとくかい?」

「ばさし……?」

「馬の肉の刺身だよ」

「そんな! お馬さんを食べるなんて! とんでもない! ダメです!」

「お、おっと。そりゃ、すまなかった。ノンデリ聖女なもんでねぇ、勘弁しておくれ。おい猫、なんか行きたいとこないか?」

「先日の、ステーキハウスがいいな」

「牛さんも豚さんもダメですー!」

「な、なに。では、肉類全般アウトではないか……!」


 緊急事態だ、という顔になる魔王。だが、守護龍相手に意見をゴリ押す気はないらしく、あっさりと引き下がる。

 兵士長の娘が、ひとつの店を指した。鉄板焼と書いてある。


「じゃあ、お好み焼きなんてどう? 巨大お好み焼きのお店。すっごいよ。普通サイズで、直径五十センチくらいあるから。大盛焼きそばもすごいよ。お父さんがチャレンジして、お腹破裂して死にそうだ、ってなってたの」

「ほう、ほう……。小僧と初日に見たのぼりの店だな。悪くない。守護龍も、それなら構わぬだろう」

「おこのみやき? やきそば?」

「うん。お肉が入っていないのがあるから、安心して食べられるよ」


 僕が言うと、守護龍は元気よく頷いた。


「じゃあ、それにします!」

「まったく、手間のかかる」

「ふっ、それがいいんじゃないか。しかし、お好みかぁ。じゃあ、ビールだな今日は」


 決戦前の、貴重な寛ぎの時間――

 僕は歩きながら、それを感じていた。


 いつまでも、こうしていたい気持ちすらある。

 が、楽しいときは、いつか終わってしまう――つい、そんなことを考えてしまう。


 飛び跳ねる守護龍を、僕と兵士長の娘で持ち上げたりしながら、進んでいく。


 はたして、戦いは、どんな結末を迎えるのか。

 それは、僕と魔王の最終決戦の、ちょっとしたリハーサルのような……

 なんとなく、そんな気が、どこからから湧いてくる感じもあるのだった。


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