第93話 守護龍ちゃん #2
こうしてみんなと一緒に過ごしていると、守護龍だけでなく、みんなについても、いろいろと分かってくる。
たとえば。冗談めかしているが、聖女は本当に聖女なのだということ。
生活習慣が控えめに言っても終わっているが、常に僕たち全員に目を配っていて、さりげなく必要な言葉をくれたり、誘導をしてくれている。
かつて魔王の師であった、というだけあり、魔王も実際には、頭が上がっていない。握るべき部分のコントロールは、常に聖女が握っているのが分かる。
僕も、子供の頃からこの人の世話になりっぱなしだ。
今も、深刻な空気は少しも漂わせないまま、きっと本心から、どこかで役に立つ助言をしてくれているんだろう。
現に、守護龍は目を輝かせて、聖女の言葉に頷いている。
「聖女のお姉さんや勇者さんの言う通り、ちゃんと謝ってみます!」
「そうだねぇ、それがいい。全員、これくらい素直だと話が早いんだけどねぇ。勇者や魔王ってのは、ヒネた跳ねっ返りばっかりでよくないよねぇ」
「お前、鏡を見たことはあるか?」
「言うと思ったけど、分かってやってるのと分かってないのとは天と地の差だからねぇ」
また飛んでくる魔王の言葉に、聖女は煙を吐きながら素知らぬ顔だったが。
ともかく、全員しっかり丼ものを完食してから、まずは壊れた壁の所へと向かうことにした。
作業員たちもちょうどお昼休みで、弁当を広げているところだった。
守護龍は作業員たちの目の前に進み出て、頭を下げる。
「あの……壁を壊してしまって、ごめんなさい! 私がやりました!」
それを聞いて、作業員たちは爆笑していた。破壊の規模と、原因が目の前の守護龍である女の子というギャップが、確かに面白くはあった。
怒っている人などはひとりもおらず、でも、シャレにならないからもう二度と壊しちゃダメだよ、と注意される。
それに元気よく守護龍が返事をしてから、持ってきた差し入れをみんなで配った。作業員たちは満足げで、ますます修繕作業への熱意を高めてくれたようだった。作業が完了したとき、特別ボーナスを支給してくれるよう、首長にお願いもしてある。そのお金は当然、僕たちで準備した。
次に、畜産農家のところを訪ねた。
壁の外にある、柵で囲まれた放牧区域のところにいた強面、髭面のおじさんに事情を説明して、牛や馬を無断で食べてしまったことを謝罪する。(守護龍はおじさんの人相を一目見て震え上がっていた)
農家のおじさんは、やはり、少しも怒っていなかった。それどころか、ウチの牛は旨かっただろう、とまで言ってきたのだった。
僕たちは、新しく家畜を買えるように被害の分の代金を支払ったあと、世話をしている馬や牛、羊などを撫でたりなどの、牧場体験をさせてもらった。
動物を食料としてしか見ていなかったという守護龍は、乗馬体験に感動し、牛の乳搾り体験に感動し、羊の毛刈りを見て、歓声を上げていた。
守護龍の一挙手一投足に、農家のおじさんも、僕たちも、終始顔をほころばせていた。
牧羊犬と駆けっこをしたりもして、僕たちは思う存分、牧場で遊んだ。
あっという間に、時刻は夕刻になっていた。
農家のおじさんに改めて謝罪とお礼を言って、僕たちは市壁の中へと戻る。




