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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第89話 守護龍の背 #1

 僕は、覚悟を決めて、下腹に力を入れて歯を食いしばる。

 守護龍は、みるみるうちに高度を上げていく。

 あっという間に、地面にいる人たちが豆粒に見えるほどの高さまで昇った。


 僕は、顔を巡らせた。


 太陽が近い。眩しい。そして、地上のすべてが、自分の下にある。

 北の山の麓の林は、空からはブロッコリーの房かなにかに見える。遠くには王城が。それより遠い西の都は、もやに隠れてさすがに見えないが。


「すごい……。空って、気持ちいいなぁ」

「でしょう? うふふ、昔の勇者さんも、そう言ってました!」

「馬鹿と煙は、高いところが好きと言うよな」


 爪を懸命に立てて僕の肩にしがみついている魔王は、かろうじて皮肉を言った。

 だが、景色を楽しむために上がったのではない。


 僕は、また首を巡らせて、黒龍の姿を探した。

 海のほうも見る。漁村が見える。沖合に、潮騒の孤島――迫り上がってきた岩礁のようなものは、見当たらない。


「黒い龍は、どこにも見当たらないね」

「はいっ。想像ですけど、海の中に姿を隠してるんだと思います」

「そうなの? 分かるの?」

「なんとなくですけど。ほら、勇者さん、矢をぴゃっと撃って、アイツを攻撃したじゃないですか。光の力で」


 光の力とは、僕の剣気のことだろう。古代は、そう呼んでいたのか。


「うん。それが?」

「邪悪な存在のアイツは、光の力がすっごくニガテなんです! だから、あんなちっちゃい矢でも、結構痛かったはずです。だから、隠れて、力を蓄えてるんですよ、たぶん」

「力を蓄える?」

「この時代にも、ええと、あの……玉ってありますよね? その、光の力を溜めておける、そういう玉です。器とか、そういうものです」


 神聖宝玉だな、と僕は当たりをつけた。


「うん、あるよ」

「玉が光の力を蓄えるように、アイツも邪悪な力を蓄えることができるんです。たぶんアイツは、街とかを一発で壊せるくらいの力を溜めて、飛んでくるはずです!」

「それはつまり……次の襲撃にはまだ時間がかかる、ってこと?」

「約束はできませんけど、私はそう思います! アイツ、執念深くて、とんでもなくねちっこいクソ龍なんです! だから次も絶対、襲おうとして失敗した場所を襲うはずですよ、あの粘着質のクソ龍は!」


 可愛い声なのだが、あの巨龍に言及するとたびたび物騒になる。よっぽど口酸っぱく、往時の勇者に教え込まれたのだろう。

 魔王は言った。


「つまり、襲撃には猶予がまだあり、そして次の襲撃は、前回の比にならぬほど苛烈なものになる……ということだな」

「ですね。魔王さんは、どう思います? 確率として」

「守護龍の言う通りであろうな。そもそも、覚醒自体は三週間ほど前だ。漁師が巻き込まれたものだな。目覚めは、その時点で終わっている。なのに、東の都を攻めるのには、時間を要している。おそらくは……封印されている間に自身の力が弱っていることを悟り、邪気を吸収して力を取り戻すことを優先していたのだろう」

「ある程度力を戻してから、都を襲った……?」

「そうだ。しかし、我々に撃退された。であれば、さらに力を溜めて戻ってくるのが道理だ。私と腐れ聖女によって攻撃を無効化され、お前に手傷を負わされた屈辱を雪ぐためにな。邪悪なものは、執念深いというのも同意だ」

「魔王さんもですか?」

「ふっ、無論だ。私は北の封印されしものを消すという執念だけで、千年やってきたのだからな。嘗めるなよ」

「説得力ありますね」


 魔王の口調には、だいぶ余裕が戻ってきていた。留まっている限りは、この高さにも慣れたようだ。


「じゃあ、訓練の時間もある、ってことですね。守護龍さん、早速――都の上を飛んでもらっていいですか。旋回しつつ」

「そんなくらいでいいんですか? 訓練なら、ほら、ぐーるぐーる回ってみたりとか、どうでしょうか!」

「いっ、いやっ、それはちょっと、まだ早いかな。速度も抑えめで、散歩するような感じでお願いできる?」

「いいですけど、退屈じゃないですか?」

「全然。最初は、飛んでいてもこうして会話できるくらいの余裕を身につけたいから。お喋りできるくらいの速度でお願い。僕も、君とお話をしたいし」

「えへへ、それ、楽しそうです! 分かりました、お散歩モードで行きます!」


 ばさっ、と守護龍は翼を動かした。

 おもむろに始まったお散歩モードというのは、たぶん、時速八十キロくらいだった。

 その速度で、守護龍は都の上を優雅に飛んでみせる。


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