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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第88話 作戦会議 #2

「閃きました。戦う場所も選ばず、街のみんなの避難も必要なくて、どこにも被害を出さないで済むかもしれない方法が……あります」

「本当? お兄ちゃん」


 兵士長の娘に、僕は頷いた。


 魔王のプランは確かに名案だったが、ディテールを詰めると、どうしても無理のある部分は出てくる。そして、巨龍の襲来がいつになるか、という運要素を消しきれない。今すぐに来ないとしても、住民の移動には、一週間以上かかるだろう。その間に巨龍が来ないという保証はどこにもないし、そこを襲われてしまえば、甚大な被害が出る。


 魔王の案が最善の案であることには、間違いないのだが……。

 しかし、僕は魔王の提案から、それを上回る、最善の手を思いついた。


 この手を使えば。戦いの中で僕たちが犠牲を払うだけで済む。

 それを念頭に置いて、説明をした。


「――っていうことです。どうでしょう?」

「……それは、実行するのは小僧だけか? 私たちも行かねばならぬのか」


 心底嫌そうな魔王だった。が、僕は笑った。

 ここは普段の僕なら、僕だけでいい、と言うところだが。

 魔王だけでなく、みんな仲間だ。せっかくなので、全員に付き合ってほしい。


「ここまで来たんですから、付き合ってください。魔王さんが留守番ってのは、あり得ないでしょう。お姉さんも、君も。一緒に戦おう」

「すっごい憂鬱な方法だけどねぇ。……まぁ、いいか。やってやろうじゃないか、少年。そのプランなら、間違いなく都に被害は出さずに済むしねぇ」

「……私になにかできるとは思えないけど。でも、近くでお兄ちゃんの応援くらいならできるし、見届けたいから。私は行くよ」


 聖女、兵士長の娘も了承してくれる。

 最後に、やれやれと魔王がかぶりを振りつつ、言った。


「……仕方がないな。まったく、いつもいつも、毎度のことながら。己の身を差し出すことを厭わぬのだな、お前は」

「ごめんなさい。でも、他に手は思いつかないです」

「ふん。私もだ。まあ……忌々しいが、仕方あるまい。私が一緒におらねば、お前はどんな無茶をしでかすか分からぬからな。愚問であったわ」

「ごめんなさい。でも、せっかくですから。付き合ってください」

「よかろう。で、守護龍よ。作戦の要は、お前だ。できるな?」


 魔王に言われて、守護龍は笑顔で頷く。


「はいっ! あ、でも、昨日のことがあるので、ちょっとだけでも、練習とか、しておいたほうがいいと思います! 本番前に!」

「それは、そうか……。やるのか? まさか、今からか?」


 魔王が嫌そうに訊いてくる。

 僕は頷いた。


「まあ、いつ来るか分かりませんからね、敵は。早速、やりましょう」

「そうか……」


 憂鬱に、魔王はそれを受け入れていた。

 兵士長が、僕に確認をしてきた。


「構わぬのですね、勇者どの」

「はい。じゃあ、あの。練習をしたいので、とりあえず、外を使ってもいいでしょうか」

「どうぞ。ご自由にお使いください。して、勇者どの。我々のすべきことは……」

「そうですね。黒い龍が来れば、すぐに戦闘になりますから。少しでも早く発見できるように、物見に立ってくれればと」

「かしこまりました。では……どうか、お願いいたします、勇者どの」

「街の皆に代わって、私からも。どうか、お願いします。この街に、平穏を取り戻してください、勇者さま」

「ええ、もちろんです」


 僕は、ふたりに頷いた。


 それから僕たち五人は、兵舎の外へ出た。昨日山から戻ったときに降り立った、運動場へと向かう。


 そこで、守護龍は元の白い龍へと姿を変えた。その背中に、まずは僕と魔王が乗り込む。

 僕の肩にくっついた魔王は、大きく嘆息した。


「……今からでも、私のプランへ変更して構わんのだぞ。いくらなんでも、お前の提案は無謀ではないのか?」

「街に被害を出さないためには、これがいいって魔王さん、さっき認めたじゃないですか。これは必要な試練ですよ。覚悟決めましょう」


 それに、と僕は付け足した。


「魔王さん、昨日、あれだけ龍に乗るときウキウキだったじゃないですか。その気持ちを思い出してくださいって」

「現実を知ったのだ。龍を駆る勇者など、所詮は絵空事に過ぎぬ」


 昨日と違う、完全に反転した言い草に、僕は笑った。

 そして、見送り姿勢の聖女、兵士長の娘に手を振る。


「じゃあ、行ってきます」

「死ぬなよ、少年」

「無理しないでねー」

「うん。これが終わったら、次はふたりの番だからね。じゃあ、飛んでくれる?」


 守護龍に伝えると、頷いてきた。身体が大きいので、どんな動作も大きく感じられる。


「はーい! じゃあ、出発しまーす! しっかり掴まってくださーい!」


 僕はへばりつくようにして、守護龍の背にしがみついた。

 大きく、守護龍が翼をはためかせる。砂塵が舞う。


 僕の立てた、都に被害を出さないためのプランとは、単純明快なものだ。


 姿を隠す術を持つ、あるいは速すぎて捉えられず、寝込みを襲うこともできない黒い巨龍と戦うには、迎撃戦しか方法がない。

 しかし、街で待ち受けて戦えば、街が壊滅する。

 どうすればいいのか。答えは簡単で、どこにも被害がない場所で戦えばいいだけだ。


 つまり――空の上である。


 ヒントは、守護龍によって街の人を運べないか、という魔王の提案だ。

 それに合わせて、魔王が図書館で読んでいた――僕も子供の頃に何度も読んだ、絵本の記憶が役に立った。

 絵本には、空飛ぶ善なる龍の背に乗り、邪悪な龍と戦う勇者、という話があった。


 それを模倣すればいいだけだ。


 つまり、守護龍を駆り、空中であの黒い巨龍と戦う、ということである。

 空は誰のものでもなく、無限に広がっている。

 規格外の巨龍との決戦には、これ以上なく相応しい舞台に思えた。


 しかし、問題もある。

 昨日、北の山から東の都までの片道だけで、僕たちは全員、打ちのめされた。


 守護龍の背というのは、今まで体験したどんな乗物よりも速く、負担が大きい。

 昨日はあの魔王でさえ、女の子のような甲高い悲鳴をずっと上げていたくらいだ。それに触れるとぶん殴られそうなので、今まで黙っていたが。

 守護龍の背に乗って黒龍と戦うには、その背に乗るということそのものに、慣れていないといけない。少なくとも、なにも感じなくなるくらいに慣れておかなければ、戦うなど不可能だろう。


 そのためのトレーニングが、これから始まろうとしていた。


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