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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第87話 作戦会議 #1

 翌日、僕たちは朝の九時から、兵舎の会議室に集合していた。

 会議室にいるのは僕たち五人と、兵士長、そして首長だ。

 まずは兵士長が口火を切る。


「では、早速。勇者どの、なにかあの巨龍を退けるための妙案というのは?」

「ああ、ええと。僕じゃなくて、たぶん魔王さんが考えてます」


 僕が丸投げすると、魔王は頷いて、説明を始める。


「立てられる作戦らしきものは、正直なところ、それほどない。巨龍は神出鬼没。あれだけの巨体が周辺に見当たらず、先日も急襲してきたとき、物見に立っていた兵士どもが事前に察知する間もなく、この都市上空まで飛来してきた。そうだな?」


 それに、兵士長は首肯した。


「おっしゃる通りです。気づけば都市上空で旋回をしていたと、報告にあります」

「ふむ。つまり、ヤツはなにか身体を隠すための魔法を使用できるか。あるいは、我々では見つけようもない場所に隠れている。そして、そういう状態から、あっという間に移動してこられる、ということになるな」

「打つ手はあるかい?」


 聖女が言うと、魔王はうーんと唸った。


「ずっと考えてはいたが。妙案はないな。なので、合理的にいく」

「合理的に?」


 兵士長の娘が言うと、魔王は全員を見回した。


「守護龍の話によると、あれは古代の邪悪そのもの。守護龍がこの大陸の安全装置であるなら、あれは破壊装置だ。往時の魔王が邪悪を召喚し、龍の形に造りかえた……なら、もっとも大きく壊しがいのあるこの都市を破壊しに来る。現に、周辺の漁村や町は襲われていないし、その覚醒を間近に見た漁師も、間近にあった漁村も無事だ。ヤツは引き続き、この都市を壊しに来るはずだ。邪魔な神聖宝玉も排除したことだしな」


 全員が耳を傾ける中で、魔王は冷徹に言った。


「それらを加味した上で、私としての、合理的だと思える案はだな。まず、この都市は差し出してしまう。好き放題に滅ぼさせる」

「えっ!?」


 慌てたのは首長だ。それはそうだろう。管理する都市を滅ぼさせろと言われては、黙っていられるわけがない。

 しかしその声は無視して、魔王は続けた。


「考えてもみよ。奇襲が不可能なら、我々にできる戦い方は、迎撃しかない。巨龍の力は絶大だ。となれば、どう戦おうと、二次被害は免れ得ない。なら、最初からそれを前提にすればよいのだ。巨大な市壁の内側を守るべきものと考えず、巨大な闘技場として考えるのだ。民は、近隣の町や村、あるいは王都に避難させればよい。確か……有事の際の遷都先がこの都市であったな? 現在は、この都市が危機に晒されている。それならば、周囲の都市や街が責任を負うのが道理であろう」


 魔王は、いつか質屋の中で見せた見事な手腕で、首長を説得にかかっている。


「建物など、形のあるものや財産などは、諦めろ。また一からやり直せばよいであろう。生きてさえいれば、それができるのだからな。これを首長であるお前が飲めば、我々は遠慮なく黒き龍と環境を気にせず戦える。戦力としては、守護龍が加わったのだから、遜色ないであろう。どこで戦うか、ということが、目下最大の問題であり、それが解決できれば、我々は勝利したも同然なのだ」

「う……。む……。そ、そうですか……。しかし……街は、きっと、完膚かんぷなきまでに壊滅する……はずですよね?」

「おそらくな。戦ってみたらなにも壊れませんでした、などということは、まずあり得ぬだろうな」

「でしょうね……。しかし、今から全員を避難、ですか……」


 首長は、苦り切った顔だった。


 魔王の理屈は、完璧と言っていいと思う。

 もちろん、民すべてを納得させて移動させることと、その後の復興、という途方もない労力に目を瞑れば、という前提の上でだが。


 誰だって、今住んでいる場所を捨てたくはないだろう。

 愛着がある。思い出がある。

 それをめちゃくちゃにされるのは、誰だって嫌なはずだ。


 部外者の立場からなら、天災に遭ったと思って諦めろとか、いくらでも無責任な言葉をかけることはできる。


 だが、僕たちには、あの黒龍をなんとかできるだけの力はあるはずなのだ。

 この街を壊さずに済むのなら、そうしたい。

 ここに住んでいる人たちみんなに、特別な負担なんて一切かけたくない。

 ひと眠りしている間に、龍はいなくなった――みんなにはそれくらいの気楽さで日常を取り戻してほしいし、それくらいの感覚でいてほしい。


 巨龍なんて大したことなかった、と思ってほしい。

 そう考えていると、魔王が僕を見てきた。


「勇者よ。以上が、私の案だ。私の案を受けた上での、お前の考えを聞こう」


 その言葉は、予想していなかったわけではなかった。

 しかし、実際にかけられると、一際、感慨のようなものがあった。

 西の都で魔王は、僕に言った。ケンカの果てに、辿り着いた結論だ。


『私のロジックとお前のハートで、ひとつの答えとしよう』と。


 それを忘れず、こうして僕に訊いてくれる。分かっていても、胸は熱くなった。

 僕は頷いて、答えた。


「魔王さんの案は、いい線いってると思います」

「ふむ。いい線止まりか」

「はい。人命を優先して、僕たちが遠慮なく黒い龍と戦える状況を作る、ってことを考えたら、魔王さんのプラン以上のものは、たぶん……ないと思います」


 と、重々しく首長が頷いているのが見えた。

 ここで僕が魔王のプランを後押しすれば、それに決まるのは目に見えていた。首長も、この未曾有の事態に対して、責任と犠牲を払う覚悟を決めたのだ。

 でも、それではいけない。僕たちが守るのは、なにも民だけではない。


 首長さんも、兵士長さんも。兵士さんも、みんな――この街の全員が、犠牲を払わずに済まないといけない。例外はいない。

 もし例外として、犠牲を払うものがいるとするなら。


 それは勇者ひとりだけでなければならない。


「でも、やっぱり、現実的に、街のみなさんを移動させたりとか、そういう手間を考えると……時間がかかりすぎるんじゃないかって。移動させている最中に黒い龍が襲ってきたら普通よりも大きい被害が出ちゃいますよ。それについては? 魔王さん」

「うむ、そこが、最大の問題ではあるな。民の移動を、どのようにするか……」


 魔王が言うと、兵士長が呟いた。


「馬車……では、あまりにも手間がかかりすぎますな……」

「そうだな。なので、守護龍を使うというのはどうだ」

「守護龍を?」

「そうだ。速度も、運搬能力も、馬の比ではないぞ。こう……人を適当な箱にぎっしり詰めてだ。それを運ぶのだ」

「そんなの、移動だけでみんな死んじゃうよ」


 兵士長の娘が抗弁すると、さすがに魔王も冗談のつもりだったのか、素直に頷く。


「だが、もう少し工夫すれば、なんとかなるのではないか」


 その言葉に、全員が考え込む。

 考え込んでいるみんなを眺めながら、僕も考えた。


 ――守護龍なら、空を飛んで移動できる。


 それを、有効利用する方法は、他にないだろうか。

 しばらく考えていると、僕は、ふっと名案が降りてきたのを感じた。


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