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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第81話 守護龍、降臨 #3

 次に、魔王が質問をした。


「では、昨日のことを覚えているか。黒き龍が攻めてきたときだ」

「はいっ。その時も、自力で起きて、飛んできたんです。ちょっと遅れちゃいましたけど、その……顔が出しづらくて」

「ふむ。それはいい。あの黒き龍とは、どうなったのだ? 倒せたわけではあるまい?」

「はいっ。あの、遅れちゃったんですけど、強そうな人が戦ってるからいいかな、あ、あれ、今の勇者さんかな、って思ったんですけど、なんだか、あんまり強くなさそうだったので、助けたほうがいいかなって思って」

「言っておくけど、お兄ちゃんは理由があって弱体化してるだけだからね。本当は、もっともっと強いんだから!」


 なぜか、兵士長の娘が食ってかかる。

 それに、守護龍は頷いた。


「はいっ。見れば、分かります。一度すべてを失っているんですね。でも、そのままだと危ないと思って。できそうなら、私が殺っちゃおうと思ったんですけど。ごめんなさい……まんまと、逃げられちゃいました。やっぱり、自力で起きたっていうふうだと、ちゃんとした力が出せないみたいで……。アイツも弱くなってますから、いけるかなって思ったんですけど……」

「そっか。大丈夫、君は悪くないよ。あの時、助っ人に来てくれたのは、すごく助かったんだ。君のおかげで、たくさんの人の命が助かったんだよ」

「そ、そうですかっ? えへへ……。なら、よかったです!」


 心からの笑顔で、守護龍は喜んでいる。こちらもつられて笑顔になってしまう、それくらいに眩しい、純粋そのものの笑顔だった。


 ともかく。自力で起き出して、十割の力を出せたら、それは世界にとって新たな脅威になる可能性がある。

 だから、守護龍を作った勇者というのは、きっと、勇者に呼ばれ、勇者と力を合わせないと全力が出せない、というふうにしたのではないだろうか。


 と、守護龍は両手で握り拳を作って、鼻息荒く言った。


「でも、今は! 勇者さんが起こしてくださいましたから! 元気いっぱいなのです! 今度こそあの憎っくきクソ龍を、ぶっ殺しちゃいましょうね!」

「う、うん」


 一体、あの龍は過去にどれほどの大暴れをした龍なのか。大戦争が起きたとこの子は言ったが、世界を相手に立ち回るほど、とんでもない龍だったのか。

 大戦争についての詳細や、往時の勇者の話も気になったが、話が長くなりそうなので、訊ねるのはまたの機会にしておこう。

 僕は、魔王を見た。


「……で、どうしましょう。これから」

「まあ、いろいろと突っ込みどころはある。笛はどうなったのかとかな。しかし、結果がすべてだ。こうして守護龍の合力を得られたのだから、次は当然、黒龍の討伐であろう。きっとまた、都に飛んでくるはずだ。そうだな?」

「はいっ。私から逃げた後は、どこに行ったか分かりませんけど。また来ると思います! 人が住んでるところとかを壊さずにいられない、とんでもないクズ龍ですから! 龍の風上にも置けないヤツですよ! 許せません!」


 その調子はどちらかというと、いじめっ子におもちゃを取られた子供が親に告発でもするような、可愛らしい調子ではあったが。


「んじゃあ、一旦街に戻ろうか。日も暮れる。お嬢ちゃんも連れて、事情を都のみんなと共有するのが、いいんじゃないかい?」

「そうですね」


 聖女の言葉に頷いた。

 それを聞いていた守護龍は、笑顔で言った。


「街に戻るんですね。じゃあ、乗せていきましょうか?」

「え?」

「いちいち山を下りたり、お馬さんに乗ったり、面倒でしょう? 龍に戻りますから、勇者さん、ちょっと広場の端まで下がっててください!」


 守護龍は勝手に話を進めていく。


 魔王と聖女にどうするか訊こうとしたが、チーム魔王はすっかりどうなるのかに興味津々らしく、さっさと巨岩まで下がり、手招きしている。

 僕と兵士長の娘、チーム勇者は、嘆息してそれに追い付く。


 どうなるのか、台座の辺りに立ったままの守護龍を見つめる。

 と――


 日が傾き、薄暗くなりつつある山頂が、まばゆい光で満たされた。

 思わず目を閉じる。

 そして、開く。

 僕は、さらに目を見開くことになった。


 なんと、さっきまで少女のいた位置に、あの白く輝く巨龍が鎮座していたからだ。

 山頂の広場からはみ出そうなほどのサイズだ。

 白い巨龍は、その姿で、さっきと同じ少女の声で喋った。


「じゃあ、背中に乗ってください。ひとっ飛びで、街まで一直線! です!」

「ほほー。面白い。行くぞ、小僧。龍を従えるとは、勇者らしくなってきたぞ!」

「だねぇ。長生きはしてみるもんだ。レッツゴー!」


 魔王は駆け出し、龍の前肢を足場に、ぴょんぴょんと背中に登ってしまう。

 聖女もノリノリで、背中に飛び上がって乗り込んだ。


「なにしてる、小僧! 我々が都を救うのだ!」


 龍を駆る、というシチュエーションが琴線に触れたのか、魔王はご機嫌だ。

 そこで、隣の兵士長の娘が僕に言う。


「こんなので都に乗り付けたら……お父さんたち、たぶん心臓止まるよね」

「……だね。どうしよっか」

「白旗でも用意しておく?」

「うーん……。できる限りの準備はしておこうか。矢で撃たれたらたまんないし」


 とはいえ、龍に乗るという体験を前に、やらずにいるということは、できそうにない。子供の頃からの憧れのシチュエーションではある。

 自分より浮かれている人がいるから、冷静でいられるというだけだ。


「ともかく、乗ろう。細かいことは、あとで考えればいいさ」

「もー、ちょっと、お兄ちゃんまで。魔王みたいなことを言って!」


 言いながら、兵士長の娘も楽しそうだ。やっぱり、勇者を目指すものとして垂涎の状況なのだ。

 ともかく、僕たちは新たな仲間、守護龍の背に乗り込み、都に戻ることになった。


「じゃあ、行きますよー! しっかり掴まっていてくださいね!」


 そう言って飛び立った守護龍は、いきなり急加速して――

 四名の絶叫が響き渡り、北の山は律儀に、それをこだまにして返してきたのだった。


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