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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第80話 守護龍、降臨 #2

 その時、というのは、北の爆発のことだろうか。

 僕は、頭の中で話を整理した。


 あの黒い巨龍は、どうやら最悪なことに、北の封印されしものと同じ過程を辿って召喚された同種の邪悪であり、それを利用して世界の征服を企んだヤツが古代にもいた、ということだ。


 いや――と僕は思った。

 そのケースを、魔王の前の魔王はどうにかして知ったのだろう。で、前例に倣い、その邪悪を喚び出したのだ。そしてそれは、魔王によって封印された。


 その時点では、黒い巨龍が天より降り来る邪悪に同調することはなく、封印も解けなかった。きっと、魔王の手際がよかったのだろう。


 しかし。僕と魔王の戦いの結果起きた、大爆発――


 それによって、黒い巨龍は長き眠りから目覚めることとなった。


 西の都にいた頃、川釣りをしながら魔王と話した予想と、大体同じだ。

 それを魔王も認識しているのか、余計なことを言うからだと睨んできている。

 それはひとまず無視して、僕は言った。


「事情は分かったよ。悪い魔法使いがいて、それが邪悪なものを喚び出して、あの黒い巨龍を作った。それは、とんでもない大暴れをした。で、君の時代の勇者さんが封印をしてくれた――っていうことで、合ってるかな?」

「はいっ。おそらくあのクソ龍、当時と比べて、その力はほんの少し程度……一万分の一くらいにまでは弱ってると思いますが」

「え? アレで? 一万って言った? 今」

「はいっ。なので、今度こそぶっ殺せると思いますっ! がんばりましょう!」


 物騒なセリフを、可愛いガッツポーズと共に守護龍は放ってくる。

 と、いつの間にか新しい煙草をふかしている聖女が、質問した。


「お嬢ちゃんがそいつを倒すために作られた白い巨龍だってのはいいけど。それなら、街で暴れたのは、なんだったんだい? おかげで、こっちはてんやわんやだったんだから、そっちも説明しておくれよ」

「あ……はいっ。ごめんなさい、あれは、そのう……」


 申し訳なさそうに、守護龍はうなだれて肩を縮める。

 慌てて、聖女は手を振った。


「おいおい、叱ろうってんじゃないんだ。なにがあったか、言ってくれるだけでいいのさ。こっちもビックリしたからねぇ」

「ごめんなさい……。あの。私、実は、封印されてはいましたけど、ある程度、自由に行動はできるんです」

「え?」

「こう……えいって力を入れると、巨龍になれるんですけど。そんな感じで。それで……あの黒い龍が目覚めていて、これから出てくるっていうことは、分かっていたので。あと、あの、勇者さんの呼びかけがないと、絶対出てきちゃいけないって、言われてたんですけど、あの……人間さんたちを絶対に守らないといけないって思って……」

「それで、出てきちゃったんだ?」


 兵士長の娘に言われて、こくりと守護龍は頷く。


「はい……っ。でも、あの……出てきたら、その……。お恥ずかしいんですけど、お腹がすっごく空いてて……このままじゃ黒い龍に負けちゃうなって思って。で、地上にはいっぱい、おいしそうなお馬さんや、牛さんがいたので、ちょっとだけと思って……」


 僕は、首長の語った、最初の巨龍襲撃の様子を思い出していた。

 巨龍はまず、市壁の外に降り立ち、家畜を爪裂いて喰らった、という。


「それで?」

「はい。あの、でも、その牛さんたち、どうも、人間さんが飼ってたものみたいで。人間さんたち、すっごく怒って。いっぱい、矢で撃ってきて」


 東の都の軍隊は、突如現れた龍に市壁の上からありったけの矢を浴びせた、という。


「それで?」

「はい。あの、私は、悪いことしちゃったと思って。とにかく謝らないとって思って、駆け寄ったんですけど。その、勢い余って近づきすぎて、壁を壊しちゃって……」


 巨龍は市壁に向かって歩き出し、子供が積木の家を蹴散らすように、あっさりと壁を壊して市内に侵入してきた、という。


「それで……」

「はい。みんな、すごく怒っちゃって……。いっぱい、矢が飛んできて。あの、とにかくお話を聞いてもらおうと思ったんですけど、私、龍に戻ってるってこと、混乱して忘れちゃってて。話そうとしたのに、うっかり、炎なんて吐いちゃって……」


 巨龍は市内で火炎を吐いて、大暴れした。聖女が防御魔法を駆使して火炎を防ぎ、なんとか人命を守った、という。


「そしたら、すごく強い人が出てきて。目を眩まされちゃって。なにも見えないし、矢は飛んでくるし、これは、一回帰ってから、落ち着いてからまた謝ろうと思って……」


 聖女の魔法で目を眩まされた巨龍は一度咆哮し、どこかへ飛び去った、という。


 ははあ……。と僕たちは、すべてを理解して頷くしかなかった。

 と、守護龍が、聖女に言う。


「あのう……。もしかして、あの時の……」

「ああ、その通り。死ぬかと思ったねぇ、あの時は」

「ご、ごめんなさい……。あの、悪気はなかったんです」


 深々と頭を下げる守護龍。聖女は苦笑しながら、ぽんぽんと肩を叩いた。


「いいって。誰も死ななかったしねぇ。何年も生きてると俗世とのコミュニケーションってやつの難しさもよく分かる。気にしなくていいよ」

「は、はい……。本当に、ごめんなさい……」


 聖女の言う通り、事情が分かった今、守護龍を責めるわけにはいかないだろう。長年の眠りから、自力で強制的に覚醒したせいで、上手く力を使いこなせなかったとか、そういう理由もあるはずだ。


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